Description of a work (作品の解説)
2007/05/31掲載
Work figure (作品図)
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夏の情景(水浴する男たち)

 (Scène d'été) 1869年
161×161cm | 油彩・画布 | フォッグ美術館(ケンブリッジ)

印象派の画家フレデリック・バジールを代表する作品『夏の情景(水浴する男たち)』。夏の光景とも呼ばれ、メリック近郊レズ河畔を舞台背景に制作された本作に描かれるのは、樺の木立が茂る水場で水浴する大勢の男たちの姿で、1870年のサロンに出品され、非常に高い評価を得ていたことが知られている。本作において最も特筆すべき点は、余暇を水浴しながら過ごすという近代的な日常場面を描きながら、登場人物らの姿態に過去の巨匠らの造形を用い、近代と伝統の総合的価値の再発見、再構築、そして、それらの相互作用による絵画芸術の新たな展開をおこなっている点にある。画面左端で樺の木に凭れ掛かる男は、アンドレア・マンテーニャアントネッロ・ダ・メッシーナなどルネサンス期に活躍した巨匠らも盛んに手がけた≪聖セバスティアヌス≫を思わせる姿態で配されているほか、画面右側で池から上がる男とそれに手を貸す男は≪最後の審判≫で地獄から救い出される人間を連想させる。また画面中央やや左部分に描かれた横たわる男は17世紀フランス古典主義の画家ローラン・ド・ラ・イールに由来していると考えられているが、この人物については大画家エドゥアール・マネの問題作『草上の昼食』との関連性も指摘されている。明瞭な色彩による自然的な陽光の描写、表面的に滑筆な人体描写と、それと対照的である奔放な筆触による草木や水面など背景描写、短縮法を用いた遠近表現など若きバジール(本作は画家が28歳の時に制作された)の苦心や表現描写の未熟さが表れているものの、本作に示される画家が抱いていた芸術や人間への価値観、創造に対する自我同一性は、バジールの類稀な知性と力量を物語っている。

関連:アンドレア・マンテーニャ作 『聖セバスティアヌス』
関連:アントネッロ・ダ・メッシーナ作 『聖セバスティアヌス』
関連:エドゥアール・マネ作 『草上の昼食』


【全体図】
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水浴を止め、池から上がる男。メリック近郊レズ河畔を舞台背景に制作された本作に描かれるのは、樺の木立が茂る水場で水浴する大勢の男たちの姿で、1870年のサロンに出品され、非常に高い評価を得ていたことが知られている。



【水浴を止め、池から上がる男】
樺の木に凭れ掛かる男。この画面左端で樺の木に凭れ掛かる男は、アンドレア・マンテーニャアントネッロ・ダ・メッシーナなどルネサンス期に活躍した巨匠らも盛んに手がけた≪聖セバスティアヌス≫を思わせる姿態で配されている。



【樺の木に凭れ掛かる男】
草場で横たわる男。、画面右側で池から上がる男とそれに手を貸す男は≪最後の審判≫で地獄から救い出される人間を連想させる。また画面中央やや左部分に描かれた横たわる男は17世紀フランス古典主義の画家ローラン・ド・ラ・イールに由来していると考えられている。



【草場で横たわる男】

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