Description of a work (作品の解説)
2008/09/22掲載
Work figure (作品図)
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野苺の籠(木いちごのかご、野イチゴの籠)


(Panier de fraises des bois) 1761年
38×46cm | 油彩・画布 | 個人所蔵

18世紀フランスを代表する風俗画・静物画の巨匠ジャン・シメオン・シャルダンが1761年に手がけた傑作的静物画作品のひとつ『野苺の籠(木いちごのかご、野イチゴの籠)』。本作は平たい籠の中へ山積みにされた野苺(キイチゴ)を中心に、周囲へ水の入ったグラス、二輪の白いカーネーション、そして桜桃(サクランボ)と小桃を配した静物画である。本作同様1760年代に制作された『葡萄と石榴』や『音楽の象徴(音楽の寓意)』などの静物画と比較すると、本作はあまりにも簡素な対称配置によって画面が構成されている印象を受けるが、これこそ歳を重ねたシャルダンが辿り着いたもうひとつの静物画世界なのである。画面の中心に配される山積みされる野苺の入った平籠は、質素ながら強い安定感を示している棚台の上で、本作の明確な主題として圧倒的な存在感を醸し出しており、この分析的で幾何学的な正三角形での主題の構成は近代性すら感じさせる。さらに瑞々しく実った野苺は画面右側に描かれる桜桃や小桃と共に濃密で快楽的な甘味を想像させる。画面左側へは野苺の自然的な柔和さとは対照的な硬質性と冷質性を感じさせる水の入った透明のグラスが配されており、見事な質感的対比を示している。そして画面中央には野苺を始めとした果物類との色彩的対比として白色のカーネーションが小気味良く配されており、少ない色数で画面を構成しながら非常に表情豊かな印象を観る者に与える。本作の光や陰影表現に注目しても、野苺は画面左側から光が当てられ右側部分に影を落しているのに対して、背後の壁は右側を明るくし、左側を沈み込むような陰影で覆うことによって、光と陰影の視覚効果を最大限に活かしている。質感・色彩・光源・陰影的対比を絶妙に計算し画面を構築しながらも、類稀な詩情性と叙情性を感じさせる本作の対象構成やその表現は、画家の作品の中でも秀逸の出来栄えであり、今も観る者を魅了し続ける。


【全体図】
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平籠の中へ山積みされる野苺。画面の中心に配される山積みされる野苺の入った平籠は、質素ながら強い安定感を示している棚台の上で、本作の明確な主題として圧倒的な存在感を醸し出しており、この分析的で幾何学的な正三角形での主題の構成は近代性すら感じさせる。



【平籠の中へ山積みされる野苺】
硬質的な質感の水の入ったグラス。画面左側へは野苺の自然的な柔和さとは対照的な硬質性と冷質性を感じさせる水の入った透明のグラスが配されており、本作の中に見事な質感的対比を示している。



【硬質的な質感の水の入ったグラス】
野苺と見事な色彩的対比を示す二輪のカーネーション。画面中央には野苺を始めとした果物類との色彩的対比として白色のカーネーションが小気味良く配されており、少ない色数で画面を構成しながら非常に表情豊かな印象を観る者に与える。



【野苺と色彩的対比を示す二輪の花】
濃厚な甘味を感じさせる桜桃と小桃。本作同様1760年代に制作された『葡萄と石榴』や『音楽の象徴(音楽の寓意)』などの静物画と比較すると、本作はあまりにも簡素な対称配置によって画面が構成されている印象を受けるが、これこそ歳を重ねたシャルダンが辿り着いたもうひとつの静物画世界なのである。



【濃厚な甘味を感じさせる桜桃と小桃】

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