Description of a work (作品の解説)
2009/06/19掲載
Work figure (作品図)
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アルル、ぶどうの収穫(人間の悲劇)


(Misères humaines (Les vendanges)) 1888年
73.5×92.5cm | 油彩・画布 | オルドルップガード・コレクション

19世紀末にフランスで開花した総合主義の創始者のひとりポール・ゴーギャンアルル滞在期の作品『アルル、ぶどうの収穫(人間の悲劇)』。本作はフィンセント・ファン・ゴッホの熱心な誘いを受け、南仏アルルの地へ赴いた画家が1888年11月頃に同地で制作された作品で、アルルでのぶどうの収穫の風景の中へ、ブルターニュの伝統的な衣服を身に着けた女を配した、アルルとブルターニュの混合的作品でもある。本作についてゴーギャン自身が友人に宛てた手紙の中で次のように述べている。「君はこの『アルル、ぶどうの収穫』の中に描かれる悲観に暮れた哀れな者に気付くだろうか?知性や優美性、そしてあらゆる自然の恩恵を受けることができない人間ということではない。それはひとりの女である。彼女は頬杖をつき何も思考せず、ただ座り込んでいるが、太陽に照らされ赤々と大地を染める山積みのぶどうが意味する、自然の恵みの慰めを感じているのである。そして黒い服を身に纏う女が、彼女を姉妹を見るかのように眺めるのだ。」。このように画家自身が指摘するよう、本作で最も注目すべき点は頬杖をつきながら足を広げ大地に座り込む女と、黒尽くめの女との関係性にある。大地に座り込む憂鬱そうな女の姿態は、パリ民族博物館に所蔵されるミイラに着想を得られたものであり、画家晩年の傑作『我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか』を始め、その後もしばしば登場することとなる。この女の物悲しい雰囲気は本情景にではなく、人間そのものへ向けられたものだと解釈されており、ぶどうの収穫が意味する≪豊穣≫と対比するかの如く、悲劇や罪悪などの感情を見出すことができる。さらにそこから考察すると黒尽くめの女には、人間としての以外にも死の象徴≪死神≫的な関係性を導き出すことができるのである。また背景となる山積みのぶどうのすぐ下に配される泡立つ様な描写には、女性の性的解放の暗喩が隠されているとの指摘もある。


【全体図】
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物悲しそうに座り込む頬杖をついた女。大地に座り込む憂鬱そうな女の姿態は、パリ民族博物館に所蔵されるミイラに着想を得られたものであり、画家晩年の傑作『我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか』を始め、その後もしばしば登場することとなる。



【物悲しそうに座り込む頬杖をついた女】
ぶどうを収穫するブルターニュの伝統的な衣服を身に着けた女。本作はゴッホの熱心な誘いを受け、南仏アルルの地へ赴いた画家が同地で制作した作品で、アルルでのぶどうの収穫の風景の中へ、ブルターニュの伝統的な衣服を身に着けた女を配した、アルルとブルターニュの混合的作品でもある。



【ぶどうを収穫する女たち】
死の象徴≪死神≫とも解釈できる黒尽くめの女。頬杖の女の物悲しい雰囲気は本情景にではなく、人間そのものへ向けられたものだと解釈されており、ぶどうの収穫が意味する≪豊穣≫と対比するかの如く、悲劇や罪悪などの感情を見出すことができる。



【死の象徴≪死神≫とも解釈できる女】

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