Description of a work (作品の解説)
2007/12/18掲載
Work figure (作品図)
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バルコニーの男(窓辺の若い男)

 1875-76年頃
(Jeune homme à sa fenêtre (Homme au balcon))
116.2×80.9cm | 油彩・画布 | 個人所蔵(パリ)

印象派を代表する画家ギュスターヴ・カイユボット作『バルコニーの男(窓辺の若い男)』。本作は、アパルトマンの一室のバルコニーからサント・オーギュスタン広場を眺める画家の弟ルネの後姿を描いた作品である。背後のみを主体として人物を描くという、(人物を画題として描く絵画作品としては)非常に奇抜な用いられている本作の構図は、日本の浮世絵からの影響(またはそれに基づいた展開)であると考えられている。この近代化の進むパリの象徴的住居であるアパルトマンの一室のバルコニーや窓から外を眺める人々、そこ見える風景や情景は、印象派の先駆者エドゥアール・マネ(関連:マネ作『バルコニー』)や、マネの緊密な関係にあった同時代随一の女流画家ベルト・モリゾ、アメリカ出身の女流画家メアリー・カサットを始めとした多くの印象派の画家らが注目した画題であり、カイユボットも同様にこの画題に強い興味を示したが、本作がその中でも特に注目されるのはその客観性にある。本作に描かれる弟ルネはバルコニーの前に仁王立ちし、(おそらく)通りを歩く女性に視線を向けている。真後ろから多少左に寄った視点で弟ルネの姿が描かれている為、弟ルネの顔の表情は見えないものの、描かれる人物の存在感は観る者を圧倒する。しかしその圧倒的な存在感があるにも係わらず、観る者はマネが手がけた『バルコニー』を始めとした他の画家の作品と比較し、描かれる人物(本作では弟ルネ)に親近感や心情・心理的感情の移入を全く抱くことは無い。この観る者が本作に向ける客観性こそ近代的(写真的)な視感効果の表れであり、本作の大きな魅力でもある。なおカイユボットは同画題の作品や、バルコニーからの眺望を描いた作品を数多く制作している。

関連:『バルコニーの男』
関連:『バルコニーの男、オスマン大通り』


【全体図】
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(おそらく)通りを歩く女性に視線を向ける画家の友人モーリス・ブロールト。背後のみを主体として人物を描くという、人物を画題として描く絵画作品としては非常に奇抜な本作の構図は、本作がほぼ同様の構図の写真を基に制作されたことに由来している(関連:写真 『サント・オーギュスタン広場を眺めるモーリス・ブロールト』)。



【画家の友人モーリス・ブロールトの後姿】
アパルトマンの一室のバルコニーから見えるサント・オーギュスタン広場。1882年3月に開催された第7回印象派展に出品された本作は、アパルトマンの一室のバルコニーからサント・オーギュスタン広場を眺める画家の友人モーリス・ブロールトの後姿を描いた作品である。



【サント・オーギュスタン広場の風景】
書き換えられたバルコニーの柵。描かれる人物(本作ではモーリス・ブロールト)は圧倒的な存在感があるにも係わらず、他の画家の作品と比較し、観る者はそれに親近感や心情・心理的感情の移入を全く抱くことは無い。この観る者が本作に向ける客観性こそ近代的な写真を取り入れた効果の表れである。



【書き換えられたバルコニーの柵】

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