Description of a work (作品の解説)
2004/09/01掲載
Work figure (作品図)
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草上の昼食

 (Le Déjeuner sur l'herbe) 1862-1863年
208×264.5cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)

印象派の先駆的画家エドゥアール・マネの名を一躍有名にした問題作『草上の昼食』。本作はルネサンス三大巨匠のひとりラファエロが残したデッサンに基づいて後世の画家マルカントーニオ・ライモンディが制作した銅版画『パリスの審判拡大図)』や、ルーヴル美術館が所蔵する巨匠ティツィアーノ(原筆はジョルジョーネ)の代表作『田園の奏楽』に(構図的)着想や典拠を得て、神話的主題を、そして古典的名画をマネが当時、民衆の間で流行していたセーヌ河畔で過ごす休暇風景に準って現代化し、『水浴(Le bain)』の名で1863年のサロンに出典された作品である。本作はサロンから拒絶され落選し、落選作品が展示される会場(落選展)で民衆に公開されると、批評家、記者を始めとした来場者の殆どが「堕落した恥ずべき作品」、「批評家をからかい、混乱させるために描いた稚拙で厚かましい作品」と猛烈な批難を浴びせたが、このスキャンダラスな事件はエドゥアール・マネの名を一気にパリ中へ浸透させ、前衛的で伝統に批判的だった若い画家らがマネを先駆者として慕い集うきっかけとなった。裸体で草上に座り観る者と視線を交わす女はヴィクトリーヌ・ムーランという女性をモデルに、正装するふたりの男は画家の弟であったギュスターヴと後に義弟となるフェルディナン・レーンホフをモデルに描いた本作で、最も重要なのは、『田園の奏楽』など伝統的な作品に示されるような、非日常的場面でありながら文学的で芸術性を感じさせる神話的裸体表現の意図とは決定的に異なる、現実の中に描かれる現実の裸体表現にある。こちらを見つめる裸体の女は、観る者に否が応にも現実世界であることを感じさせ、(当時の者にとっては)強い嫌悪感を抱かせる。このような挑発的で伝統への挑戦的な行為はマネ芸術の根幹であり、それは後の印象派らの画家たちと通ずる思想や表現でもあった。なお本作はマネの個展が1867年に開かれた際、現名称である『草上の昼食』と画家自身が変更した。

関連:ライモンディ作『パリスの審判』 / 右下部分拡大図
関連:ティツィアーノ作『田園の奏楽』


【全体図】
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パリ郊外のセーヌ河畔で昼食をとる紳士と裸の婦人。 本作は神話的主題を、そして古典的名画をマネが当時、民衆の間で流行していたセーヌ河畔で過ごす休暇風景に準って現代化し、『水浴(Le bain)』の名で1863年のサロンに出典された作品である。



【観る者と視線を交わす裸の女】
本作はルネサンス三大巨匠のひとりラファエロが残したデッサンに基づいて後世の画家マルカントーニオ・ライモンディが制作した銅版画『パリスの審判拡大図)』や、ルーヴル美術館が所蔵する巨匠ティツィアーノ(原筆はジョルジョーネ)の代表作『田園の奏楽』に(構図的)着想や典拠を得て制作されている。



【銅版画『パリスの審判』と同様の構図】
地面に散乱する果物。本作で最も重要なのは、伝統的な作品に示されるような、非日常的場面でありながら文学的で芸術性を感じさせる神話的裸体表現の意図とは決定的に異なる、現実の中に描かれる現実の裸体表現にある。



【地面に散乱する果物】
画面の奥で水浴する女。裸体の女は観る者に否が応にも現実世界であることを感じさせ、(当時の者にとっては)強い嫌悪感を抱かせる。本作のような挑発的で伝統への挑戦的な行為はマネ芸術の根幹であり、それは後の印象派らの画家たちと通ずる思想や表現でもあった。



【画面の奥で水浴する女】

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