Description of a work (作品の解説)
2008/05/08掲載
Work figure (作品図)
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希望 II

 (Hoffnung II) 1907-08年
110×110cm | 油彩・画布 | ニューヨーク近代美術館

オーストリア最大の画家のひとりグスタフ・クリムトの母性を感じさせる代表作『希望 II』。本作は1903年にクリムトが手がけた『希望 I』同様、妊婦の姿を描いた作品であるが、『希望 I』と比較し、より装飾的で、より平面化して表現されているのが大きな特徴である。本作に描かれる妊婦の姿は、穏やかな表情を浮かべ、自身の身体に宿った小さな、しかし確実な生命を慈しむかのように俯きながら腹部へと視線が向けられている。生命を宿す腹部は『希望 I』とは異なり、円と三角によって構成し、そして赤色、青色、黄色、緑色、黒色などで彩られた極めてクリムトらしい装飾的な衣服で隠されており、観る者にある種の安心感を与えているが、そのすぐ傍には≪死≫を暗示する骸骨が描かれている。また妊婦の足下には複数の若い女性が描かれており、この解釈については諸説唱えられているが、一般的には妊婦に対する妊娠未経験(処女)者たちの願いや祈りとされている。生命の神秘そのものを表現したかのような無限性を感じさせる、金色単色での背景の平面的で宇宙的な空間表現は、クリムトが高く評価していた、17-18世紀に京都や江戸で活躍した絵師尾形光琳を始めとした琳派の影響が指摘されている。本作では『希望 I』に示されたようなあからさまな攻撃性や病的とも受け取れる表現は影を潜めており、その内包的で保身的な表現は一部の賛同者たちからは「伝統への回帰」と批判も受けた。

関連:カナダ国立美術館所蔵 『希望 I』


【全体図】
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穏やかな表情を浮かべ、自身の身体に宿った小さな、しかし確実な生命を慈しむかのように俯きながら腹部へと視線を向ける妊婦。本作は1903年にクリムトが手がけた『希望 I』同様、妊婦の姿を描いた作品である。



【腹部へと視線を向ける妊婦】
極めてクリムトらしい装飾的な衣服。生命を宿す腹部は『希望 I』とは異なり、円と三角によって構成し、そして赤色、青色、黄色、緑色、黒色などで彩られた極めてクリムトらしい装飾的な衣服で隠されており、観る者にある種の安心感を与えているが、そのすぐ傍には≪死≫を暗示する骸骨が描かれている。



【極めてクリムトらしい装飾的な衣服】
妊婦の足下に描かれる複数の若い女性。生命の神秘そのものを表現したかのような無限性を感じさせる、金色単色での背景の平面的で宇宙的な空間表現は、尾形光琳を始めとした琳派の影響が指摘されている。



【妊婦の足下に描かれる若い女性】

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