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Introduction of an artist(アーティスト紹介)
画家人物像

ヤーコブ・ヨルダーンス Jacob Jordaens
1593-1678 | フランドル | バロック

17世紀に活躍したフランドルの代表的な画家。その作風は当時既に欧州各地で名を馳せていたルーベンスに多大な影響を受けており、輝くような色彩と柔軟なタッチという大きな特徴を示す。宗教画、神話画、歴史画、肖像画、寓意画など多岐に渡るジャンルを描くほか、フランドルに伝わる諺を描いた風俗画などが評価を受けている。同時代に活躍したルーベンスヴァン・ダイクなどのフランドル出身画家とは異なり、故郷アントウェルペンを生涯離れなかったヨルダーンスは1593年に生まれ、ルーベンスも学んだ同地の画家アダム・ファン・ノールトに師事し絵画を学ぶ(後にヨルダーンスはアダム・ファン・ノールトの娘と結婚する)。1615年にアントウェルペンの聖ルカ組合に認められ、画家としての道を歩む。以後、教会の注文による大規模な祭壇画やタペスリーの作成に携わるほか、ルーベンスの工房と共同でネーデルランドの総督でもあったフェルナンド枢機卿の同地入市に伴う装飾、スペイン国王フェリペ4世の住居を飾る神話画などの制作をおこない国際的な名声を手にし、同時期に大規模な工房をかまえた。以後、プロテスタントへの改宗や、レンブラントらと共にアムステルダム市の市庁舎装飾をおこなうなど多忙な日々をおくるも、1678年アントウェルペンを襲った疫病により没する。


Work figure (作品図)
Description of a work (作品の解説)
【全体図】
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エジプトから帰還する聖家族 1615-16年頃
(The Return of the Holy Family from Egypt)
75×55cm | 油彩・画布 | ロードアイランドデザイン学校

17世紀フランドル絵画の巨匠ヤーコブ・ヨルダーンス最初期の様式がよく示される代表的な作例のひとつ『エジプトから帰還する聖家族』。本作に描かれるのは、新約聖書マタイによる福音書のみに記される、降誕したイエスの殺害を命じたユダヤの王ヘデロから逃れる為にエジプトへ逃避していたイエス、聖母マリア、聖ヨセフであったが、ヘデロが死去すると聖ヨセフの夢に天使が現れイスラエルの地へ戻るよう告げられ同地へと帰還する場面≪エジプトから帰還する聖家族≫であるが、17世紀においてこの主題が取り上げられることは非常に珍しい。本作のダイナミックな運動性と質量感に溢れた人物表現は師ルーベンスの多大な影響を示しているも、明瞭で鮮やかな色調と世俗性を感じさせる登場人物の表情、一行に寄り添う犬、聖ヨセフの手にする大工道具、場面構成などに、後にヨルダーンス様式の大きな特徴となる表現が感じられる。なお本場面≪エジプトから帰還する聖家族≫では帰還した後、父ヘデロの跡を継いだアルケオラがイスラエルの地を支配していたことから、一行は再び天使の聖告に導かれガラリア地方のナザレに住居を構えたとされる。

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リストラの聖パウロと聖バルナバ 1616年頃
(St.Paul and St.Barnabas at Lystra)
149×233cm | 油彩・画布 | エルミタージュ美術館

