Introduction of an artist(アーティスト紹介)
画家人物像
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ジョヴァンニ・ベッリーニ Giovanni Bellini
1433-1515 | イタリア | 初期ルネサンス ヴェネツィア派




ヴェネツィア派の始祖であるヤコポ・ベッリーニの庶子(正妻でない女性の生んだ子)で、ヴェネツィア派という画派を確立した巨匠。ヤコポ・ベッリーニの正妻の息子であるジェンティーレとは異母兄弟で、15世紀北イタリアの代表的な画家マンテーニャとは義兄弟の関係。早くから父の工房で修行をおこない、マンテーニャやドナテッロ、アントネッロ・ダ・メッシーナなど同時代に活躍していた画家やフランドル絵画から強い影響を受け、多様な実験的作品を手がけながら、色彩豊かで情緒溢れる柔軟性に満ちた画派を確立し、ジェンティーレと共に開いた当時最大規模の工房ではジョルジョーネティツィアーノなど同画派の巨匠となる画家を輩出した。またドイツルネサンスの巨匠デューラーと交友を持つなど、その影響の範囲は多岐に渡る。その作品の多くは大小の祭壇画や、ピエタ・磔刑などキリストを主題とするなど宗教的なものであったが、肖像画も多数描いていることがわかっている。

Description of a work (作品の解説)
Work figure (作品図)
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ピエタ(聖母と聖ヨハネに支えられる死せるキリスト)


Pieta (Cristo morto sorretto dalla Madonna e da san Giovanni)
1460年頃 | 86×107cm | テンペラ・板 | ブレラ美術館(ミラノ)

ヴェネツィア派の確立者ジョヴァンニ・ベッリーニが、その画業の初期から晩年期に至るまで取り組みつづけた主題のひとつで、『死せるキリストへの哀悼』の名でもよく知られた≪ピエタ≫。本作はその中で初期の最高傑作と名高い『ピエタ(聖母と聖ヨハネに支えられる死せるキリスト)』で、悲劇性に満ちた表現と、背景の詩情的な描写がドナテッロの強い影響を示している。この人物像に強く表れている構造的造形美や精神性の表現は、初期ルネサンスの三大芸術家のひとり彫刻家ドナテッロからジョヴァンニ・ベッリーニが強く影響を受けたからであると考えられている。主イエスの右わき腹に見える傷跡はキリストの死を確認するためにローマ兵士が持っていた槍で突いたものだとされているが、後にその兵士の名がロンギヌスと誤訳されたり、槍がイエスの処刑自体に使われたという誤認まで生まれることになった。またキリストを支える聖ヨハネ姿は一世紀に生まれたキリスト教の聖人で、キリスト十二使徒の一人。同じくキリスト十二使徒の一人であったヤコブ(大ヤコブ)の弟でもある。ヨハネ福音書の著者とされ、エーゲ海の小島に流刑にされたときには、新約聖書の「黙示録」を書いたとされている。

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聖ウィンケンティウス・フェレリウス多翼祭壇画


(Polittico di San Vincenzo Ferreri) 1464-1468年頃
テンペラ・板 | サンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ聖堂

ヴェネツィアのサンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ聖堂に所蔵されるジョヴァンニ・ベッリーニ初期〜中期の代表的な多翼祭壇画『聖ウィンケンティウス・フェレリウス多翼祭壇画』。上段、中段、下段の三層構造から構成される本作は上段にキリストの生死を、中段には諸聖人の姿を、下段には人々の蘇生を題材とした画面が描かれている。なお左の拡大表示では判別が困難な下段プレデッラ部分の名称と拡大図については以下を参照。

関連:溺死者と瓦礫の下の埋葬者を蘇生させる聖者(下段左)
関連:罪深い男女を神の炎で焼き、魂を救う聖者(下段中)
関連:幼児を蘇生させ、囚人を解放する聖者(下段右)

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ピエタ(4人の天使に支えられる死せるキリスト)

 1474年頃
Pieta (Cristo morto sorretto da quattro angeli)
91×131cm | テンペラ・板 | リミニ市立美術館

