Description of a work (作品の解説)
2008/09/04掲載
Work figure (作品図)
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スペイン風の読書

 (Lecture espagnole) 1761年
164×129cm | 油彩・画布 | エルミタージュ美術館

18世紀フランス美術界の巨匠カルル・ヴァン・ローの大様式(偉大なる様式、グラン・ステイル)による風俗画作品の傑作『スペイン風の読書』。制作年となる1761年のサロン出品作でもある本作は、ジョフラン夫人の依頼により制作された作品で、画家が1750年代頃から傾倒し、自身の名声を確立させた古典主義的表現≪大様式≫の特徴が良く表れた典型的な作例のひとつとしても知られている。画面中央で大地に腰掛ける若い男が読む書物は、アメリカ独立戦争やフランス革命で名を馳せたラ・ファイエット侯爵の夫人(ラ・ファイエット夫人)が手がけたとされる小説≪ザイード≫と考えられており、この≪ザイード≫はスペインを舞台とした物語であった。また二人の美しく魅惑的な婦人がこの男に寄り添い、読まれる小説の内容に聞き入っている。さらに男の背後には(おそらく母子と思われる)大人の女性と愛らしい少女が配されており、少女は小鳥を紐で括り空へと放っている。この小鳥に関しては女性に心を奪われた男を意味していると解釈されている。本作に描かれる美しく魅惑的な二人の若い婦人はスペイン風と呼ばれた豪華な立ち襟の付いた演劇的な衣服を着ており、これが本作の名称≪スペイン風の読書≫の由来となっている。本作で最も注目すべき点は(同時代に活躍したブーシェと比較し)しばしば男性的とも比喩されるバロック的な描写手法とロココ的な優美さの融合的表現にある。強い光源による明暗対比の明確な表現が用いられているものの、全体としては柔和的で調和性に優れた色彩構成が施されており、これこそ≪大様式≫のひとつの典型的な表現手法なのである。またこの独自的な表現はヴァトーの雅宴画(フェート・ギャラント)を連想させる、やや憂鬱的な雰囲気を感じさせる本作のような風俗画でも絶大な効果を発揮しており、現在でも観る者を魅了する。なお本作は(本作以前に制作された)『スペイン風の語らい』の対画として制作されたことが知られている。


【全体図】
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腰を下ろし読書する若い男。1761年のサロン出品作でもある本作は、ジョフラン夫人の依頼により制作された作品で、画家が1750年代頃から傾倒し、自身の名声を確立させた古典主義的表現≪大様式≫の特徴が良く表れた典型的な作例のひとつとしても知られている。



【腰を下ろし読書する若い男】
読まれる小説の内容に聞き入る魅惑的な二人の女性。本作に描かれる美しく魅惑的な二人の若い婦人はスペイン風と呼ばれた豪華な立ち襟の付いた演劇的な衣服を着ており、これが本作の名称≪スペイン風の読書≫の由来となっている。



【小説の内容に聞き入る二人の女性】
(おそらく母子と思われる)大人の女性と愛らしい少女。強い光源による明暗対比の明確な表現が用いられているものの、全体としては柔和的で調和性に優れた色彩構成が施されており、これこそ≪大様式≫のひとつの典型的な表現手法なのである。



【大人の女性と愛らしい少女】

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