Introduction of an artist(アーティスト紹介)
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ヴィトーレ・カルパッチョ Vittore Carpaccio
1460-1526 | イタリア | 初期ルネサンス ヴェネツィア派




15世紀末から16世紀初頭にかけ活躍したヴェネツィア派を代表する画家。幻想性を備える静的動作の人物や建築的遠近法、柔らかな光の描写や格調高い鮮やかな色彩などが特徴。様式形成において、初期作品にはアントネッロ・ダ・メッシーナジョヴァンニ・ベッリーニバルトロメオ・ヴィヴァリーニなど先人の画家たちやフェラーラ派、フランドル絵画などの影響も認められるが次第に独自の様式を確立。画業の後期は、台頭し始めたティツィアーノの人気に押され、流行から取り残されるものの、ジョルジョーネなどヴェネツィア派の王道である色彩主義とは一線を画す独自の存在として、19世紀にジョヴァンニ・ベッリーニに次ぐ15世紀を代表するヴェネツィア派の画家であると再評価された。

Description of a work (作品の解説)
Work figure (作品図)
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二人のヴェネツィア婦人(高級娼婦)

 1490年頃
(Due dame veneziane (Corigiane)) | 94×64cm
油彩・板 | コレル美術館(ヴェネツィア)

15世紀末〜16世紀初頭のヴェネツィア派を代表する画家ヴィトーレ・カルパッチョの謎多き代表作『二人のヴェネツィア婦人』。英国の批評家ラスキンによって19世紀に『高級娼婦』との誤名で紹介され広く知られることになった本作の制作目的は何であったか長い間不明であったが、L.A.のポール・ゲッティ美術館の調査によって同美術館が所蔵する『ラグーナ(潟)での狩猟』と本作『二人のヴェネツィア婦人(高級娼婦)』は元来、上下つながっていたことが判明し(参照:『二人のヴェネツィア婦人』合成図)、これと同様程度のサイズで反対部分を構成する未発見の作品と合わせ、扉絵として制作された可能性が高いと推測されている。本作に示される柔軟な光の描写や温和でありながら格調の高さが感じられる色彩表現、当時の建築学に基づいた遠近法の使用や空間構成、各所に配される小動物やプレーリ家の紋章が刻まれる花瓶などにヴィトーレ・カルパッチョの高度な技量と独自性による様式が表されている。

関連:ポール・ゲッティ美術館所蔵『ラグーナ(潟)での狩猟』
関連:『二人のヴェネツィア婦人』合成図

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【全体図】
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聖ウルスラ伝

 (Storie di sant'Orsola) 1490-1495年
油彩・画布 | 各部による | アカデミア美術館(ヴェネツィア)

ヴィトーレ・カルパッチョが残した連作画の中で、最も初期に描かれた作品群『聖ウルスラ伝』。聖ウルスラ同信会主祭壇画のために描かれた本作の主題は、初期キリスト教の伝説的な聖人として黄金伝説を典拠とする≪聖ウルスラ伝≫を描いたもので、描かれた9作品全てがカルパッチョ直筆とされる。フェラーラ派の影響を思わせる柔軟な光彩の描写のほか、遠近法によって描かれる精密な空間構造など、カルパッチョ独自の様式が示される。また細部にまで丹念に描かれる描写から、当時の生活を知ることのできる貴重な資料として重宝されている。聖ウルスラとはイギリス王の娘として生まれ、婚約者コノンと1万1000人の侍女を連れローマへ巡礼の旅に出るも、その帰路の途中、蛮族ケルンのフン族に襲われ殉教した初期キリスト教伝説の聖女である。なお『聖ウルスラ伝』の場面は≪イギリス大使の到着≫、≪出発の挨拶をおこなうイギリス大使≫、≪イギリス大使の帰国≫、≪巡礼への出発≫、≪巡礼者たちと教皇の会見≫、≪聖ウルスラの夢≫、≪ケルンへの到着≫、≪巡礼者たちの殉教と聖ウルスラの埋葬≫、≪聖ウルスラの称揚≫の9場面から構成されている。

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受胎告知(聖母の生涯より)

 1504-1508年
(Annunciazione (Storie di Maria)) | 127×139cm
油彩・画布 | カ・ドーロ・ジョルジョ・フランケッティ・ギャラリー

ヴィトーレ・カルパッチョの代表的な作品群『聖母の生涯』より≪受胎告知≫。本来『聖母の生涯』はヴェネツィアに滞在するアルバニア人の為に設立されたアルバネージ同信会館の礼拝堂の祭壇画として描かれた作品群であったが19世紀当初に散逸した経緯を持つ。本作は作品群の中でも秀逸の出来栄えを見せる≪受胎告知≫で、カルパッチョらしい柔らかく豊かな聖性を放つ光と、格調高い明瞭な色彩の描写は見事の一言である。また秩序的な遠近法に基づく画面構成や典型的な人物の配置によって、本作に必要とされる聖性を示している。『聖母の生涯』の場面は本作≪受胎告知≫の他、≪聖母の誕生≫、≪聖母の神殿奉献≫、≪聖母の結婚≫、≪聖母のエリザベツ訪問≫、≪聖母の死≫から構成された。

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若い騎士の肖像

 (Ritratto di cavaliere)
1510年 | 218×152cm | 油彩・画布
ティッセン=ボルネミッサ・コレクション

15世紀末のヴェネツィアにおいて随一の画家として知られるヴィトーレ・カルパッチョの代表的な肖像画作品のひとつ『若い騎士の肖像』。本作に描かれるのは、画面内に配される紋章や細微の描写から一般的にウルビーノ公フランチェスコ・マリア・デラ・ローヴェレの若き姿(20歳前後)と考えられているが、他にも諸説唱えられており、現在も議論が続いている。本作がヴィトーレ・カルパッチョの肖像画中で最も優れているとされる点は、人文主義的な教養に基づいた極めて詩情的な表現にある。画面左下へ≪王者の尊厳、貴族階級、正義、純潔≫などの象徴と考えられる白貂(白テン)と共に配される白紙への記述「不名誉よりは死を選ぶ」に示されるよう、当時、終焉を迎えつつあった騎士道が表現されている本作では、甲冑を纏い凛々しく剣に手をかけるフランチェスコ・マリア・デラ・ローヴェレや様々な草花が咲く地、詩情性を感じさせる背景など極めて高度な写実的細密描写に、初期ネーデルランド絵画の影響が指摘されている。

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