Description of a work (作品の解説)
2007/11/04掲載
Work figure (作品図)
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皇帝マクシミリアンの処刑


(L'execution de l'empereur Maximilian) 1867年
252×305cm | 油彩・画布 | マンハイム市立美術館

印象派の先駆者エドゥアール・マネが手がけた歴史画の代表作『皇帝マクシミリアンの処刑』。画家の作品の中でも特に有名な本作に描かれるのは、ナポレオン3世の要請により(フランス軍の現地駐留という条件付で)メキシコ皇帝に即位した、オーストリア皇帝フランツ・ヨゼフの弟≪マクシミリアン≫大公がメキシコのベニート・フアレス軍によって銃殺刑に処される場面で、構図や画面構成はロマン主義の大画家フランシスコ・デ・ゴヤの傑作『1808年5月3日、プリンシペ・ピオの丘での銃殺』から着想を得られていることが知られている。ナポレオン3世はアメリカ大陸でのフランスの影響力の拡大する目的で1861年から1863年にメキシコへ軍を侵攻させ、1864年に同地で皇帝マクシミリアンを即位させたが、その関係はマクシミリアンの即位後、わずか1年足らずで悪化し、1867年3月にはナポレオン3世がメキシコへ駐留していたフランス軍を全て撤退させた。フランス軍によって北へ追い出されていたものの、アメリカの軍事支援を得ていた指導者ベニート・フアレス率いるメキシコ軍はこれを契機にメキシコへ進軍、フランス軍の後ろ盾が無くなったマクシミリアンに退位を迫ったがマクシミリアンがこれを拒否し、1867年6月19日に処刑がおこなわれた(その後フアレスは共和制を復活させた)。この一連の事件は皇帝ナポレオン3世への責任問題へと発展しただけでなく、皇帝によるフランス第二帝政に対して反感の象徴ともなった。共和主義者であったマネは本歴史画を制作することで(真意は不明であるが)現実としての表現による絵画的挑戦をおこなったほか、それは官展(サロン)へのアピールも兼ねていた。本作は事実とは異なる点が多く、銃殺刑の執行者たちはフアレスの正規軍の制服ではなく、フランス軍の制服に類似している(画家の友人ルジョーヌ将軍に頼み、小部隊をモデルとして使用した)。本作が『1808年5月3日、プリンシペ・ピオの丘での銃殺』と決定的に異なるのは、人物の動作、姿態的感情にある。ゴヤの作品では登場人物は演劇的な激しい感情に溢れているが、本作ではマクシミリアン(と部下であるミゲル・ミラモン将軍、トマス・メヒヤ)や銃殺執行隊はある種醒めた感情表現によって描写され、粛々と刑の執行が進められているようである。また事実とは異なり、受刑者三人の真ん中にマクシミリアンを配することで、この処刑を受難者イエスに準えたとする解釈もある。マネの政治的意図が顕著に示される本作は当局により反政府的と見なされたほか、本作を見たエミール・ゾラはナポレオン3世の失政に対して皮肉を込め「マクシミリアンはフランスによって銃殺されたのだ」と述べている。なお本作以外に本場面を描いた作品が、油彩画3点、リトグラフ1点確認されている。

関連:ゴヤ作 『1808年5月3日、プリンシペ・ピオの丘での銃殺』
関連:ボストン美術館所蔵(油彩)(リトグラフ)
関連:ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵(油彩)
関連:ニイ・カールスベルク彫刻館所蔵(油彩)


【全体図】
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粛々と刑を執行する銃殺執行隊。本作がゴヤの作品と決定的に異なるのは、人物の動作、姿態的感情にある。ゴヤの作品では登場人物は演劇的な激しい感情に溢れているが、本作ではマクシミリアンや銃殺執行隊はある種醒めた感情表現によって描写され、粛々と刑の執行が進められているようである。



【粛々と刑を執行する銃殺執行隊】
刑の執行を待つマクシミリアン(左の帽子の男)とその部下ミゲル・ミラモン将軍(右の髭の男)。画家の作品の中でも特に有名な本作に描かれるのは、ナポレオン3世の要請によりメキシコ皇帝に即位した、オーストリア皇帝フランツ・ヨゼフの弟≪マクシミリアン≫大公がメキシコのベニート・フアレス軍によって銃殺刑に処される場面である。



【マクシミリアンとミゲル・ミラモン将軍】
銃殺されるトマス・メヒヤの姿。マネの政治的意図が顕著に示される本作は当局により反政府的と見なされたほか、本作を見たエミール・ゾラはナポレオン3世の失政に対して皮肉を込め「マクシミリアンはフランスによって銃殺されたのだ」と述べている。



【銃殺されるトマス・メヒヤの姿】
マクシミリアンらの処刑を目撃するメキシコの農民。本作の構図や画面構成はロマン主義の大画家フランシスコ・デ・ゴヤの傑作『1808年5月3日、プリンシペ・ピオの丘での銃殺』から着想を得られていることが知られている。



【処刑を目撃するメキシコの農民】

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