リミニ市のサン・フランチェスコ聖堂が旧蔵し、現在は同市が運営する美術館に所蔵される、ジョヴァンニ・ベッリーニの画業の中期に描かれたピエタ作品の中で最も秀逸な出来栄えを見せる代表作『ピエタ(4人の天使に支えられる死せるキリスト)』。初期に描かれた『ピエタ(聖母と聖ヨハネに支えられる死せるキリスト)』に比べてみると、死せるキリストの表情に甘美性が表れるなど、画家の個性が示されており、彫刻家ドナテッロの影響から更に発展を遂げ、ジョヴァンニ・ベッリーニ独自の個性が表れ始めた作品としても、本作は特に重要視される。

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ペザーロ祭壇画(聖母の戴冠)

 1475年頃
Pala di Pesaro (Incoronazione della Madonna)
262×240cm | テンペラ・板 | ペザーロ市立美術館

ペザーロのサン・フランチェスコ聖堂が旧蔵し、現在は作品上部に配されるヴァティカン宮美術館旧蔵のピエタと共に、現在ペザーロ市立美術館へ所蔵される、ジョヴァンニ・ベッリーニの様式的発展上の分岐点となった傑作『ペザーロ祭壇画』。別名「聖母の戴冠」とも呼ばれる本作は、画面中央の≪玉座に座り聖母へ戴冠するキリスト、4聖人≫を主題とし、祭壇画の左右には諸聖人を3人ずつ配し、下部のプレデッラにはキリストや聖ペテロ、聖ヒエロニムスなど諸聖人の物語が描かれている。それまでの表現・手法を完全に逸脱し、盛期ルネサンス様式を先駆する総合的様式美を、油彩という新しい素材によって描かれた最初の作品としても、西洋美術史上、特にイタリア・ルネサンス期を研究する上で最も重要な作品のひとつ。特に神々しいキリストの姿や聖母マリアの貞淑な姿と、叙情的に描かれる背景の融合が実に見事である。また本作が現在のペザーロ市立美術館へ所蔵される際に、ヴァティカン宮美術館が旧蔵していた≪ピエタ≫(106×84cm)が上部に合成された。

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荒野の聖フランチェスコ(聖痕を受ける聖フランチェスコ)


San Francesco nel deserto (Stimmate di san Francesco)
1480-1485年頃
124.4x141.9cm | テンペラ・板 | フリック・コレクション

ジョヴァンニ・ベッリーニの署名が残る、キリストが出現しない特異的な聖痕拝受の作品とされるが、現在もその解釈については議論されている、イタリア・ルネサンスで最も克明に描写された風景が秀逸の、画家中期の最高傑作のひとつ『荒野の聖フランチェスコ(聖痕を受ける聖フランチェスコ)』。画家が手がけたペザーロ祭壇画(聖母の戴冠)のプレデッラにも同主題が描かれていることも考慮され、現在最も有力な説として本作の図像は『聖痕を受ける聖フランチェスコ』と解釈されている。ヴェネツィアの貴族タッデオ・コンタリーニが旧蔵していたことが確認されている本作は、イタリア・ルネサンス期に描かれた作品の中でも、最も克明に風景描写された作品であるとされる。

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キリストの変容

 (Trasfigurazione) 1487年頃
115×151.5cm | 油彩・板 | カポディモンテ美術館(ナポリ)

ジョヴァンニ・ベッリーニの画業の中で、最上とされる風景の描写がなされ、15世紀に描かれた全イタリア絵画中でも白眉の部類に属される、画家の最高傑作のひとつ『キリストの変容』。パルマの名門貴族であったファルネーゼ家が旧蔵していたことからも、当時から極めてその価値が高かったことがうかがえる。天上から声を聞き、自らが神であることを示す主イエスを中心に、両脇には本主題の典型であるモーセとエリヤを配し、キリストの下には弟子達(聖ペテロ、聖ヤコブ、聖ヨハネ)が平伏している。敬虔な宗教画を描きながらもジョヴァンニ・ベッリーニは、その風景に(自然への)情緒的で詩的な表現を用い、自らの画風と柔軟性に富んだ新たなる絵画様式を確立した。