ヤーコブ・ヨルダーンス最初期のに描かれた宗教画の代表的な作品『リストラの聖パウロと聖バルナバ』。本作に描かれる主題は、新約聖書に属される使徒言行禄14 8-18に記される、ローマ市民で厳格なファリサイ派あったが回心し、熱心なキリスト教徒となった聖パウロと、福音書記者聖マルコの従兄弟でキプロス島出身の聖バルナバがリストラの地で布教活動をおこなっていた時に、足の不自由な男を癒し治したために同地の異教徒から異教の神の名前≪ゼウス(聖バルナバが高貴な容貌だった為)≫、≪ヘルメス(主に聖パウロが話をしていた為)≫と崇められ、異教の神殿の司祭が雄牛数頭と花輪などを神への生贄として聖パウロと聖バルナバに捧げようとするも、それを拒み、同地の異教徒に対し神は唯一であり偶像の崇拝をやめ主イエスのみを信じよと説教する場面≪犠牲を捧げられるのを拒む聖パウロと聖バルナバ≫である。本作において登場人物はほぼ平行線上に配されるなど、古典的で安定的な構図が用いられているも画面中央の水を注す男や説教する聖パウロの躍動感に溢れる運動性や、画面全体に認められる輝くような光による色彩の使用など至る所にヨルダーンスの高い技量が感じられる。なおヨルダーンスは生涯のうちに本主題を複数回手がけており、画家のオリジナルや工房作など幾つかは現存している。

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聖ペトロへのキリストの啓示 1616-1617年頃
(Christ's Charge to Peter)
208×235cm | 油彩・画布 | 聖ヤコブ教会(アントウェルペン)

ヤーコブ・ヨルダーンス最初期のに描かれた宗教画の代表的な作品『聖ペトロへのキリストの啓示』。しばしばヨルダーンスの師である画家アダム・ファン・ノールトとの帰属論争されてきたが、近年の研究によって現在は大多数の研究者がヨルダーンスの作品であるとの見解を示し、画家の様式形成において、その発展と影響を示す基準的な作品としても最近は重要視される傾向にある本作に描かれるのは、新約聖書ヨハネ福音書へ補巻的に記される主題番号21場面から≪聖ペトロへのキリストの啓示≫で、聖ペトロや聖トマスなど七人の弟子が漁に出るも不漁に終わり、浜へ戻る中、3度目の復活を遂げた主イエスが現れて153匹もの魚を捕らせたほか、パンを与えた食事を取らせた後、聖ペトロへ「わたしを愛するか?」と三度問い、聖ペトロが「はい、わたしがあなたを他の誰よりも愛していることは、あなたが一番わかっているはず」と答えると、聖ペトロへ「わたしの羊を飼え」と世界へ父なる神の栄光の伝達を命じ、聖ペトロの殉教を啓示したとされる、あまり描かれない珍しい主題である。

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羊飼いの礼拝 (The Adoration of the Shepherds) 1617年頃
158×117cm | 油彩・画布 | アントウェルペン王立美術館

17世紀フランドルを代表する画家ヤーコブ・ヨルダーンスの代表作『羊飼いの礼拝』。本作に描かれる主題は、未来のユダヤの王である神の子イエスの降誕を大天使によって告げられた羊飼いたちがベツレヘムの厩へ赴き、その未来の王たる神の子の降誕を礼拝する場面≪羊飼いの礼拝≫である。ヨルダーンスは≪羊飼いの礼拝≫を主題とした作品を生涯のうちに数多く手がけおり、中でも初期作品である本作は巨匠ルーベンスが描いた同主題の作品からの多大な影響が指摘されている点などから、同時期にヨルダーンス描かれたとされるグルノーブル美術館所蔵の『羊飼いの礼拝』と共に画家の様式形成を示す資料的作品としても重要視されている。また本作に示される人工的な夜光の表現は一部の研究者から、15世紀後半に活躍した初期ネーデルランド絵画の画家ヘールトヘン・トット・シント・ヤンスの代表作『キリストの降誕』からの何らかの影響も指摘されている。

関連:グルノーブル美術館所蔵『羊飼いの礼拝』

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十字架上のキリスト (Christ on the Cross) 1620年頃
310×197cm | 油彩・画布 | テルニング財団(アントワープ)

