Description of a work (作品の解説)
2008/01/03掲載
Work figure (作品図)
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燕子花図屏風

 (Iris laevigata)
1701-04年頃 | 各150.9×338.8cm | 根津美術館(東京都)
6曲1双屏風・紙本金地着色

琳派最大の巨匠のひとり尾形光琳が40代前半頃(44〜45歳頃とする説が有力視されている)に手がけたとされる傑作、国宝『燕子花図屏風』。本作は平安時代に成立した、最も著名な日本の歌物語のひとつ≪伊勢物語(著者不明)≫の第九段「八橋」の場面を描いた作品で、光琳は生涯中しばしば、この燕子花を意匠とした作品を手がけていることが知られているが、本作はその中でも随一の代表的作品としても名高い。伊勢物語では、三河国の八橋(現在の愛知県知立市八橋町近辺。水が蜘蛛の手のように分かれて流れているために、八つの橋を渡したことから≪八橋≫と名付けられたとされている)の沢のほとりに燕子花(カキツバタ)が美しく咲いていたと記されているが、本作ではその美しく咲く燕子花のみに主点を置いて「八橋」の場面が描写されている。金地に栄える群青(燕子花の花部分)と緑青(燕子花の茎草部分)の軽妙明快で清々しい色彩、画面の中で心地よい旋律を奏でるかのような、律動的に配される燕子花の群生、そして、その燕子花の左隻と右隻での構図的対比の美しさは観る者の目を奪うばかりである。さらに平面的でありながら、橋を排した燕子花のみというシンプルな構成であるからこそ引き立つ、金地の余白の無限的空間の広がりや奥行き感は、光琳だからこそ成し得た美の世界観そのものである。また燕子花一束ごとの形状の(ほぼ同様な)類似性に、型紙の使用も指摘されている。なお光琳は本作を手がけた約10年後に、同主題を題材にした『八ツ橋図屏風』を制作している。

関連:『燕子花図屏風』全体図左隻拡大図右隻拡大図
関連:メトロポリタン美術館所蔵 『八ツ橋図屏風』


【全体図】
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燕子花(カキツバタ)の深い群青色。本作は平安時代に成立した、最も著名な日本の歌物語のひとつ≪伊勢物語≫の第九段「八橋」の場面を描いた作品で、光琳は生涯中しばしば、この燕子花を意匠とした作品を手がけていることが知られているが、本作はその中でも随一の代表的作品としても名高い。



【燕子花(カキツバタ)の深い群青】
金地に栄える群青と緑青の軽妙明快で清々しい色彩。伊勢物語では、三河国の八橋(現在の愛知県知立市八橋町近辺)の沢のほとりに燕子花(カキツバタ)が美しく咲いていたと記されているが、本作ではその美しく咲く燕子花のみに主点を置いて「八橋」の場面が描写されている。



【金地に栄える群青と緑青の明快な色彩】
律動的に配される燕子花の群生。画面の中で心地よい旋律を奏でるかのような、律動的に配される燕子花の群生、そして、その燕子花の左隻と右隻での構図的対比の美しさは観る者の目を奪うばかりである。



【律動的に配される燕子花の群生】
画面左右端に記される絵師の署名。平面的でありながら、橋を排した燕子花のみというシンプルな構成であるからこそ引き立つ、金地の余白の無限的空間の広がりや奥行き感は、光琳だからこそ成し得た美の世界観そのものである。



【画面左右端に記される絵師の署名】

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