Description of a work (作品の解説)
2009/10/14掲載
Work figure (作品図)
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ヤコブと天使

 (Jacob et l'ange) 1878年
253.3×145.4cm | 油彩・画布 | フォッグ美術館

フランス象徴主義の孤高なる巨匠ギュスターヴ・モローの代表的な宗教画作品『ヤコブと天使』。1878年のパリ万国博覧会に出品された本作に描かれる主題は、旧約聖書 創世記第32章 23-31節に記される、イスラエルの民の祖アブラハムの孫ヤコブが兄エサウと和解するため、妻ラケルと羊を連れ兄エサウに会いに行く途中、ペヌエルの地で神(天使)と一晩中格闘をおこなうことになり、激闘の末、最後にヤコブが勝利すると、父なる神から「今後、お前はイスラエル(神の勝者、神の護る人の意)と名乗れ」と祝福を受けた場面≪天使とヤコブの戦い(イスラエルの命名)≫で、通常、本主題≪天使とヤコブの戦い≫ではヤコブと天使の激しい組打ちの姿が描かれるものの、モローは本作において主題を、父なる神の絶対なる力の象徴である≪天使≫に対する人間の無力≪ヤコブ≫と解釈し、描写しているのが大きな特徴である。画面中央に配されるアブラハムの孫ヤコブは天使に腕を掴まれ、必死の形相で抵抗を試みるものの、その圧倒的な力に抗うことができない無力な姿で描き込まれている。画面左側に配されるヤコブの腕を掴む(又は軽く手を添える)天使はヤコブを制御する為に力を込めている様子は全くなく、むしろ凛とした涼しげな表情からは何事も無いかのような印象を受ける。さらに天使を包み込む偉大なる後光は神の絶対的で神秘的な力を象徴しており、観る者はある種の感動すら覚えるのである。同主題を描いた19世紀の作品としてはドラクロワがサン・シュルピス聖堂聖天使礼拝堂壁面に描いた壁画『ヤコブと天使の戦い(部分)』が有名であるものの、モローはドラクロワの『ヤコブと天使の戦い(部分)』をを「ドラクロワは全く理解せずありきたりに表現した」と、天使(神)と人間の対等的な物質的力関係として否定し、「わたしの作品は卓越した道徳的で精神的な力の身体的な力に対する優位性を表現しており、私はこの作品でそれに成功した」と本作について述べている。


【全体図】
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涼しげな表情を浮かべる天使の姿。1878年のパリ万国博覧会に出品された本作に描かれる主題は≪天使とヤコブの戦い(イスラエルの命名)≫で、通常、本主題≪天使とヤコブの戦い≫ではヤコブと天使の激しい組打ちの姿が描かれるものの、モローは本作において主題を、父なる神の絶対なる力の象徴である≪天使≫に対する人間の無力≪ヤコブ≫と解釈し、描写しているのが大きな特徴である。



【涼しげな表情を浮かべる天使の姿】
天使によって力を抑えられるヤコブ。画面中央に配されるアブラハムの孫ヤコブは天使に腕を掴まれ、必死の形相で抵抗を試みるものの、その圧倒的な力に抗うことができない無力な姿で描き込まれている。



【天使によって力を抑えられるヤコブ】
朝を告げる太陽が昇る遠景。モローはドラクロワの『ヤコブと天使の戦い(部分)』をを「ドラクロワは全く理解せずありきたりに表現した」と、天使(神)と人間の対等的な物質的力関係として否定し、「わたしの作品は卓越した道徳的で精神的な力の身体的な力に対する優位性を表現しており、私はこの作品でそれに成功した」と本作について述べている。



【朝を告げる太陽が昇る遠景】

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