17世紀フランドルを代表する画家ヤーコブ・ヨルダーンスの代表作『十字架上のキリスト』。おそらくはアントウェルペン市内の教会の祭壇画として制作された本作に描かれるのは、自らユダヤの王と名乗り民を惑わせたとして磔刑に処されたイエスの死の直後の姿≪十字架上のキリスト≫で、その周辺には聖母マリア、マグダラのマリア、福音書記者聖ヨハネなど磔刑の場面での主要人物が配されている。十字架上のイエスを始めとした各人物の明暗対比の強い表現に同地のカラヴァッジェスキ一派(カラヴァッジョ様式の影響が色濃く反映される画家一派)の影響を感じさせるほか、ピーテル・パウル・ルーベンス作品からの図像適応が指摘されている。また本作はメトロポリタン美術館が所蔵するヨハネス・フェルメール作品のひとつ『「信仰」の寓意』の背景にも描かれていることが知られている。

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パンとシュリンクス (Pan and Syrinx) 1620年頃
173×136cm | 油彩・画布 | ブリュッセル王立美術館

17世紀フランドルの巨匠ヤーコブ・ヨルダーンスの描く裸婦像の典型を示す代表的作例のひとつ『パンとシュリンクス』。本作にはオウィディウスの≪転身物語≫に典拠を為す、主神ゼウスの伝令使ヘルメス(又は主神ゼウス)とカリスト(又はペネロペ)の間に生まれた音楽家であり牧場又は羊や山羊の神とされるパン(山羊の脚と小さな角をもつ)が、ニンフのシュリンクスに恋をした場面から始まり、必死に彼女を追いかけるがシュリンクスは逃げ、ラドン川岸に着いたとき川を渡れないと絶望したシュリンクスが他のニンフたちに自分を葦に変身させてくれるよう願い、葦へと姿を変えるも、パンがその葦を切り葦笛シュリンクスを作ったとする≪パンとシュリンクス≫の場面が描かれている。本作強い明暗対比によって印象的に描かれるシュリンクスの豊潤な肉体表現は、師ルーベンスから受け継いだヤーコブ・ヨルダーンスにおける女性描写の典型的な特徴を示している。また画面内へ描かれる子供たち(一方は松明を手にする)や顎髭を生やした男は、他のニンフやパンの奏でる音楽に興じていたサテュロスを始めとし様々な解釈がされているも確証は得ていない。なお牧場又は羊や山羊の神とされるパンはしばしば牧歌詩人たちに崇拝された神として扱われるも、パニック【panic】の語源に由来するよう、時には恐神として扱われることもある。

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サテュロスと農夫 (Satyr and Peasant) 1620年頃
194.5×203.5cm | 油彩・画布 | アルテ・ピナコテーク

ヤーコブ・ヨルダーンス初期の作風が良く示される代表的な作品のひとつ『サテュロスと農夫』。本作は酒神バッカスの従者で好色、狡猾な性格の森精サテュロスが、農夫らに一夜の夕食を与えるというイソップ寓話を典拠としており、ヤーコブ・ヨルダーンスが最も好んだ主題のひとつで、現在までに『サテュロスと農夫』を描いた作品は本作の他に、ブリュッセル王立美術館やカッセル州立美術館など各美術館で合計6点が確認されている。

関連:ブリュッセル王立美術館版『サテュロスと農夫』

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画家の家族の肖像 (Portrait of the Jordaens Family)
1620-1622年頃 | 181×187cm | 油彩・画布 | プラド美術館

17世紀フランドルを代表する画家ヤーコブ・ヨルダーンスの家族を描いた肖像画作品『画家の家族の肖像』。画面右部にはリュートを手にするヤーコブ・ヨルダーンス自身の全身肖像と、足下に犬が描かれ、画面左部には豪華な椅子に座る画家の妻で画家の師アダム・ファン・ノールトの娘でもあるカテリーナと傍らに愛娘を配し、カテリーナの右側(画面中央上部)には葡萄の入った果実籠を手にする女中が描かれている。本作は≪愛の園≫の伝統的な表現に基づいており、画面内には数々の愛の象徴が描かれ、画家が手にするリュートは家族(又は夫婦)の調和を、足下の犬は従順と忠誠を、葡萄の入った果実籠は結婚による愛の実りを意味している。なおサンクトペテルブルク(ロシア)のエルミタージュ美術館に本主題≪画家の家族の肖像≫を描いた別作品が所蔵されている。