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サン・ジョゼッペ祭壇画

 (Pala di San Giobbe) 1487年頃
471×258cm | 油彩・板 | アカデミア美術館

ヴェネツィア派の大きな作品的特徴ともなった、極めて縦長に伸びた構図で≪サクラ・コンヴェルサツィオーネ(聖会話)≫の主題を描く祭壇画の代表的な作品である、ジョヴァンニ・ベッリーニ中期の名作『サン・ジョゼッペ祭壇画』。中央の「玉座の聖母子」と、その下「奏楽する3人の天使」を配し、両脇に諸聖人を描き本作の主題である≪聖会話≫を表現した本作は、ルネサンス様式の基礎的要因のひとつである遠近法によってもたらされた空間的構造の高い構図の中に、深い精神性と内に秘めた感情までも表現された人物像が画面下部に配され、作品に高度な安定感と、祭壇画としての崇高的価値を示すなど、ジョヴァンニ・ベッリーニの卓越した仕事がよく表れているが、完成当初の姿より画面上部が切断されていることが認められている。また長い歳月のあいだ置かれた環境によって生じた作品の劣化も著しい。「玉座に鎮座する聖母マリアと幼子イエス」の下部に描かれた本作中で宗教的要因を示す≪奏楽する3人の天使≫である。画面左部分には左からフランシスコ会の創始者「聖フランチェスコ」、キリストの洗礼者としても名高い「洗礼者聖ヨハネ」、旧約聖書ヨブ記に登場する信仰心の深い擬人「聖ヨブ(ジョッペ)」の姿が、右部分には左からスペインに生まれた清貧を重んずるドミニコ会の創設者「聖ドミニクス」、三世紀末の古代ローマの近衛兵で、疫病に対する守護聖人でもある「聖セバスティアヌス」、ナポリ国王ロベール・ダンジューの弟で、1317年に聖人として認められた「聖ルイ」の姿が描かれた。

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聖母子(双樹の聖母)

 1487年頃
Madonna col Bambino (Madonna degli alberetti)
74×59cm | 油彩・板 | アカデミア美術館

ジョヴァンニ・ベッリーニが数多く描いている聖母子像の代表的な作品『聖母子(双樹の聖母)』。画家の画業中、作風に円熟味を増しつつあった中期頃に描かれた本作は、敬虔な表情を浮かべる聖母マリアと幼子イエス・キリストを描いた典型的な聖母子像の図像だが、画面左右へ対照的に配された、情緒的に描かれた双樹が、ある種の不安定感を帯びた精神性を与え、本作の印象をより深いものとしている。また、その他の筆記事項として署名と年期が画面下部に記さることが挙げられる。典型的な図像を持ちながらもジョヴァンニ・ベッリーニらしい色彩と感情に富んだ表現がなされた玉座の聖母子と幼子イエスや画面の左右に配される情緒的に描かれた各樹木の表現は、本作の最も大きな見所のひとつである。

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聖母子と聖カタリナ、マグダラのマリア(聖会話)


Madonna con il Bambino e le sante Caterina e Maddalena
(Sacra conversazione) 1490年頃
58×107cm | 油彩・板 | アカデミア美術館

黒く塗りつぶされた背景から浮かび上がる各人物像(左からマグダラのマリア、幼子キリスト、聖母マリア、聖カタリナ)の表現にレオナルド・ダ・ヴィンチから習得したとされるスフマート(ぼかし技法)の技法を1937年にガンバ、1963年にモスキーニの両美術学者が指摘しているジョヴァンニ・ベッリーニの代表作『聖母子と聖カタリナ、マグダラのマリア』、通称『聖会話』である。暗い背景に浮かび上がる聖母子の姿に深い神秘性を与えた表現技法的要因がみられる。画面右部分に配される真摯な表情のマグダラのマリアは自身の罪を悔い、キリストの御足の下で涙を流し、その涙で濡れた足を自分の髪で拭いた後、香油を塗ったとされている。画面左部分に描かれるアレクサンドリアの聖女カタリナは学識に優れ、異教の学者らをを論破し改宗させ4世紀の初頭に殉教したと伝えるが、現在はその実在を疑問視され、教会暦から除外されている。

