Description of a work (作品の解説)
2008/11/16掲載
Work figure (作品図)
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シテール島

 (L'île de Cythére) 1709-10年頃
43.1×53.3cm | 油彩・画布 | シュテーデル美術館

18世紀フランスの大画家アントワーヌ・ヴァトー初期を代表する作品『シテール島』。ヴァトーが王立絵画・彫刻アカデミーの準会員に加入する前、おそらくは26〜27歳頃に制作されたと推測されている本作は当時の風俗劇作家ダンクールによるフランス喜劇一座の為に書かれた演劇≪三人の従姉妹≫の一場面で、ギリシア近郊、地中海の島≪シテール島(キュテラ島)≫へ主人公となる三人の若い村娘らが巡礼に旅立つ情景を描いた作品である。同主題を描いた作品としては1717年にヴァトーが制作した名高き傑作『シテール島への巡礼≪雅やかな宴≫』がよく知られているが、本作には傑作が誕生するその第一歩を感じることができる。画面前景には恋の成熟を願う巡礼へ向かう為に、キューピッドが船頭をする船へと乗り込む場面が展開しており、さらに画面左上部分には松明を持ったキューピッドが彼女らを祝福するかのように空を舞っている。そして遠景にはグリザイユ(灰色の濃淡で描かれたモノクローム絵画の意味、しばしば14〜15世紀の祭壇画などで使用された)風の表現で、シテール島で巡礼者を待ち受ける無数のキューピッドが描き込まれている。本作の表現自体は(演劇の場面を描いたという背景もあり)やや平面的な構成で、村娘の恋に期待する高ぶった感情表現やその後の展開の予感性、造形表現そのものも画家としての成熟の低さを感じさせる出来栄えであるが、この愛の巡礼という画題への取り組みや、軽やかながら憂鬱さも感じさせる独特の色彩表現などには、後の傑作への道筋を見出すことができる。

関連:1717年制作 『シテール島への巡礼≪雅やかな宴≫』


【全体図】
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シテール島へと旅立つ若い村娘たち。本作は当時の風俗劇作家ダンクールによるフランス喜劇一座の為に書かれた演劇≪三人の従姉妹≫の一場面で、ギリシア近郊、地中海の島≪シテール島(キュテラ島)≫へ主人公となる三人の若い村娘らが巡礼に旅立つ情景を描いた作品である。



【シテール島へと旅立つ若い村娘たち】
船頭をおこなうキューピッドたち。画面前景には恋の成熟を願う巡礼へ向かう為に、キューピッドが船頭をする船へと乗り込む場面が展開しており、さらに画面左上部分には松明を持ったキューピッドが彼女らを祝福するかのように空を舞っている。



【船頭をおこなうキューピッドたち】
シテール島で巡礼者を待ち受ける無数のキューピッド。同主題を描いた作品としては1717年にヴァトーが制作した名高き傑作『シテール島への巡礼≪雅やかな宴≫』がよく知られているが、本作には傑作が誕生するその第一歩を感じることができる。



【巡礼者を待ち受けるキューピッド】
空を舞う松明を持ったキューピッド。本作の表現自体はやや平面的な構成で、村娘の恋に期待する高ぶった感情表現やその後の展開の予感性、造形表現そのものも画家としての成熟の低さを感じさせる出来栄えである。



【空を舞う松明を持ったキューピッド】

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