Introduction of an artist(アーティスト紹介)
■ 

アンドレア・マンテーニャ Andrea Mantegna
1431-1506 | イタリア | 初期ルネサンス パドヴァ派




初期ルネサンスの北イタリアにおいて、その普及に中心的な役割を担った15世紀を代表するパドヴァ派の画家。その様式は古典的なモティーフを、類稀な想像力と遠近法を用い劇中を思わせる現実味を帯びた、極めて高度な独自性の示す。ヴェネツィア派の始祖ヤコポ・ベッリーニの娘ニコロシアと結婚し、義弟関係にあったヴェネツィア派を確立した巨匠ジョヴァンニ・ベッリーニやドイツ美術史上最大の画家アルブレヒト・デューラーなど後世の画家に多大な影響を与えた。ドナテッロなどから影響を受けながら修行時代をパドヴァで過ごしたのち、初期の代表作サン・ゼーノ聖堂の主祭壇画の制作で、若くしてその溢れる才能を開花させ一躍名を馳せる。その後、名家ゴンザーガ家の宮廷画家として1460年にマントヴァへ赴き、『婚礼の間(プットーと女性達が見下ろしている円形天窓)』や『死せるキリスト』などに代表される傑作を次々と世に送り出しながら、マントヴァで75歳の生涯を閉じた。現存する作品総数は55点(工房作や帰属作を含めると約85点)を数え、いずれも画家の特徴を示しており、北イタリアの芸術全体へ強い影響を与えた。

Description of a work (作品の解説)
Work figure (作品図)
■ 

オリーブ山の祈り

 (Preghiera nell'orto) 1455年頃
63×80cm | テンペラ・板 | ロンドン・ナショナル・ギャラリー

マンテーニャ初期の代表作品のひとつ『オリーブ山の祈り』。主題は弟子である聖ペトロ、小ヤコブ、聖ヨハネの三人を連れゲツセマネのオリーブ山上で自らに迫る災い(磔刑)を退けるよう、父なる神に祈りを捧げる場面を描いた≪オリーブ山の祈り≫であるが、特筆すべきはその風景描写である。画家として独り立ちをして間もない画家マンテーニャの若い才気が存分に示される硬質的な風景描写は豊かな色彩によって丹念に描写されながらも、画家らしい古典を思わせる独自性が見られる。また画面上部のイエス、画面下部の弟子達など登場人物の感情的な表現にも、マンテーニャの優れた力量がうかがえる。弟子のひとりであったイスカリオテのユダの裏切りと、自らに迫る災いを予知したイエスが、父なる神へ災いを退けるよう父なる神へ祈りを捧げるイエスの姿が印象的な本作の天使たちが乗る雲は石材のように硬質的に描かれた。また磔刑で使用される十字架のほか、受難の象徴である石柱なども受難具として当時からよく描かれた。本作には深い眠りに陥る聖ペトロ、小ヤコブ、聖ヨハネの三人が画面下部に配されるほか、画面右部にはイエスを試そうとローマ軍へ居場所を密告したユダと、イエスを捉えにきたローマ軍が描かれている。

解説の続きはこちら

【全体図】
拡大表示

■ 

キリストの磔刑

 (Crocifissione) 1455-1459年頃
67×93cm | テンペラ・板 | ルーヴル美術館(パリ)

マンテーニャの代表作『キリストの磔刑』。サン・ゼーノ修道院長グレゴリオ・コレールの委嘱によりヴェローナのサン・ゼーノ聖堂の主祭壇画として描かれた、画家のパドヴァ時代の代表作『サン・ゼーノ祭壇画』のプレデッラ部分として描かれた本作は、ナポレオン軍によってフランスへ持ち去られたサン・ゼーノ祭壇画の返却の際にプレデッラ部分が取り外され、フランスへと置かれた為、ルーヴル美術館が所蔵するという経緯を持つ。その表現はパドヴァで高い評価を得たよう古代的で情緒豊かな背景に、遠近法を用いた迫力のある構図と、硬質的でありながら細密描写による登場人物の感情表現は、まさに秀逸の一言である。磔刑に処されるイエスの姿はマンテーニャらしく深い感情を示すことよって聖性を表現している。またイエスの頭上に掲げられる≪INRI≫の四文字は≪ナザレのイエス、ユダヤの王(Iesus Nazarenus Rex Iudeorum)≫の略式である。また聖性を思わせる青々とした天上と、鋭利で硬質的に描かれる大地の表現はマンテーニャの表現の大きな特徴であり、本作にもそれが存分に示されている。本来の姿である『サン・ゼーノ祭壇画』は三連祭壇画の形式で、上部三枚のパネルは遠近法によって統一された空間を構成している。

