Description of a work (作品の解説)
2007/11/23掲載
Work figure (作品図)
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老音楽師(辻音楽師))


(Le vieux musicien (Le musicien ambulant)) 1862年頃
187×248cm | 油彩・画布 | ワシントン・ナショナル・ギャラリー

印象派の先駆的存在エドゥアール・マネ初期の代表作『老音楽師(辻音楽師)』。画面の全体的な構成に、『喫煙所(衛兵詰め所、又は騎兵の休息)』などフランス古典主義の画家ル・ナン三兄弟の作品からの影響が指摘されている本作は、(おそらく)当時再開発が進んでいたパリ市内サン=ラザール駅裏手にあった取り壊し後の貧民街の殺風景な風景の中に、そこへと集まる老音楽師や浮浪者、大道芸人、屑拾いなどを描いた集団人物図版的風俗画である。老音楽師は己のアトリエ近郊の≪小ポーランド≫と呼ばれるユダヤ人街に居たゲルーという男をモデルに、大道芸人はバティニョル近郊に住んでいたジャン・ラグレールというジプシーをモデルに描かれているほか、シルクハットを被る屑拾いは画家の1850年代の代表作『アプサントを飲む男』と同一人物である。また中央やや左寄り部分に描かれる二人の浮浪者の子供の描写には17世紀セビーリャ派の巨匠バルトロメ・エステバン・ムリーリョ作『蚤をとる少年』や、ロココ美術の大画家アントワーヌ・ヴァトー作『ピエロ(ジル)』などに典拠を得たと考えられている。登場人物各々が独立し、やや分裂気味に描かれる画面の中に、当時のパリの近代性や社会的変化、そしてそれがより進むであろう未来的予測を見出すことのできる本作には、画家の時代を実直に見つめる鋭い観察眼と、マネのサロン様式にとらわれない、確信犯的かつ野心的な自然主義的写実性が顕著に感じられる。


【全体図】
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箱に腰掛け、ヴァイオリンを手にする老音楽師。本作は、(おそらく)貧民街の殺風景な風景の中に、そこへと集まる人々を描いた集団人物図版的風俗画で、画面の全体的な構成に『喫煙所(衛兵詰め所、又は騎兵の休息)』などフランス古典主義の画家ル・ナン三兄弟の作品からの影響が指摘されている。



【ヴァイオリンを手にする老音楽師】
中央やや左寄り部分に描かれる二人の浮浪者の子供。この子供らの描写は、17世紀セビーリャ派の巨匠ムリーリョ作『蚤をとる少年』や、ロココ美術の大画家アントワーヌ・ヴァトー作『ピエロ(ジル)』などに典拠を得たと考えられている。



【二人の浮浪者の子供】
シルクハットを被る屑拾いの姿。老音楽師は己のアトリエ近郊のユダヤ人街に居たゲルーという男を、大道芸人はバティニョル近郊に住んでいたジャン・ラグレールというジプシーをモデルに描かれているほか、シルクハットを被る屑拾いは画家の『アプサントを飲む男』と同一人物である。



【シルクハットを被る屑拾いの姿】

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