Description of a work (作品の解説)
2008/08/05掲載
Work figure (作品図)
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自画像(渦巻く青い背景の中の自画像)


(Portrait de l'artiste par luimême) 1889年
65×54cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)

19世紀末のフランスで活躍した後期印象派の画家フィンセント・ファン・ゴッホの最も著名な自画像作品のひとつ『自画像(渦巻く青い背景の中の自画像)』。かの耳切り事件後、1889年5月から神経発作により画家自身の希望でサン・レミのカトリック精神病院「サン・ポール」へ入院していた時代(通称サン・レミ時代)の9月頃に制作されたゴッホの自画像作品で、少し前(8月末頃)に手がけられた『自画像(パレットのある自画像)』と共に、ゴッホの自画像作品の中では最後期の自画像としても広く知られている。画面中央へやや斜めに構え白いシャツと上着を着たゴッホの上半身が描かれる本作の最も注目すべき点は、やはり青い渦巻き模様風の背景の描写にある。画家の観る者(或いは画家自身)の内面すらまで見据えるかのような厳しくある種の確信性に満ちた表情と呼応するかのように本作では背景が表現されており、それは耳切り事件と度重なる神経発作による画家の不安定で苦悩に満ちた感情が、あたかも蒼白い炎となってうねりながら燃え立つ渦巻き模様として具現化しているようである。サン・レミ時代のゴッホは自室のほか制作部屋が与えられるなど、比較的自由な入院生活の効果もあり、精神状況も回復(安定)しつつあったものの、それでも本作で表現される画家自身の姿からは狂気的で異様な画家の精神的内面が如実に感じられる。さらにゴッホ自身は、自身の心理の最深部まで入り込んだかのような本作の自画像表現に関してレンブラントなど17世紀オランダ絵画黄金期の伝統性に着想を得たと弟テオに宛てた手紙の中で言及している。また本作は色彩表現や表現手法においても、『耳を切った自画像(頭に包帯をした自画像)』や『自画像(パレットのある自画像)』などそれまでに手がけてきた自画像と比較し、明度と筆触に明らかな違いが示されており、幻想的で夢遊な明るさと短く流線的なタッチは、ゴッホが晩年期に辿り着いた自身の絵画表現の最も優れた例のひとつである。

関連:1889年8月末頃制作 『自画像(パレットのある自画像)』


【全体図】
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観る者(或いは画家自身)の内面すらまで見据えるかのような厳しくある種の確信性に満ちた表情。サン・レミ時代のゴッホは精神状況が回復(安定)しつつあったものの、それでも本作で表現される画家自身の姿からは狂気的で異様な画家の精神的内面が如実に感じられる。



【厳しくある種の確信性に満ちた表情】
太く明確な輪郭線と短形的な筆触。本作はそれまでに手がけてきた他の自画像作品と比較し、明度と筆触に明らかな違いが示されており、幻想的で夢遊な明るさと短く流線的なタッチは、ゴッホが晩年期に辿り着いた自身の絵画表現の最も優れた例のひとつである。



【太く明確な輪郭線と短形的な筆触】
蒼白い炎となってうねりながら燃え立つような渦巻き模様。この非常に独自的な自画像における背景表現は、耳切り事件と度重なる神経発作による画家の不安定で苦悩に満ちた感情が、あたかも蒼白い炎となってうねりながら燃え立つ渦巻き模様として具現化しているようである。



【蒼白い炎が燃え立つような渦巻き模様】

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