Description of a work (作品の解説)
2007/12/22掲載
Work figure (作品図)
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パリスの審判

 (Jugement de Pâris) 1718-1720年頃
47×30.7cm | 油彩・板 | ルーヴル美術館(パリ)

ロココ美術の巨匠アントワーヌ・ヴァトーが最晩年期に手がけた神話画作品『パリスの審判』。1856年に発見された当時は画家唯一の弟子であるパテールの作とされていたものの、現在ではほぼ間違いなくヴァトーの作品と認知されているほか、ロココ美術を代表する裸婦像作品としても名高い本作に描かれる主題は、争いの女神エリスが最も美しい女神が手にするよう、神々の饗宴に投げ込んだ黄金の林檎をめぐり、我こそはと立ち上がった、ユピテルの正妻で最高位の女神ユノと、愛と美の女神ヴィーナス、知恵と戦争の女神ミネルヴァの中から最も美しい女神を、主神ユピテルにより神々の使者メルクリウスの介添でトロイア王国の王子である羊飼いパリスが選定し審判するというローマ神話のひとつ≪パリスの審判≫である。画面中央に傍らにクピドを伴い裸体の姿で配される美の女神ヴィーナスの姿態(後姿)や彼女の足元の犬の描写は、王の画家にして画家の王と呼ばれ、諸外国まで名を轟かせた大画家ピーテル・パウル・ルーベンスが制作した『パリスの審判』に登場するにヴィーナスや犬に類似しており、その関係性が指摘されている。画面右部分では甲冑を身に着け、長槍と盾を手にする知恵と戦争の女神ミネルヴァが忌々しそうな表情を浮かべている。その上部では沈黙を表すように口元へ手を当てながら女神ユノが上空を飛行しているが、この女神ユノの解釈には、美の女神ヴィーナスの典型的なアトリビュートのひとつである帆立の貝殻を手にしていることから、ヴィーナスを祝福するニンフとする説や、女神ユノが悔しがる姿をロココ独特の典雅な様式に相応しいように改変したとする説など異論も唱えられている。画家の他の作品と比較し明らかに完成度が低いことから、殆どの研究者が未完成の作品としている本作ではあるが、画面全体から醸し出される独特の軽やかでコケティッシュ(官能的)な雰囲気やその表現は、画家が手がけた神話画の中でも白眉の出来栄えである。

関連:ピーテル・パウル・ルーベンス作 『パリスの審判』


【全体図】
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傍らにクピドを伴い裸体の姿で配される美の女神ヴィーナス。1856年に発見された当時は画家唯一の弟子であるパテールの作とされていたものの、現在ではほぼ間違いなくヴァトーの作品と認知されているほか、ロココ美術を代表する裸婦像作品としても名高い本作は≪パリスの審判≫を描いた作品である。



【裸体の姿で描かれるヴィーナス】
忌々しそうな表情を浮かべる知恵と戦争の女神ミネルヴァ。美の女神ヴィーナスの姿態(後姿)や彼女の足元の犬の描写は、諸外国まで名を轟かせた大画家ピーテル・パウル・ルーベンスが制作した『パリスの審判』に登場するにヴィーナスや犬に類似しており、その関係性が指摘されている。



【忌々しそうな表情を浮かべるミネルヴァ】
沈黙を表すように口元へ手を当てながら上空を飛行する女神ユノ。この女神ユノの解釈には、美の女神ヴィーナスの典型的なアトリビュートのひとつである帆立の貝殻を手にしていることから、ヴィーナスを祝福するニンフとする説や、女神ユノが悔しがる姿をロココ独特の典雅な様式に相応しいように改変したとする説など異論も唱えられている。



【上空を飛行する女神ユノ】
美の女神ヴィーナスに黄金の林檎を差し出すトロイア王国の王子でもある羊飼いパリス。殆どの研究者が未完成の作品としている本作ではあるが、画面全体から醸し出される独特の軽やかでコケティッシュ(官能的)な雰囲気やその表現は、画家が手がけた神話画の中でも白眉の出来栄えである。



【黄金の林檎を差し出す羊飼いパリス】

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