Description of a work (作品の解説)
2007/12/25掲載
Work figure (作品図)
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 (Liebe) 1895年
60×44cm | 油彩・画布 | ウィーン市立歴史美術館

19世紀末に活躍した象徴主義の画家グスタフ・クリムト成熟期の代表作『愛』。世紀末的な画題や表現が席巻した1890年代後半(1895年)に制作された画家の作品の中でも代表的作例としても知られている本作は、若い一組の男女が、やや鬱蒼とした園の中で今まさに口づけを交わそうとする姿を描いた作品である。非常に甘くロマンティックな雰囲気の場面描写、悲愴的でありながら目の前の相手のみに意識を集中させる運命的な表情は、二人のただならぬ内密的な関係を予感させ、観る者にその後の(悲劇的な)成り行きを想像させるほか、この二人の関係性にはファム・ファタル(運命の女)的思想も感じられる。また叙情性や幻想的を如実に感じさせる色彩描写や初期の画家にも通じる繊細な写実的描写も特筆に値するものである。さらに画面上部に描かれる二人を見守る(※覗いているかのようでもある)印象的な複数の頭部の解釈は諸説あるものの、≪幼少期≫、≪青年期≫、≪老年期≫、そして≪死≫など、人生の経過とその儚さを表現したものであるとの説が有力視されている。画面の左右には金地の上に桃色の薔薇が左右非対称に描かれており、この余白を活かした装飾的な薔薇の表現は明らかにクリムトのジャポニズム(日本趣味)様式の取り入れを示すもので、このジャポニズムの影響は、印象主義時代にロンドンやパリで活躍したアメリカ出身の画家ホイッスラーを介したとも推測されている。なお本作には対となる作品『カルロスの衣装を身にまとった俳優ジョセフ・ルインスキー』が存在する。

関連:『カルロスの衣装を身に着けるジョセフ・ルインスキー』


【全体図】
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悲愴的でありながら目の前の相手のみに意識を集中させる男女の運命的な表情。この表情や非常に甘くロマンティックな雰囲気の場面描写は、二人のただならぬ内密的な関係を予感させ、観る者にその後の(悲劇的な)成り行きを想像させるほか、二人の関係性にはファム・ファタル(運命の女)的思想も感じられる。



【相手に意識を集中させる男女の表情】
画面上部に描かれる二人を見守る(※覗いているかのようでもある)印象的な複数の頭部。この頭部の解釈は諸説あるものの、≪幼少期≫、≪青年期≫、≪老年期≫、そして≪死≫など、人生の経過とその儚さを表現したものであるとの説が有力視されている。



【二人を見守る印象的な複数の頭部】
金地の上へ左右非対称に描かれる桃色の薔薇。この余白を活かした装飾的な薔薇の表現は明らかにクリムトのジャポニズム(日本趣味)様式の取り入れを示すもので、このジャポニズムの影響は、印象主義時代にロンドンやパリで活躍したアメリカ出身の画家ホイッスラーを介したとも推測されている。



【金地の上へ描かれる桃色の薔薇】

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