Description of a work (作品の解説)
2008/12/07掲載
Work figure (作品図)
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クピドの懲罰

 (Punizione di Amore) 1706-1707年
寸法 | 油彩・画布 | パラッツォ・マルチェッリ=フィレンツェ

18世紀初頭、欧州各地まで名声を轟かせた同時代のヴェネツィア派を代表する画家セバスティアーノ・リッチ、フィレンツェ滞在時期の傑作『クピドの懲罰』。本作に描かれる主題は、ローマ神話の名高き恋の神クピド(ギリシャ神話ではエロス)が、射られた者を強制的に恋へ落す黄金の矢を若く美しい女に放った為に災いが起こり、その罰として背中に生えた翼を毟られる場面≪クピドの懲罰≫である。画面下部には恋の神クピドの黄金の矢に射られた若い娘が恍惚を思わせる官能的な表情を浮かべ、(おそらくは)侍女らの肩を借りながら力弱く座っている姿が描かれている。周囲に配される侍女たちは女の自律を感じさせない明らかにおかしい様子を心配するように世話をしており、さらにその左側には狡猾な性格で知られる森の精サテュロスがその様子を伺っている姿が描き込まれている。そして画面上には女を射ったであろう(若い男の姿の)恋の神クピドが目隠しをされ、その翼を月桂樹の冠を被った天使に毟られる姿が配されており、その様子は≪懲罰≫の名称に相応しく痛々しさを感じさせる。17世紀ナポリ派の巨匠で「早描きのルカ」の別称でも知られたルカ・ジョルダーノの影響を感じさせる高度な写実性と激しい明暗対比による人物描写や運動性に溢れた劇的な場面展開の中に、甘美的な空気や流麗とした官能性、鮮やかな色彩と端整で観る者を惹きつける人物描写、新鮮な主題へのアプローチなど画家独自の視点や表現様式が随所に見出すことのできる本作は、ルネサンス芸術の洗礼(パオロ・ヴェロネーゼの影響)を本格的に受ける以前のセバスティアーノ・リッチの典型的な作風が良く示されており、同時期を代表する作品としても名高い作品である。


【全体図】
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懲罰を受けるクピドの痛々しい姿。本作に描かれる主題は、恋の神クピドが射られた者を強制的に恋へ落す黄金の矢を若く美しい女に放った為に災いが起こり、その罰として背中に生えた翼を毟られる場面≪クピドの懲罰≫である。



【懲罰を受けるクピドの痛々しい姿】
クピドの翼を毟り取る天使の厳しい表情。甘美的な空気や流麗とした官能性、鮮やかな色彩と端整で観る者を惹きつける人物描写、新鮮な主題へのアプローチなど本作は画家独自の視点や表現様式を随所に見出すことのできる。



【クピドの翼を毟り取る天使の厳しい表情】
官能的な表情を浮かべる若く美しい娘。画面下部には恋の神クピドの黄金の矢に射られた若い娘が恍惚を思わせる官能的な表情を浮かべ、(おそらくは)侍女らの肩を借りながら力弱く座っている姿が描かれている。



【官能的な表情を浮かべる若く美しい娘】

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