Description of a work (作品の解説)
2008/10/30掲載
Work figure (作品図)
■ 

アイリス、ダンスには少し早いね(ダンス、踊り)


(Iris c'est de bonne heure (La danse)) 1719-20年頃
97×116cm | 油彩・板 | ベルリン国立絵画館

雅宴画(フェート・ギャラント)様式を確立した偉大なる画家アントワーヌ・ヴァトー晩年を代表する作品のひとつ『アイリス、ダンスには少し早いね(ダンス、踊り)』。版画家N-C・コシャンが版刻した版画へ添えられた4行詩の冒頭の文字から『アイリス』と呼ばれる本作は、少女がどこかの森の中らしき場所でダンスを踊ろうとしている情景を描いた作品である。画面中央には、まるで天使か妖精を思わせるような愛らしく美しい少女が豪華で流行的な衣服の裾を軽く持ち、ダンスのステップを踏み始めようとしている姿が配され、その左側には笛の口に当てる少年や木の棒を持つ少年、ダンスを見つめる少女などが描かれている。そして画面右側の遠景には数名の農夫らしき人々や教会などが見える。本作で最も注目すべき点は描かれる子供らの扱いそのものにある。ヴァトーの作品、特に代表作となる雅宴画(フェート・ギャラント)では若い男女による愛の情景が情感豊かに描かれているが、本作のような子供を扱った作品では、それらと対照的に子供の純真な無垢性や、愛の情景へとつながるかのような子供が抱く大人への憧れやその兆しなどを読み取ることができる。本作では成熟した男女がおこなうダンスへの憧憬として、この少女はダンスを踊ろうとしているようであり、観る者に子供時代の懐古心を抱かせる。また農村らしき風景の中に子供らを描く作風はフランス古典主義の画家ル・ナン三兄弟の作品に通じるものであり、一部の研究者などからは本作との関連性も指摘されている。なお本作の制作年代については古くから議論が重ねられてきたが、綿密な描写による写実性を感じさせる表現から一般的には最晩年頃の作品に位置づけられている。


【全体図】
拡大表示
ダンスを踊ろうとする愛らしい少女。版画家N-C・コシャンが版刻した版画へ添えられた4行詩の冒頭の文字から『アイリス』と呼ばれる本作は、少女がどこかの森の中らしき場所でダンスを踊ろうとしている情景を描いた作品である。



【ダンスを踊ろうとする愛らしい少女】
笛を口にくわえる少年とダンスを見つめる少女。画面中央に豪華で流行的な衣服の裾を軽く持ち、ダンスを踊り始めようとしている姿が配され、その左側には笛の口に当てる少年や木の棒を持つ少年、ダンスを見つめる少女などが描かれている。



【笛を口にくわえる少年と見つめる少女】
情感豊かな風景の描写。本作のような子供を扱った作品では、雅宴画(フェート・ギャラント)とは対照的に子供の純真な無垢性や、愛の情景へとつながるかのような子供が抱く大人への憧れやその兆しなどを読み取ることができる。



【情感豊かな風景の描写】

Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション
作品イメージ