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Introduction of an artist(アーティスト紹介)

ヘールトヘン・トット・シント・ヤンス Geertgen tot Sint Jans
1460-1495 | ネーデルランド | 初期ネーデルランド絵画

15世紀後半に活躍した初期ネーデルランド絵画の画家。画家の名称「ヘールトヘン・トット・シント・ヤンス」とは≪聖ヨハネの小さなヘーラルト≫を意味する。写実的で細密な人物や風景の描写に初期ネーデルランド伝統の表現が用いられるも、特徴的な卵型の顔面や強く明確な明暗法の使用、写本挿絵の特質を示す画法、極めて独創的な神秘性を感じさせる世界観などで同時代の画家に類を見ない独自の様式を確立。生涯の詳細は不明であるが、ホラント地方に生まれたと推測され、ファン・アウワーテルの下で初期ネーデルランドの伝統的な絵画を習得した後、ハールレムで画業を営み始める。以後、記録から聖ヨハネ騎士団の画家、ブルッヘの写本挿絵師組合員などに就いたことが判明している。またヘールトヘン・トット・シント・ヤンスの表現手法には20歳ほど年上となる同時代を代表する画家ヒューホ・ヴァン・デル・フースや大画家ヤン・ファン・エイクの死後、その工房を受け継いだペトルス・クリストゥスなど先人の画家らからの影響が指摘されている。なお現在までにヘールトヘン・トット・シント・ヤンスへ帰属される作品は約15点。


Work figure (作品図)
Description of a work (作品の解説)
【全体図】
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ロザリオの聖母 (Madonna of the Rosary) 1480年頃
26×20cm | 油彩・板 | ボイスマン=ファン・ブニンヘン美術館

初期ネーデルランド絵画の画家ヘールトヘン・トット・シント・ヤンスを代表する作品『ロザリオの聖母』。本作に描かれるのは父なる神の大いなる意志によって降誕した幼子イエスと、イエスを抱く聖母マリアの≪聖母子≫の図像であるが、極めて異質的で神秘性に富んだ表現がなされている。作品全体を構成する中央の聖母子とそれを包む同心円の光は世界(宇宙とも解釈される)を表現しているとされ、聖母マリアに抱かれる幼子イエスが鳴らしている2個の鈴は父なる神の同位的存在として人々を邪悪から救い導くことを意味している。この解釈は中世最大の神学者である聖トマス・アクィナスの提唱した≪定式化された概念≫を示しているとされている。また聖母マリアの上部では神を賛美し感謝する≪三聖唱≫が記される巻物を手にする3人の天使が配され、父なる神の偉大な神性を称賛しているほか、上弦の月に乗る聖母マリアは邪悪の存在である竜を踏みつけており、これは悪を打ち負かしたことを象徴している。なお聖母子を包む三輪の光は≪栄光≫≪悲哀≫≪歓喜≫を表しているとされ、三輪の中に描かれる天使らは十字架、石柱、茨の冠などの受難具や奏楽に用いる音楽器を手にしている。

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【全体図】
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キリストの降誕 (The Nativity) 1480-85年頃
34×25.3cm | 油彩・板 | ロンドン・ナショナル・ギャラリー

15世紀後半のネーデルランド絵画史で異彩を放つ画家ヘールトヘン・トット・シント・ヤンスの世界観をよく示す作例のひとつ『キリストの降誕』。本作に描かれる主題は、大天使ガブリエルから聖告を受けた聖母マリアが、人口調査のために訪れたベツレヘムの厩の中で神の子イエスを産み飼葉桶に寝かせる聖なる場面≪キリストの降誕≫で、特徴的な卵型の顔面や強く明確な明暗法の使用などヘールトヘン・トット・シント・ヤンスの大きな特徴が存分に示されている。降誕した幼子イエスがこの(暗中の)場面を照らす表現は、根拠は少ないものの14世紀アイルランドの女子修道院長である聖ブリジッドの記述から用いられた可能性も指摘されており、現在は更なる研究が期待されている。また遠方には羊飼いたちの前に眩い輝きを放つ大天使が現れ、神の子イエスの降誕を告げる場面が神秘的に描かれている。