関連:サン・ゼーノ祭壇画各部名称

解説の続きはこちら

【全体図】
拡大表示

■ 

聖セバスティアヌス

 (San Sebastiano) 1458-1470年頃
68×30cm | テンペラ・板 | ウィーン美術史美術館

古代に対するマンテーニャの深い考察が示される傑作『聖セバスティアヌス』。本作の主題は、三世紀ガリア出身のローマ軍人で、マルクスとマルケリヌスというキリスト教徒に話し掛けたことで、キリスト教信者であることが発覚し、杭(又は柱)に打ちつけられた後、矢を放たれた逸話で有名な、聖ペトロ、聖パウロに続く三人目のローマ聖人≪聖セバスティアヌス≫で、マンテーニャは生涯にこの聖人を数回描いており、そのどれもが画家の古代志向による独自性の特徴を強く示している。本作は、その最も初期に描かれたウィーン美術史美術館が所蔵する作品で、古代建築を意識した極めて細密に描かれる石柱に打ちつけられ聖セバスティアヌスは、深い感情や優美な表現のほか、高い聖性が示されている。これに対し古代建築や床、背景などはマンテーニャの表現に特徴される独特の硬質感によって、現実味を帯びながらも高い創造性が見られる。また古代建築物へ刻まれたギリシア文字による画家の署名も確認できるなど、後に描かれたルーヴル美術館版『聖セバスティアヌス』と並びマンテーニャを語る上で欠かせない代表作のひとつである。

関連:ルーヴル美術館版『聖セバスティアヌス』

解説の続きはこちら

【全体図】
拡大表示

■ 

聖セバスティアヌス

 (San Sebastiano) 1480年頃
275×142cm | テンペラ・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

古代に対する深い考察を、独自の解釈と理解によって極めて高度な作品へと昇華させたマンテーニャの傑作『聖セバスティアヌス』。本作より10年から20年前に描かれたとされるウィーン美術史美術館版『聖セバスティアヌス』と比べ、古代建築物や背景(特に雲)など表現は、より硬質的で古代様式を思わせる画家独自の雰囲気で描かれ、杭(又は柱)に打ちつけられた後、矢を放たれた三人目のローマ聖人、聖セバスティアヌスの姿は後輪も薄くなるなど、より人間として自然に描かれている。これはマンテーニャが長い歳月をかけ持ち得てた古代や古典に対する深い考察に、独自の解釈と理解が加わることによって、すでに示されていた画家の独自性に理想美に富んだ想像性が生まれることになった。また、画面下部右に描かれる射手の表現にも、人間的な解釈が認められる。ウィーン美術史美術館版と並び、マンテーニャを語る上で欠かせない代表作のひとつとして、今日も高い評価を受けている。

関連:ウィーン美術史美術館版『聖セバスティアヌス』

解説の続きはこちら

【全体図】
拡大表示

■ 

死せるキリスト

 (Cristo morto) 1480年頃
66×81cm | テンペラ・画布 | ブレラ美術館(ミラノ)

マンテーニャが手がけた全作品中、最も著名な作品のひとつである『死せるキリスト』。マンテーニャの生涯において隆盛期から晩年期の間に描かれたと推測される本作の主題は、磔刑に処され死したイエスの亡骸を描く≪死せるキリスト≫であるが、特筆すべきはその表現手法で、画家が自らの死を予期し、描いたとされるイエスの亡骸は、それまで描かれてきた典型的な構図とは決定的に異なり、足下から急激な短縮法を用い描くという、極めて斬新な構図が取られている。本作はマンテーニャにとっても重要な作品であり、彼の死後に、マントヴァのサンタドレア聖堂礼拝堂内に用意されたマンテーニャの記念碑の下部へ設置することが定められていた。画家が自らの死を予期し描いたと研究される、暗室の中の弱い光に浮かび上がるイエスの姿は、暗室に射し込む弱々しい光によって浮かび上がる独特の印象を見る者に与える。またイエスの死を悲しむ聖母マリアと福音書記者聖ヨハネの瞳からは大粒の涙が溢れ、目を腫らし嘆く聖母と聖ヨハネの姿から、神の子イエスの死に対する、深い悲しみが滲み出ている。

解説の続きはこちら

【全体図】
拡大表示


Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション