Description of a work (作品の解説)
2009/06/24掲載
Work figure (作品図)
■ 

ジョブ(小)

 1897年
(Poster for the cigarette paper Job (small))
55.5×43cm | リトグラフ | 所蔵先複数

アール・ヌーヴォー様式の巨匠アルフォンス・ミュシャ随一の代表作『ジョブ(小)』。ミュシャが『ジスモンダ』によって一躍有名となった頃から3年後の1897年に制作された本作は、タバコの巻紙製造会社であった≪JOB社≫のためのポスター作品である。画面中央に斜め横から捉えられた美しい長髪の女性が配され、その右手の指先には火の点いた巻きタバコが挟まれている。挑発的とも思えるような魅惑的な視線と半開き的な口元には当時の最先端的な洗練性と開放的な性を兼ね備えた女性像を見出すことができ、観る者を強く惹きつける。さらに画面背後上部には大きく≪JOB≫と社名が配されるほか、ビザンティン文化的な装飾性も認められる。煙草の色を思わせる茶褐色を主色とした色彩の調和性も本作において特筆すべき点ではあるが、やはり最も注目すべき点は本作に描かれる女性の特徴的な巻き髪にある。ほぼ円を描くかのように湾曲する毛先表現は極めて装飾性が高く、巻紙製造会社としての象徴との印象が重なるような表現でもあるため、本作をひとつのポスターとして捉えた場合の広告的効果も十分予測することはできる。さらに絵画様式や芸術性という観点から本作を捉えた場合でも、この曲線性はアール・ヌーヴォー様式の典型的な特徴であり、女性特有の柔らかさともイメージが合致するため、表現としては素晴らしい出来栄えであるとも言える。他の画家たちが敬遠気味にあった、このような商品の購買を促進するためのポスターとして制作しながら、芸術性も失うことなく非常に品質の高い作品を完成させることに成功したミュシャの類稀な才能が本作には良く示されている。

関連:1898年制作 『ジョブ(大)』


【全体図】
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艶かしい女性の視線と半開きの唇。画面中央に斜め横から捉えられた美しい長髪の女性が配され、その右手の指先には火の点いた巻きタバコが挟まれている。挑発的とも思えるような魅惑的な視線と半開き的な口元には当時の最先端的な洗練性と開放的な性を兼ね備えた女性像を見出すことができる。



【艶かしい女性の視線と半開きの唇】
指先に挟まれる火の点いた煙草。ほぼ円を描くかのように湾曲する毛先表現は極めて装飾性が高く、巻紙製造会社としての象徴との印象が重なるような表現でもあるため、本作をポスターとして捉えた場合の広告的効果も十分予測することはできる。



【指先に挟まれる火の点いた煙草】
湾曲する非常に装飾的な毛先。絵画様式や芸術性という観点から本作を捉えた場合でも、この曲線性はアール・ヌーヴォー様式の典型的な特徴であり、女性特有の柔らかさともイメージが合致するため、表現としては素晴らしい出来栄えであると言える。



【湾曲する非常に装飾的な毛先】

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