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宗教的寓意

 (Allegoria sacra) 1490-1500年頃
73×119cm | 油彩・板 | ウフィツィ美術館(フィレンツェ)

ヴェネツィア派を確立した巨匠ジョヴァンニ・ベッリーニの現存する全作品中、最も謎に包まれた作品『宗教的寓意』。この宗教的寓意という名称も便宜上そう呼ばれているだけで、長い間ジョルジョーネ作とされてきた本作の主題については≪聖会話≫、≪天国≫、≪魂の巡礼≫、≪複合的寓意表現≫、≪受肉の瞑想≫など様々な解釈が論じられてきたが、どれも論破され、現在も議論が続けられている。ウィーン皇帝のコレクションが旧蔵となる本作は、画面上に拡散する採光の表現や、緻密かつ複合的に描かれる画面構成、黄金色で描かれる大気感などから、長きにわたり16世紀に活躍したヴェネツィア派の巨匠ジョルジョーネの作品とされてきた。

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聖母子と洗礼者聖ヨハネ、聖女(ジョヴァネッリの聖会話)

 Madonna con il Bambino, san Giovanni Battista e una santa
1500-04年 | 54×76cm | 油彩・板 | アカデミア美術館

ヴェネツィアの旧家ジョヴァネッリ家が旧蔵していたことから「ジョヴァネッリの聖会話」とも呼ばれる情緒的な風景描写が秀逸であるジョヴァンニ・ベッリーニの代表的な作品『聖母子と洗礼者聖ヨハネ、聖女』。現在は同じくヴェネツィアのアカデミア美術館に収蔵される本作は1500年から1504年の4年の歳月をかけ制作された作品で、1490年頃に描かれた、もうひとつの代表的な聖会話作品『聖母子と聖カタリナ、マグダラのマリア』と比べ、ジョヴァンニ・ベッリーニらしい非常に明瞭な風景描写がなされているのが大きな特徴である。聖母マリア、幼子キリストを中心にし、洗礼者聖ヨハネと聖女を左右水平に配することで、画面に安定感をもたらしている。また本作の最も大きな特徴のひとつである、情緒的描写に専念し描かれた風景の描写は、豊水の都であったヴェネツィアに定住していたジョヴァンニ・ベッリーニだからこそ描くことのできた表現である。

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聖母子(牧場の聖母)

 1500-1505年頃
Madonna col Bambino su un prato (Madonna del prato)
67×86cm | 油彩・板 | ロンドン・ナショナル・ギャラリー

ジョヴァンニ・ベッリーニの最も代表的な聖母子作品となるロンドン・ナショナル・ギャラリー版『聖母子』。別名『牧場の聖母』とよばれていることからもわかるように、画家の最も偉大な画業功績のひとつとなった情緒的風景描写が、本作では特筆されるべき大きな特徴である。聖母マリアの膝で健やかな表情を浮かべ眠る幼子キリストの姿など、情緒的に描かれる風景と聖母子の関係が、本作の深い精神性をよく表現している。また本作の風景描写は現存するジョヴァンニ・ベッリーニ作品の中でも特に秀逸とされ、聖母子の三角形の構図をとった、その背後に広がる空間の広がりを叙情的な表現で描いた。

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総督レオナルド・ロレダンの肖像


(Ritratto del doge Leonardo Loredan) 1501年頃
61.5×45cm | 油彩・板 | ロンドン・ナショナル・ギャラリー

ロンドン・ナショナル・ギャラリーに所蔵されることから、当時、最も多作で優れた肖像画家のひとりでもあったジョヴァンニ・ベッリーニが手がけた肖像画の中でも、特に代表的な肖像画と知られるようになった『総督レオナルド・ロレダンの肖像』。本作のモデルとなった人物は1501年にヴェネツィア統領に就任したレオナルド・ロレダン(1438年-1521年)で、表現力、構成力、技量など、その画業において円熟期に差し掛かった画家の持てる全ての力が凝縮した秀逸の作品として、現在も見る者を圧倒する。凛々しい表情を浮かべる、当時のヴェネツィア総督であったレオナルド・ロレダンの顔の皺や瞳の誠実な表情、深い陰影などに、この総督の人物像がよく表現されている。柔らかい質感や光沢までも見事に表現された、細密に描写される衣服など、ジョヴァンニ・ベッリーニの肖像画には初期ネーデルランド絵画の大画家ヤン・ファン・エイクを始めとするフランドル派からの影響が示されている。

