Description of a work (作品の解説)
2008/05/28掲載
Work figure (作品図)
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読書(パラソル)

 (La lecture) 1873年
45.1×72.4cm | 油彩・画布 | クリーヴランド美術館

印象主義時代随一の女流画家ベルト・モリゾ1870年代を代表する作品のひとつ『読書(パラソル)』。本作は、おそらくはフランス北西部ノルマンディー地方海岸沿いの保養地プティット・ダルの断崖の上に建てられた別荘の庭で読書する、画家と共に絵画を学び作品を制作していたものの、結婚によりその道が閉ざされた姉エドマの姿を描いた作品で、本作はモリゾ初期の傑作『ゆりかご』などと共に、1874年に開催された記念すべき第1回印象派展への出品作のひとつでもある。画面中央では上品な衣服を身に着けた姉エドマが地に腰を下ろし静かに書物を読んでいる。そしてその傍ら(画面左端)には使用後を思わせる開かれた黒い日傘と、反対側に日本趣味への興味を感じさせる扇子が一面配されている。画面中の姉エドマは読書に集中しており、その振る舞いや姿からは教養と知識探求の高さが窺い知れ、モリゾは本作で、男性と比較すると地位が低かった当時の女性の新しい在り方を示したとも考察することができる。また画面全体に描かれる草原の緑色は、この頃モリゾが様式的影響を受けていたバルビゾン派の画家ジャン=バティスト・カミーユ・コローに倣い抑制的にアプローチされており、姉エドマが身に着ける白色の衣服との色彩的対比は非常に美しい。筆触や形態描写などは後の画家の奔放な筆触と比べ、まだ写実性が色濃く残されているものの、大地から生える草や花の躍動感に溢れた装飾的なタッチや、中景の簡素でやや大雑把な描写には画家のその後の様式的展開を大いに予感させる。


【全体図】
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静かに読書に耽る画家の姉エドマの姿。本作は、おそらくはフランス北西部ノルマンディー地方海岸沿いの保養地プティット・ダルの断崖の上に建てられた別荘の庭で読書する、画家と共に絵画を学び作品を制作していたものの、結婚によりその道が閉ざされた姉エドマの姿を描いた作品である。



【静かに読書に耽る画家の姉エドマ】
使用後を思わせる開かれた黒い日傘。モリゾ初期の傑作『ゆりかご』などと共に、1874年に開催された記念すべき第1回印象派展への出品作のひとつでもある本作の画面左端には使用後を思わせる開かれた黒い日傘が描き込まれている。



【使用後を思わせる開かれた黒い日傘】
日本趣味への強い興味を感じさせる一面の扇子。画面中の姉エドマは読書に集中しており、その振る舞いや姿からは教養と知識探求の高さが窺い知れ、モリゾは本作で、男性と比較すると地位が低かった当時の女性の新しい在り方を示したとも考察することができる。



【日本趣味への興味を感じさせる扇子】
簡素でやや大雑把に処理される中景描写。画面全体に描かれる草原の緑色は、この頃モリゾが様式的影響を受けていたバルビゾン派の画家ジャン=バティスト・カミーユ・コローに倣い抑制的にアプローチされており、姉エドマが身に着ける白色の衣服との色彩的対比は非常に美しい。



【簡素でやや大雑把に処理される中景】

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