関連:エルミタージュ美術館所蔵『画家の家族の肖像』

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豊穣の女神ケレスへの奉献 (Ofrenda a Ceres) 1622年頃
165×112cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド)

17世紀フランドルの画家ヤーコブ・ヨルダーンス初期における名画『豊穣の女神ケレスへの奉献』。18世紀スペイン王室コレクションに由来する本作に描かれるのは、神話上で豊穣を司る女神ケレスとその恵みを称える人々≪豊穣の女神ケレスへの奉献≫で、本作と同じくプラド美術館に所蔵されるルネサンス芸術ヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノの傑作『ヴィーナスへの捧げもの』に発想を得て制作されたと考えられている。画面上部では美しい赤色の衣を纏った豊穣の女神ケレスが大地の実りである果実を抱き観者に視線を向けている。一方、画面中央から下部に配される農夫婦や老夫婦、子供、牛や馬などの家畜は人間における人生の周期と生活を表し、老若男女問わず全ての人々が豊穣の女神を称え奉献している。このような神話上の人物を用いた寓意的作例においても、ヨルダーンスの最も大きな特徴であるダイナミックに構成された構図と強い風俗性が存分に示されているほか、鮮明で輝きを放つ光彩表現を用いていることから一部からはイタリア・バロックの大画家カラヴァッジョの影響が指摘されているも、これはフランドル絵画の伝統に基づく表現だとする説が最も有力で通説となっている。

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ポモナへのオマージュ(豊穣の寓意) 1620年頃
(Homage to Pomona (Allegory of Fruitfulness))
180×241cm | 油彩・画布 | ブリュッセル王立美術館

フランドル絵画の大画家ヤーコブ・ヨルダーンス初期の代表的な作品のひとつ『ポモナへのオマージュ』。別名『豊穣の寓意』とも呼ばれる本作に描かれるのは、果実とその栽培を司るローマ神話の女神≪ポモナ(Pomは林檎や果実を意味する)≫へのオマージュ(尊敬や賛辞、献辞を意味する)として≪豊穣≫の寓意像と解釈されている。本作において最も特徴的なのは、フランドル絵画最大の巨匠ピーテル・パウル・ルーベンスからの多大な影響を感じさせる若きヨルダーンスの優雅で豊潤な登場人物の裸体表現に他ならない。画面中央よりやや右に配される赤い衣を纏った女神ポモナが手にする葡萄などの大地の実りを見つめる、こちらに背を向けたニンフの優美で緩やかな曲線は女性の肉体の完全なる官能性と甘美性を示しており、その完全なる美は、本作における大地の実りの女神ポモナへの献辞と喜びの世界観を象徴する存在と解釈されている。また画面左部に描かれる高度な写実によって描かれる果物の描写にも画家の溢れる才気が感じされる。なお本作以外にもフロリダのバス美術館所蔵版やアルテ・ピナコテーク所蔵版などヴァリアントが複数存在する。

関連:バス美術館所蔵版『ポモナへのオマージュ』

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四人の福音書記者 (The Four Evangelists) 1625年頃
134×118cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

17世紀フランドルの画家ヤーコブ・ヨルダーンス作『四人の福音書記者』。ルイ16世のコレクションとして1784年にアントウェルペンから収蔵されることになった本作に描かれるのは、キリスト教に関わる者の中で新約聖書(福音書)の書記者として最も知られている四人の書記者たち、画面左から福音書記者でありイエス十二使徒のひとりでもある聖マタイと聖ヨハネ、そして前者らより一世代後の福音書記者である聖マルコ、聖ルカの像で、やや厳しい明暗対比による写実的描写によって、対象人物…つまり聖マタイ、聖ヨハネ、聖マルコ、聖ルカの人間性への内面へ迫る深い精神性が示されている。本作で四人の福音書記者たちは書見台の前に立ち執筆又は議論をおこなっている。この図像的展開は本主題≪四人の福音書記者≫における人間的表現の最も伝統的かつ典型的な図像であり、この図像を用いることで本作の宗教画としての意味と役割をも示しているのである。