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アレクサンドリアにおける聖マルコの説教


(Sermon of St Mark in Alexandria) 1504-1507年頃
サイズ不詳 | 油彩・画布 | ブレラ美術館(ミラノ)

ジョヴァンニ・ベッリーニが生涯住んでいたヴェネツィアの守護聖人≪聖マルコ≫を主題とした、画家晩年期の代表的な作品『アレクサンドリアにおける聖マルコの説教』。空間を最大限に広く見せる遠近法の活用や鮮やかな色彩の使用など、画家らしい一面を覗かせながらも、それまでの作品とは少し異なる、独自の雰囲気が画面から伝わってくる。ヴェネツィアの守護聖人である聖マルコは、ヴェネツィア派にとって最も一般的な主題のひとつであり、ティントレットなど後世の巨匠たちも聖人を主題に作品を手がけている。

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サン・ザッカリア祭壇画

 (Pala di San Zaccaria) 1505年頃
500×235cm | 油彩・板(画布) | サン・ザッカリア聖堂

ヴェネツィアのサン・ザッカリア聖堂のために制作されたジョヴァンニ・ベッリーニ晩年期の傑作『サン・ザッカリア祭壇画』。ヴェネツィア派らしい縦長に描かれる大祭壇画の図像を用いながらも、画家の晩年期の大きな特徴である、ダイナミックに構成されリアリスム的に描かれた色彩豊かな空間表現など注目すべき点は多い。また、この空間表現は一部研究者から画家の弟子であったジョルジョーネからの影響も指摘されている。本作の主題は中央の≪玉座の聖母子と奏楽の1天使≫を中心に諸聖人を左右に配した≪聖会話≫で、ジョヴァンニ・ベッリーニが長年かけて辿り付いた画業の集大成とも言える作品である。当初、板に油彩で描かれたが、後に(当時使われ始めた素材である)画布(カンバス)へと写された本作の中央には微妙な色彩の変化によって空間的奥行きを表現したドームと、その中の玉座に鎮座する聖母マリアと幼子キリストが描かれている。またその左側にはキリスト十二弟子の筆頭で、カトリック教会では初代教皇となる聖ペテロと、エジプト北部、地中海岸にある港湾都市でヘレニズム文明の中心として栄えたアレクサンドリアの聖女、四世紀初頭に殉教するも、学識に優れ異教の学者たちを論破し改宗させたと伝える聖カタリナが、右側にはラテン語のルクス(光)が語源となるため、一般的に「光の女神」を指す聖ルキアと、キリスト教の聖人でラテン教会 四教父のひとり聖ヒエロニムスの姿が描かれている。

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神々の祝宴(バッコス祭)

 Festino degli Dei (Baccanale)
1514年頃 | 170×188cm | 油彩・画布 |
ワシントン・ナショナル・ギャラリー

ジョヴァンニ・ベッリーニが1490年頃から描き始めた神話画の代表的かつ最も優れた作品のひとつ『神々の祝宴(バッコス祭)』。画家の最晩年期に描かれた本作は、フェラーラ城のアルフォンソ・デステ内アラバスターの小部屋に旧蔵されていた作品で、晩年期らしい色彩の豊かさ・鮮やかさが大きな特徴のひとつ。現在はワシントン・ナショナル・ギャラリーに所蔵されている。ギリシャ神話の神ディオニュソスの別名≪バッコス≫の意味するものは酒と豊穣とされ、当時から主に女性の間で熱狂的な崇拝を受けた。また本作の背景はジョヴァンニ・ベッリーニの弟子であるヴェネツィア派最大の巨匠ティツィアーノによって全面的に描き変えられていることが判明している。

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