Description of a work (作品の解説)
2008/05/14掲載
Work figure (作品図)
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オーヴェールの教会

 (Eglise d'Auvers) 1890年
94×74cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)

後期印象派の偉大なる巨匠フィンセント・ファン・ゴッホ最晩年の代表作『オーヴェールの教会(オーヴェールの聖堂)』。本作はかの有名な耳切り事件後、精神的に不安定となったゴッホが、1890年5月20日からパリ北西イル=ド=フランス地域圏のオーヴェール=シュル=オワーズに赴き、画家の友人であり、セザンヌなど新しい芸術家たちへの支援を惜しまなかった医学博士(精神科医)ポール・ガシェのもとで治療・療養生活を過ごした最後の二ヶ月間で手がけられた80点あまりの作品の中の1点で、12世紀頃に同地へ建てられ、以後、改修が重ね続けられてきた≪教会≫を描いた作品ある。空間が渦巻いた深い青色の空を背景に、逆光的に影の中に沈む重量感に溢れた本作のオーヴェールの教会は、何者をも寄せ付けぬような、不気味とも呼べるほど非常に厳めしい雰囲気を醸し出している。そして構造的にはほぼ正確に描かれているものの、その形体は波打つように激しく歪んでおり、教会の近寄りがたい異様な様子を、より一層強調している。これらをゴッホの不安と苦痛に満ちた病的な心理・意識世界の反映(顕示)と解釈するか、あくまでも画家として技術的・表現的な革新性を見出したゴッホの極めて個性的な対象表現と解釈するか、その意見は批評家・研究者の間でも分かれているが、ひとつの絵画作品として本作を捉えた場合、ゴッホ最晩年期の筆触の大きな特徴である、やや長めで直線的な筆使いと共に、本風景(情景)に示される精神的迫真性は圧巻の一言である。さらに色彩表現においても、画面中央から上部へは、まるで教会が負(邪悪)のエネルギーを放出しているかのような暗く重々しい色彩を、下部へは一転して、大地の生命力を感じさせる明瞭で鮮やか色彩が配されており、この明確な色彩的対比は画家の数多い作品の中でも秀逸の出来栄えである。

関連:『ポール・ガシェ医師の肖像(ガッシェ博士の肖像)』


【全体図】
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非常に厳めしい雰囲気を醸し出すオーヴェールの教会。本作は精神的に不安定となったゴッホが、1890年5月20日からオーヴェール=シュル=オワーズに赴き、画家の友人である医学博士ポール・ガシェのもとで治療・療養生活を過ごした最後の二ヶ月間で手がけられた80点あまりの作品の中の1点である。



【厳めしい雰囲気を醸し出す教会】
異様に空間が渦巻く深い青色の空。この空を背景に、逆光的に影の中に沈む重量感に溢れた本作のオーヴェールの教会は、何者をも寄せ付けぬような、不気味とも呼べるほど非常に厳めしい雰囲気を醸し出している。



【異様に空間が渦巻く深い青色の空】
分かれ道(Y字路)を進むひとりの農婦。本作をゴッホの不安と苦痛に満ちた病的な心理・意識世界の反映(顕示)と解釈するか、あくまでも画家として技術的・表現的な革新性を見出したゴッホの極めて個性的な対象表現と解釈するか、その意見は批評家・研究者の間でも分かれている。



【分かれ道(Y字路)を進むひとりの農婦】
ゴッホ最晩年期の筆触の大きな特徴である、やや長めで直線的な筆使い。画面中央から上部へは、まるで教会が負(邪悪)のエネルギーを放出しているかのような暗く重々しい色彩を、下部へは一転して、大地の生命力を感じさせる明瞭で鮮やか色彩が配されている。



【やや長めで直線的な筆使い】

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