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聖アポロニアの殉教 (The Martyrdom of St Apollonia)
1628年 | 409×225cm | 油彩・画布 | アントワープ王立美術館

17世紀フランドルの画家ヤーコブ・ヨルダーンスの手がけた宗教画のひとつ『聖アポロニアの殉教 』。アントウェルペンのアウグスティノ修道参事会の依頼により同会の祭壇画として制作された本作に描かれるのは初期キリスト教の殉教聖女で、アレクサンドリア市で異教の偶像を破壊したことから捕らえられ、柱に繋がれ歯を抜かれる(又は殴られて歯が折れたとされる)などの暴行を受けた後、市外で火刑に処された(一説では改宗しないと火刑にすると脅されるも自ら炎の中へと歩み出たとされる)逸話で有名な聖アポロニアの抜歯の場面である。抜歯される聖女アポロニアは痛々しい姿ながら胸の前で腕を交差させ、天上を見上げ聖母マリアの降臨を幻視している。この悲劇的な聖女の運命をヤーコブ・ヨルダーンスは特有の色彩と激しい躍動感で劇的に表現している。また抜歯するアレクサンドリアの暴徒や異教の神像を指差す異教の司教、画面下部で火刑の炎を熾す暴徒、諸動物などにも同様の運動性が示されている。なお聖アポロニアはその受けた苦痛(抜歯)体験から歯痛時に祈願される聖女のほか、歯科医師の守護聖人としても知られている。

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聖体の秘跡 (The Veneration of the Eucharist) 1630年
283.6×233.9cm | 油彩・画布 | アイルランド国立美術館

巨匠ヤーコブ・ヨルダーンス作『聖体の秘跡』。おそらく聖アウグスティノ教会の依頼により制作された本作に描かれるのは、最後の晩餐に由来する、キリスト教の重要な儀式≪聖体の秘跡(聖餐)≫の場面とされるが、その図像的解釈は(本作で図像的矛盾も示されることから)様々な説が唱えられており、現在も議論と研究が進められている。中でも十字架を担う神の子イエスの上部に描かれた、聖霊の威光に照らされながら獅子に乗り、聖体顕示台(モンストランス)を手にする聖女の解釈は一般的に聖母マリアであるとされるも、擬人化された信仰の象徴であるとする説も有力視されている。画面上部左から聖ペトロ、聖パウロ、聖体顕示台の聖女を挟み、聖セシリア、聖カタリナ、聖セバスティアヌスが配される。また画面左中央で獅子を指差す聖アウグスティヌスが、画面下部には聖ヒエロニムス、神の子イエスを挟み聖グレゴリウス、聖アンブロシウスが配されている。

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大人が歌えば子供が笛吹く 1638-1640年頃
(As the Old Sang, So the Young Pipe)
154×160cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

17世紀フランドルの画家ヤーコブ・ヨルダーンス中期を代表する傑作『大人が歌えば子供が笛吹く』。本作に描かれるのは、ヨルダーンスが最も好んだ風俗的主題のひとつ『大人が歌えば子供が笛吹く』で、家族(一族)でおこなう晩餐(祝宴)での娯楽という非常に庶民的な日常風景を題材とし、一族の長である祖父と祖母が機嫌よく歌を歌いだすと、その息子が民族楽器である袋笛(バグパイプ)を奏で、そのまた息子たち(孫)も幼いながら父を真似て袋笛を奏でる場面の登場人物たちの表情は、どれも個性的かつ陽気な雰囲気を感じさせる。この陽気な表情表現は画家の師で義父ともなった同地の画家アダム・ファン・ノールトからの強い影響を示している。また本作でこの一族は祖母の手にする用紙の記載から枢機卿フェルディナンドの勝利を祝う宴であることが判明しているほか、画面中央上部に掲げられる銘文にはラテン語で当時の諺「子は親の真似をする、親は子の言動に注意せよ」と訓戒が記されている。なお、現在までに同主題を描いた作品がアントウェルペン王立美術館個人所蔵作品など三点確認されている。

