Description of a work (作品の解説)
2008/02/16掲載
Work figure (作品図)
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サーカスの客寄せ

 (La Parade de Cirque) 1887-1888年
100×150cm | 油彩・画布 | メトロポリタン美術館

新印象主義を代表する画家ジョルジュ・スーラ晩年期の傑作『サーカスの客寄せ』。本作は制作された1888年頃にパリで実際に興行していた≪コルヴィ・サーカス≫がパレードをおこない客寄せする様子を描いた作品で、画家が昼の戸外風景や室内における人物描写の探求から離れ、夜間の人工的なガス灯の光とそこで繰り広げられる享楽的な情景と雰囲気を描いた最初の大作でもある。画面中央には段に上がりトロンボーンを奏でる主役となる音楽奏者が配され、画面左側にはガス灯の奥に立つのであろう他の演奏者が、画面右側には立派な髭を蓄えるコルヴィ・サーカスの団長と、そこに付き添う少年が配されている。トロンボーン奏者と少年は他の出演者とは異なり、ガス灯の橙色の光と対照的な青い色調による陰影が強くその姿に反映されていることから、ガス灯の前に立っていることがうかがえる。これら陰影の強い色調は逆光的な(本作を観る者からの視点では光の当たる面が見えない)画面左端の葉の無い樹木や、最前景の観客の姿にも同様の表現が施されている。非常に平面的な構成によって描かれる本作では、このガス灯の光とそこに落ちる影でしか空間を把握する術は無い。さらに、これら独特の抽象性すら感じさせる独創的な場面描写や表現に、観る者は豊かな叙情性、詩情性をも見出すことができる。本作の最前景の観客の姿の大胆なカットや、現代的(都会的)な人工性は、後に続く『シャユ踊り』、『サーカス』などにも通じる表現・展開であり、本作がそれまでの作品とは決定的に異なる転換期の重要な作品としても、特に注目すべき作品である。


【全体図】
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トロンボーンを奏でる音楽奏者。本作は制作された1888年頃にパリで実際に興行していた≪コルヴィ・サーカス≫がパレードをおこない客寄せする様子を描いた作品で、画家が夜間の人工的なガス灯の光とそこで繰り広げられる享楽的な情景と雰囲気を描いた最初の大作でもある。



【トロンボーンを奏でる音楽奏者】
画面右側のチケット売り場近辺に配される団長。画面中央には段に上がりトロンボーンを奏でる主役となる音楽奏者が配され、画面左側にはガス灯の奥に立つのであろう他の演奏者が、画面右側には立派な髭を蓄えるコルヴィ・サーカスの団長と、そこに付き添う少年が配されている。



【チケット売り場近辺に配される団長】
背面しか見えない観客の姿。非常に平面的な構成によって描かれる本作では、ガス灯の光とそこに落ちる影でしか空間を把握する術は無いが、本作の独特の抽象性すら感じさせる独創的な場面描写や表現に、観る者は豊かな叙情性、詩情性をも見出すことができる。



【背面しか見えない観客の姿】

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