Description of a work (作品の解説)
2008/09/01掲載
Work figure (作品図)
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ラ・フィネット(悪戯好きな小娘、デリケートな音楽家)


(La Finette) 1717年頃
25.3×18.9cm(原寸) | 油彩・板 | ルーヴル美術館(パリ)

18世紀前半期のフランスで活躍した偉大なる巨匠アントワーヌ・ヴァトーが手がけた傑作『ラ・フィネット(悪戯好きな小娘、デリケートな音楽家)』。寸法や表現様式などの観点から、ほぼ異論なくルーヴル美術館に所蔵される『無関心(冷酷な男、気紛れな恋人)』と対画関係にあると推測されている本作は≪音楽≫を主題に描かれた作品で、一説には画家と親交のあった画商シロワ家の娘をモデルに手がけられたとされるものの、現在では理想的・典型的なロココ的アプローチによる肖像画と解釈するのが一般的である。画面中央に配される少女は庭園を思わせる風景の中の石に腰掛け、身体の左側を観る者の方へ向けながらテオルブ(大型のギターの形をした古楽器)を手にしている。本作の名称≪ラ・フィネット≫はこの少女が身に着ける絹の衣服の布地と織り方に由来していると考えられており、精緻な筆触によって上品かつ軽やかに仕上げられた衣服の光沢感や質感表現は、本作の名称となるに相応しい優れた出来栄えを示している。また個としては非常に愛らしい姿で描かれる少女であるが、作品全体から醸し出される雰囲気は夢想的でありながらどこか憂鬱な空気や印象を感じさせ、そこからヴァトー後年の陰のある詩情性も読み取ることができる。本作と『無関心(冷酷な男、気紛れな恋人)』は1729年に(それぞれ別の版画家によって)版画化されていることからもわかるよう、当時から非常に高い評価を受けていた作品であり、小作かつ損傷が著しい点を考慮しても、画家の芸術的要素が最も示された作品のひとつとして現在も重要視されている。なお本作は上下左に約0.8cm、右に2.0cmの継ぎ足しが施されていることが判明している。

関連:対画 『無関心(冷酷な男、気紛れな恋人)』


【全体図】
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石に腰掛け観る者の方を向く少女。寸法や表現様式などの観点から、ほぼ異論なくルーヴル美術館に所蔵される『無関心(冷酷な男、気紛れな恋人)』と対画関係にあると推測されている本作は≪音楽≫を主題に描かれた作品である。



【石に腰掛け観る者の方を向く少女】
少女が手にする大型のギターの形をした古楽器テオルブ。画面中央に配される少女は庭園を思わせる風景の中の石に腰掛け、身体の左側を観る者の方へ向けながらテオルブ(大型のギターの形をした古楽器)を手にしている。



【少女が手にする古楽器テオルブ】
本作の名称≪ラ・フィネット≫の由来と考えられている絹の衣服の布地。精緻な筆触によって上品かつ軽やかに仕上げられた少女の衣服の光沢感や質感表現は、本作の名称となるに相応しい優れた出来栄えを示している。



【少女が身に着ける絹の衣服の布地】

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