関連:『大人が歌えば子供が笛吹く』 アントウェルペン版
関連:『大人が歌えば子供が笛吹く』 個人蔵版

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酒を飲む王様(豆の王)
(The King Drinking (The Bean King)) 1640年頃
156×210cm | 油彩・画布 | アントワープ王立美術館

17世紀フランドルの画家ヤーコブ・ヨルダーンスが数多く描いた風俗画作品の代表的作例のひとつ『酒を飲む王様』。本作に描かれるのは、神の子イエス降誕の祝祭にまつわる風俗行事のひとつ≪豆の宴≫で、ヨルダーンス独特の鋭い観察眼による人々の生活観豊かな描写は最も特筆すべき特徴のひとつである。本場面≪豆の宴≫行事の主役のひとりである画面中央の王冠を被る(王役の)老人はヨルダーンスの師である同地の画家アダム・ファン・ノールト(ヨルダーンスはアダム・ファン・ノールトの娘と結婚した)の姿とされ、この愉快で滑稽な場面の中で極めて大きな存在感を示している。それは、≪豆の宴≫行事のもう一方の主役である王の従者役の者たちが酒を飲む際に必ず発しなければならない(王が飲むという)言葉や、従者役の者たちによって奏でる音楽の生き生きとした躍動感や幸福感などによって相乗的に昇華されているからに他ならない。また一方でフクロウや消えた蝋燭など愚行や儚い喜びの象徴のアトリビュートが描かれるなど、人間の行動における慢性で怠惰な罪意識への深い洞察も示されている。なおヨルダーンスは本主題を描いた作品を数多く手がけており、現存する作品だけでエルミタージュ美術館版ウィーン美術史美術館版カッセル州立美術館版など本作の他に7点が確認されている。

関連:エルミタージュ美術館版『酒を飲む王様』
関連:ウィーン美術史美術館版『酒を飲む王様』
関連:カッセル州立美術館版『酒を飲む王様』

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神殿から商人を追い払うキリスト 1645-1650年頃
(Christ Driving the Moneychangers from the Temple)
288×436cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

ヤーコブ・ヨルダーンス屈指の宗教画のひとつ『神殿から商人を追い払うキリスト』。本作に描かれる主題は、エルサレムに入城した主イエスが、神の住まう祈りの家である神殿が両替屋や家畜売買人など商人たちで汚されていることを目撃し、怒りを覚え革の鞭を振るい神殿の前の商人らを外へと追い出す≪宮清め(神殿を清める)≫の場面で、登場人物が入り乱れる激しい運動性と深い陰影による劇的な感情表現が大きな特徴である。なお本作の主題≪宮清め(神殿を清める)≫は一般的にエルサレム入城後とされるも、各福音書では布教活動の初期や入城当日、入城翌日と三説が唱えられており、一部の神学者はこの≪宮清め(神殿を清める)≫が三度行なわれたとしている。

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キリストの哀悼 (The Lamentation) 1650年頃
207.5×191cm | 油彩・画布 | ハンブルク美術館

17世紀フランドルの画家ヤーコブ・ヨルダーンスの手がけた宗教画のひとつ『キリストの哀悼』。本作の主題は、磔刑に処され死した主イエスの亡骸を前に絶望する聖母マリアを始めとした諸聖人を描いた≪キリストの哀悼≫で、それまでのヨルダーンスの様式にはあまり見られない、主イエスの亡骸に寄り添い涙を流すマグダラのマリアに示される悲壮の中にもイタリア的な甘美性を感じさせる描写や、聖母マリアなどに見られるやや誇張気味な動作表現、作品全体に示される詩情的な雰囲気に、同朋の画家アンソニー・ヴァン・ダイクが手がけた同主題の作品からの影響が指摘されている。なおヤーコブ・ヨルダーンスは本主題を生涯に数点制作しており、現在ではプラド美術館所蔵版やエルミタージュ美術館所蔵版など合計4作品が確認されている。

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