Description of a work (作品の解説)
2008/04/30掲載
Work figure (作品図)
■ 

舞踏会の楽しみ(舞踏会の喜び)


(Les Plaisirs du bal) 1717年頃
52.6×65.4cm | 油彩・画布 | ダリッチ美術館(ロンドン)

雅宴画(フェート・ギャラント)の確立者アントワーヌ・ヴァトー随一の傑作『舞踏会の楽しみ(舞踏会の喜び)』。数々の模写が残されていることから、制作当初から画家の傑作のひとつとして数えられていたことがうかがい知れる本作は、パリのリュクサンブール宮殿を思わせる宮殿内でおこなわれる舞踏会の様子を描いた作品である。バロック絵画の巨匠ピーテル・パウル・ルーベンスの代表作『愛の庭 -当世風社交-』に霊感を得て、17世紀フランドルの画家ヒエロニムス・ヤンセンスの『宮殿テラスでの舞踏会』から直接的な影響を受けて制作されたと考えられている本作は、縦52.6cm、横65.4cmと非常に寸法の小さい画面の中に65人(73人とする説もある)の人々と、4匹の犬が描き込まれており、このヴァトーの高い力量が示される精巧で緻密な描写によって本作では、本来ならば制約となり不利になるはずの寸法の小ささを全く感じさせず、むしろスケールの大きさすら感じられる。さらに優雅に舞踏する若い男女を始め、芝居役者、道化師、楽士、召使(従者)、侍女、見物人など様々な人々が配されているにも係わらず、(多人数構成による特有の)煩さは皆無であり、この構成の巧みさや、背景(風景)と建物、登場人物らの関係性の見事さは、画家の全作品の中でも特に優れている。さらに現実(貴族社会での日常)と幻想が混合される独特の舞台(場面)表現や、陽気的かつヴァトー独特の詩情性に溢れた雰囲気の描写、前景の宮殿内と遠景の開放感に溢れる理想郷的な風景の空間的対比も特に注目すべき点である。また画面右上のバルコニーに配される、この情景を眺める少年の姿や、画面中央やや右部に配される婦人にワインを運ぶ黒人の少年の姿はヴェネツィア派の大画家パオロ・ヴェロネーゼの影響が指摘されている。なおロマン主義隆盛時代に活躍した英国絵画史上、最も重要な風景画家のひとりであるジョン・コンスタブルは本作を観て、思わず「なんと甘く、優しく、そして柔らかで芳ばしいのだろうか、まるで蜂蜜のようだ。この不可思議で優美な絵を観てしまうと、ルーベンスヴェロネーゼでさえも卑俗に見えてしまう。」と感嘆の声をあげたと言われている。

関連:ルーベンス作 『愛の庭 -当世風社交-』
関連:ヒエロニムス・ヤンセンス作 『宮殿テラスでの舞踏会』


【全体図】
拡大表示
優雅に舞踏を楽しむ若い男女の姿。この若い男女を始め、芝居役者、道化師、楽士、召使(従者)、侍女、見物人など様々な人々が配されているにも係わらず、(多人数構成による特有の)煩さは皆無であり、この構成の巧みさや、背景(風景)と建物、登場人物らの関係性の見事さは、画家の全作品の中でも特に優れている。



【優雅に舞踏を楽しむ若い男女の姿】
小作としては考えられないほどの大人数による画面構成。ルーベンスの代表作『愛の庭 -当世風社交-』に霊感を得て、ヒエロニムス・ヤンセンスの『宮殿テラスでの舞踏会』から直接的な影響を受けて制作されたと考えられている本作は、縦52.6cm、横65.4cmと非常に寸法の小さい画面の中に65人(73人とする説もある)の人々と、4匹の犬が描き込まれている。



【大人数による画面構成】
開放感に溢れる理想郷的な風景表現。現実(貴族社会での日常)と幻想が混合される独特の舞台(場面)表現や、陽気的かつヴァトー独特の詩情性に溢れた雰囲気の描写、前景の宮殿内と遠景の開放感に溢れる理想郷的な風景の空間的対比も特に注目すべき点である。



【開放感に溢れる理想郷的な風景】

Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション
作品イメージ