Description of a work (作品の解説)
2008/11/26掲載
Work figure (作品図)
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ヒナ・テ・ファトゥ(月と大地、月と地球、月と地の神)


(Hina Te Fatou (La lune et la terre)) 1893年
114.3×62.2cm | 油彩・画布 | ニューヨーク近代美術館

総合主義の確立者のひとりポール・ゴーギャン第1次タヒチ滞在期の最も重要な作品のひとつ『ヒナ・テ・ファトゥ(月と大地)』。本作はタヒチのマリオ族に伝わる古代ポリネシアの神話≪月の神ヒナと大地の神ファトゥ≫の風習に典拠を得て制作された作品である。≪月の神ヒナと大地の神ファトゥ≫とは月の神ヒナが必ず死が訪れる哀れな人間が再度、生を受けられる(生き返る、又は不死)ように大地の神ファトゥへ懇願するものの、ファトゥがその願いを拒否するという逸話で、ゴーギャンは古代ポリネシアの神話から数多くの作品を生み出している。画面中央やや左側へ裸体の全身像にて描かれる背を向けた月の神ヒナは、画面右上に配される、まるで彫刻のような大地の神ファトゥへ縋るように人間の生を懇願している。大地の神ファトゥは月の神ヒナと視線を交わすことなく厳しい表情を浮かべており、ヒナの懇願を拒絶していることは一目瞭然である。全体的には非常に象徴的な本主題をゴーギャンは非現実的な様子で描写しているが、構成要素ひとつひとつに注目してみると、(特に月の神ヒナの裸体など)現実味を感じさせる表現が用いられていることは特に注目すべきである。また背を向けた月の神ヒナの姿態はエジプト美術からの影響が色濃く反映しており、この頃の画家の様式的傾倒を見出すことができるほか、一部の研究者からは新古典主義最後の巨匠ジャン=オーギュスト・ドミニク・アングルの傑作『泉』からの引用も指摘されている。さらに色彩表現に注目しても、太く明確な輪郭線に囲まれた面を平面的に描写し、その面によって構成される各対象の色彩的対比、特に月の神ヒナの明瞭な褐色的肌色と大地の神ファトゥの暗く沈んだ黒色に近い肌の色、ファトゥの下に描かれる鮮やかな緑色の植物とそのさらに下の毒々しさすら感じさせる濃密な水溜りの赤色の対比は、観る者に幻覚的で夢想的な感覚すら与える。なお本作はゴーギャンが本作を制作した1893年の6月に帰国しデュラン=リュエルの画廊で開催した個展に出品された際、印象派の巨匠エドガー・ドガが購入した作品としても知られている。


【全体図】
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人間の生を懇願する月の神ヒナ。本作に描かれる主題≪月の神ヒナと大地の神ファトゥ≫とは月の神ヒナが必ず死が訪れる人間が再度、生を受けられるように大地の神ファトゥへ懇願するものの、ファトゥがその願いを拒否するという逸話で、画家は古代ポリネシアの神話から数多くの作品を生み出している。



【人間の生を懇願する月の神ヒナ】
月の神ヒナの願いを拒絶する大地の神ファトゥ。全体的には非常に象徴的な本主題をゴーギャンは非現実的な様子で描写しているが、構成要素ひとつひとつに注目してみると、(特に月の神ヒナの裸体など)現実味を感じさせる表現が用いられていることは特に注目すべきである。



【願いを拒絶する大地の神ファトゥ】
毒々しさすら感じさせる濃密な水溜りの赤色。各対象の色彩的対比、特に月の神ヒナの明瞭な褐色的肌色と大地の神ファトゥの暗く沈んだ黒色に近い肌の色、ファトゥの下に描かれる鮮やかな緑色の植物と濃密な水溜りの赤色の対比は、観る者に幻覚的で夢想的な感覚すら与える。



【濃密な水溜りの赤色】

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