Description of a work (作品の解説)
2009/11/08掲載
Work figure (作品図)
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トルコ風呂

 (Le bain turc) 1859-63年頃
110×110cm | 油彩・画布(板) | ルーヴル美術館(パリ)

新古典主義を代表する画家ジャン=オーギュスト・ドミニク・アングルが晩年期に手がけた裸婦作品の集大成的作品『トルコ風呂』。本作はオスマン帝国に派遣されていた英国大使夫人モンタギュー夫人が残した書簡集(1805年刊行)に記されるトルコ風呂の情景の一説に、さらにその書簡集に基づいて制作された数点の版画に着想を得て手がけられた≪浴女≫を主題とする作品である。画面中央前景には優雅に楽器を奏でる女性や、怠惰的にソファーへ寝そべる女性、髪に香油を付ける女性などが配されており、後景には音楽に合わせて踊る者、会話を楽しむ者、飲食する者などさまざまな女性たちが描き込まれている。本作に登場する女性たちは舞台が風呂である為、全て裸体(※これもモンタギュー夫人の書簡集に基づいている)であり、この裸婦の群衆的様子や独特の雰囲気には、アングル自身も強く惹かれていた西洋文化とは全く異なる豊潤な異国情緒とエロチシズムが感じられる。さらに画面前景の楽器を奏でる背を向けた裸婦はアングル初期の傑作『ヴァルパンソンの浴女』との、魅惑的な視線を向けながら怠惰的に横たわる裸婦には『グランド・オダリスク(横たわるオダリスク)』との造形的特長の一致が明確であり、本作は画家がそれまでに手がけた裸婦像の統合的再構成という面も見出すことができる。さらに製作過程を考察すると、本作は当初、四角形の画面で制作されていたものの、その後、幾度も画家自身の手によって修正を加えられ続け、ついには1862年から完成となる1863年までの間にイタリア風の円形画(トンド)形式へと画面そのものを変更するに至っている。なお本作の豊潤な官能性や総合的肉体描写は後期印象派の巨匠ポール・セザンヌを始め、ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ、アンリ・マティス、パブロ・ピカソなど後世の画家たちに多大な影響を与えた。


【全体図】
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優雅に楽器を奏でる背を向けた裸婦。本作はオスマン帝国に派遣されていた英国大使夫人モンタギュー夫人が残した書簡集(1805年刊行)に記されるトルコ風呂の情景の一説に、さらにその書簡集に基づいて制作された数点の版画に着想を得て手がけられた≪浴女≫を主題とする作品である。



【優雅に楽器を奏でる背を向けた裸婦】
怠惰的に横たわる裸婦の官能的な姿。画面前景の楽器を奏でる背を向けた裸婦はアングル初期の傑作『ヴァルパンソンの浴女』との、魅惑的な視線を向けながら怠惰的に横たわる裸婦には『グランド・オダリスク(横たわるオダリスク)』との造形的特長の一致が明確であり、本作は画家がそれまでに手がけた裸婦像の統合的再構成という面も見出すことができる。



【怠惰的に横たわる裸婦の官能的な姿】
西洋文化とは全く異なる異国情緒に溢れた風呂の光景。製作過程を考察すると、本作は当初、四角形の画面で制作されていたものの、その後、幾度も画家自身の手によって修正を加えられ続け、ついには1862年から完成となる1863年までの間に円形画(トンド)形式へと画面そのものを変更するに至っている。



【異国情緒に溢れた風呂の光景】

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