Description of a work (作品の解説)
2010/01/07掲載
Work figure (作品図)
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ミソロンギの廃墟に立つギリシア


(La Grèce sur les ruines de Missolonghi) 1826年
209×147cm | 油彩・画布 | ボルドー美術館

フランス・ロマン主義最大の巨匠ウジェーヌ・ドラクロワ初期の重要な作品『ミソロンギの廃墟に立つギリシア』。本作は『キオス島の虐殺』と同様、オスマン帝国(現トルコ)に支配されていたギリシアの人々が1821年に蜂起し反乱を起こしたことに始まる≪ギリシア独立戦争≫に着想を得て制作された作品で、場面として戦争時、要塞として重要な拠点のひとつに位置付けられ、ギリシアの抵抗に強く共感を示していたロマン主義を代表する英国出身の詩人ジョージ・ゴードン・バイロンが戦死した場所でもあるミソロンギが選定されている。画面中央に描かれる悲愴な表情を浮かべる若い女性はギリシアを象徴化した擬人像であり、オスマン帝国軍の攻撃に陥落し廃墟と化したミソロンギの町に転がる血のついた瓦礫の上で、両手を広げ絶望(又は絶望に対する救済の哀願)の仕草を示している(彼女のモデルは画家が手がける女性像の重要な着想元となった≪ロール嬢≫であると伝えられている)。ギリシアの擬人像が片膝(左膝)の瓦礫の下には戦争で死したギリシア人の右腕が配されているが、これは独立戦争によって当時、欧州で回顧が強まっていた古代ギリシア文化の物理的崩壊を示していると同時に、同地で死した詩人バイロンをも暗示させている。そして遠景となる画面右側奥ではオスマン帝国軍に従軍者が三日月の帝国旗を掲げている。本作で最も注目すべき点は、ロマン主義的表現要素が明確に示されるギリシアの擬人像の描写にある。画面中で最も強い光彩を用い身体全体で絶望を表すギリシアの擬人像の感情性や、時事的社会性への取り組みはロマン主義の大きな特徴であり、ドラクロワ最大の傑作『民衆を率いる自由の女神−1830年7月28日』へと続く擬人像による社会的時事表現の重要な里程標となった。


【全体図】
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悲愴的な表情を浮かべるギリシアの寓意像。本作はオスマン帝国(現トルコ)に支配されていたギリシアの人々が1821年に蜂起し反乱を起こしたことに始まる≪ギリシア独立戦争≫に着想を得て制作された作品である。



【悲愴的なギリシアの寓意像】
古代ギリシア文化の物理的崩壊と戦死した詩人バイロンを暗示する右腕。本作は場面として戦争時、要塞として重要な拠点のひとつに位置付けられ、ギリシアの抵抗に強く共感を示していたロマン主義を代表する英国出身の詩人ジョージ・ゴードン・バイロンが戦死した場所でもあるミソロンギが選定されている。



【バイロンを暗示する右腕】
三日月の帝国旗を掲げる帝国従軍者。画面中で最も強い光彩を用い身体全体で絶望を表すギリシアの擬人像の感情性や、時事的社会性への取り組みはロマン主義の大きな特徴であり、ドラクロワ最大の傑作『民衆を率いる自由の女神』へと続く擬人像による社会的時事表現の重要な里程標となった。



【三日月の帝国旗を掲げる従軍者】

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