Description of a work (作品の解説)
2008/11/09掲載
Work figure (作品図)
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愛の争い(愛の戦い)

 (La lutte d'amour) 1880年頃
38×46cm | 油彩・画布 | ワシントン・ナショナル・ギャラリー

近代絵画の偉大なる巨匠ポール・セザンヌ作『愛の争い(愛の戦い)』。共に印象派展へ出品もしていた同時代の大画家ピエール=オーギュスト・ルノワールの旧蔵となる本作は、森の中で繰り広げられる男女、そして女と女による愛の争いの情景を描いた作品であるが、その解釈には様々な説が唱えられており、現在も議論が続いている。おそらくは神話画や牧歌的情景画など古典的な絵画にも通じているのであろう、セザンヌ独特の荒々しく劇場的な筆触によって表現される本作の愛の争いをおこなう男女らの姿は非常に暴力的であり、否が応にも画家初期の作品に見られる乱暴な強制力による性的妄想を予感させる。特に四組の男女らの内、右から2番目に描かれる最前景の男の性器は明らかに雄雄しく反り返っており、強姦的な様子さえ感じさせる。そしてさらにその隣には興奮しながら吠えている一匹の黒犬が描き込まれていることも特に注目すべき点である。また画面中央(右から3番目)に描かれる金髪を靡かせた女同士による愛の争い(※これは愛の和解とする説もある)の姿は神話の一場面のような独特の雰囲気を醸し出しており、観る者の目を奪う。またそれとは別に、一部の研究者たちからはルネサンスヴェネツィア派の確立者ジョヴァンニ・ベッリーニや同派最大の巨人ティツィアーノの影響が指摘されている本作は同時代やバロック期に流行した愛を称える賛歌的な作品とする説も唱えられている。何にせよ本作は小作ながら、セザンヌの個人的な記憶(画家は若かりし頃、よく友人らと水浴を楽しんでいた)や愛への考察・傾向が根幹となっていると推測することができる作品であり、同時期の画家の極めて重要な作品と位置づけることができる。なお本画題を描いた作品が本作以外に2点確認されており、その中の1点はかつてセザンヌの最大の理解者であったカミーユ・ピサロが所蔵していたことが知られている。


【全体図】
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画面中央に描かれる金髪を靡かせた女たち。共に印象派展へ出品もしていた同時代の大画家ピエール=オーギュスト・ルノワールの旧蔵となる本作は、森の中で繰り広げられる男女、そして女と女による愛の争いの情景を描いた作品である。



【金髪を靡かせた女たち】
強姦的な様子さえ感じさせる男女の姿。本作は小作ながら、セザンヌの個人的な記憶(画家は若かりし頃、よく友人らと水浴を楽しんでいた)や愛への考察・傾向が根幹となっていると推測することができる作品であり、同時期の画家の極めて重要な作品と位置づけることができる。



【強姦的な様子さえ感じさせる男女の姿】
セザンヌ独特の荒々しく劇場的な筆触。本作の愛の争いをおこなう男女らの姿は非常に暴力的であり、否が応にも画家初期の乱暴な強制力による性的妄想を予感させるものの、一方では愛を称える賛歌的な作品とする説も唱えられている。



【セザンヌ独特の荒々しく劇場的な筆触】

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