Description of a work (作品の解説)
2008/11/11掲載
Work figure (作品図)
■ 

アイリスのある静物(花瓶に入った背景が黄色のアイリス)

 (Nature morte : iris (dans un vase, sur fond jaune))
1890年 | 92×73.5cm | 油彩・画布 | ファン・ゴッホ美術館

孤高なる後期印象派の巨匠フィンセント・ファン・ゴッホ、1890年を代表する静物画作品『アイリスのある静物(花瓶に入った背景が黄色のアイリス)』。本作は神経発作の治療で滞在していたサン・レミでの苦悩と退屈の生活から脱する為に1890年5月に友人であり精神科医でものあったポール・ガシュの居るオーヴェールへと出発するゴッホが、その数週間前に制作した静物画作品である。花という画題、鮮やかな黄色の単色的背景、丸みを帯びた花瓶など、前年に制作された名高き『ひまわり』の連作を彷彿とさせる本作に描かれるのは、アヤメ科アヤメ属の多年草≪アイリス(菖蒲)≫で、ゴッホは本作を制作した1890年の5月にこのアイリスを含む様々な静物画を手がけているが、その精神状況はもはや非常に危機的状況にあった(この頃、ゴッホ自身が弟テオに宛てた手紙の中で「僕には新鮮な空気が必要だ。ここに居ては退屈と哀しみに押しつぶされてしまう。」と、サン・レミでの生活の苦しみを訴えていたほど、画家の神経発作と精神的不安が悪化していた)。本作はそんな状況から脱する為にオーヴェールへと向かう数週間前に制作された作品であり、画家の狂気性と希望が画面の中で入り交じる類稀な静物画でもある。画面中央に描かれる青い花を咲かせた美しいアイリスは画家の太く明確な輪郭線による独特の描写で、あたかもその生命を咲き誇らせるかのように堂々と力強く描かれている。花の間からのぞく緑色の葉も画家の強烈な観察的視線をそのまま表現したかのように鋭く直線的であり、観る者の目を惹きつける。その中で画面右下に描かれる萎れたひと束のアイリスは画家の不安定で漠然とした恐れを感じさせる。そして背景や花瓶に使用されたアイリスと色彩的対比を示す明度の高い黄色が、画家の絵画への純粋な想いを反映させたかのように強烈な輝きを放っている。なおゴッホは本作以外にもアイリスを画題に作品を複数制作していることが知られている。

関連:J・ポール・ゲッティ美術館所蔵 『アイリス』
関連:メトロポリタン美術館所蔵 『花瓶のアイリス』


【全体図】
拡大表示
青い花を咲かせた美しいアイリス。本作は神経発作の治療で滞在していたサン・レミでの苦悩と退屈の生活から脱する為に1890年5月に友人であり精神科医でものあったポール・ガシュの居るオーヴェールへと出発するゴッホが、その数週間前に制作した静物画作品である。



【青い花を咲かせた美しいアイリス】
鋭く直線的なアイリスの葉の描写。前年に制作された名高き『ひまわり』の連作を彷彿とさせる本作に描かれるのは、アヤメ科アヤメ属の多年草≪アイリス(菖蒲)≫で、ゴッホは本作を制作した1890年の5月にこのアイリスを含む様々な静物画を手がけているが、その精神状況はもはや非常に危機的状況にあった。



【鋭く直線的なアイリスの葉の描写】
丸みを帯びた黄色の花瓶。画面中央に描かれる青い花を咲かせた美しいアイリスは画家の太く明確な輪郭線による独特の描写で、あたかもその生命を咲き誇らせるかのように堂々と力強く描かれているが、画面右下に描かれる萎れたひと束のアイリスは画家の不安定で漠然とした恐れを感じさせる。



【丸みを帯びた黄色の花瓶】

Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション
作品イメージ