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悲しみのキリスト (Christ as the Man of Sorrows)
1480-85年頃 | 24.5×24cm | 油彩・板 | ユトレヒト中央美術館

初期ネーデルランド絵画の画家ヘールトヘン・トット・シント・ヤンスの非常に印象的なキリスト像作品『悲しみのキリスト』。本作には、キリスト十二弟子のひとりイスカリオテのユダによって神の奇蹟を試され、ローマ兵に売られ捕まったイエスが笞打ちや誹謗・嘲笑、茨の冠を頭に被せられるなどさまざまな受難に耐え、人類の罪を償う姿を象徴的に表現≪悲しみのキリスト≫が描かれており、このような聖書の記述にない観念的なイエスの表現はルネサンス期以降、頻繁に表現され、特にネーデルランド絵画やドイツ・ルネサンスの、絶望的なほどの苦痛的表現と人類の罪を償うイエスの深い精神性の表現は特筆に値する。本作もそのような作品の最も優れた作例のひとつであり、血と汗にまみれた痛々しいイエスの肉体的苦痛と、観者を静かに見つめる深く思いイエスの眼差しは、本作を観る全ての者に対し、人類が罪深き存在であることを改めて認識させるのである。

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聖ヨハネ騎士団のための祭壇画 1484年以降
(Shutter of the Altar of the Order of St.John at Haarlem)
各175×139cm | 油彩・板 | ウィーン美術史美術館

15世紀後半にハールレムなど様々な都市で活躍した画家ヘールトヘン・トット・シント・ヤンスを代表する作品『聖ヨハネ騎士団のための祭壇画』。本作はハールレムの聖ヨハネ会修道院の祭壇室のために制作された三連祭壇画の右翼部分で、表面に≪キリストの哀悼≫場面、裏面に≪洗礼者聖ヨハネの遺骨を焼却するよう命じる背教者ユリアヌス≫場面が描かれており、主に取り上げる≪洗礼者聖ヨハネの遺骨を焼却するよう命じる背教者ユリアヌス≫では、ヘロデの娘サロメの願いによって斬首された洗礼者聖ヨハネの埋葬場面から、コンスタンティヌス一世の甥で、ギリシアやローマ神話の神を信仰の対象とする伝統的な多神教を推奨したことからキリスト教信者から背教者と呼ばれたローマ皇帝ユリアヌスの命によって墓から遺体を取り出し焼却させる逸話が同一場面内に描かれている。なお『聖ヨハネ騎士団のための祭壇画』は本作のみが現存するも、16世紀後半の画家マンデルが記した北欧最初の美術史への記述や、マンデルと同時代の版画家マタムの銅版画描写によって祭壇画の構成が判明しており、中央部分には磔刑図が配されていた。

関連:ヘールトヘン・トット・シント・ヤンス作『キリストの哀悼』

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荒野の洗礼者聖ヨハネ (St.John the Baptist) 1490年頃
42×28cm | 油彩・板 | ベルリン国立美術館

初期ネーデルランド絵画の画家ヘールトヘン・トット・シント・ヤンスが晩年期に描いたとされる代表作のひとつ『荒野の洗礼者聖ヨハネ』。制作の意図や経緯は不明であるが、一部の研究者からは画家自身の祈祷用に手がけられたと推測される本作に描かれるのは、神の子イエスを始め多くの人々に洗礼を施した旧約聖書における最後の預言者で、エルサレムの神殿の祭司ザカリアと聖母マリアの従姉妹エリザベトとの間に生まれた息子ヨハネが過ごした荒野での修行場面≪荒野の洗礼者聖ヨハネ≫で、牧歌的な緑々しい荒野でメランコリックに瞑想に耽る洗礼者聖ヨハネの姿が非常に印象的である。独創的な神秘性を含む本作の世界観と、ヘールトヘン・トット・シント・ヤンス独特の登場人物の温和的な表情、子羊を始めとして様々な動物が配された風景表現など秀逸な出来は、画家の傑出した優れた才能を示すものであり、本作はそれが如何なく発揮され我々が目にすることのできる最良の作例のひとつでもある。

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