2008/03/11掲載
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黄色いキリスト(Le Christ jaune) 1889年 | 92×73cm油彩・画布 | オルブライト=ノックス・アート・ギャラリー 関連:『黄色いキリストのある自画像』 関連:『オリーブ山のキリスト(自画像)』
単純化(抽象化)された主イエスの姿。象徴的に描かれる黄色の主イエスの姿は、≪総合主義(サンテティスム)≫の提唱した地でもある、ブルターニュ地方ポン=タヴェン近郊の教会≪トレマロ礼拝堂≫の木彫りのキリスト像(十字架像)から着想が得られているが、主イエスの姿は農婦らの幻視ではなく、画家自身の内面的心象の表れであると考えられている。
【単純化(抽象化)された主イエスの姿】
一心に祈りを捧げる敬虔な農婦たち。第二次ブルターニュ滞在期に画家が手がけた作品『説教のあとの幻影(ヤコブと天使の闘い)』と並び、象徴主義的な総合主義絵画の代表的作例として知られている本作に描かれるのは、ブルターニュの農婦らが厚い信仰によって磔刑に処される主イエスを幻視する姿である。
【一心に祈りを捧げる敬虔な農婦たち】
ブルターニュの農道を行き交う素朴な人々。秋のブルターニュの風景の中に描かれる、主イエスや敬虔な農婦らの姿、朱々と紅葉する木々、黄色く輝く丘などは太く明確な輪郭線によって個々が区別され、内部の平面的で強い(原色的な)色彩描写によって純化されている。
【ブルターニュの農道を行き交う人々】
明確な輪郭線と平面的な描写。クロワゾニスム(対象の質感、立体感、固有色などを否定し、輪郭線で囲んだ平坦な色面によって対象を構成する描写方法)を用いた独自的な絵画展開は、画家とエミール・ベルナールが提唱した総合主義そのものであり、今なお、その輝きは色褪せず、観る者へと深く迫ってくる。
【明確な輪郭線と平面的な描写】 |