Description of a work (作品の解説)
2010/09/24掲載
Work figure (作品図)
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ヘクトールの死を嘆くアンドロマケ


(Andromache Mourning Hector) 1783年
275×203cm | 油彩・画布 | パリ国立高等美術学校

フランス新古典主義の大家ジャック=ルイ・ダヴィッド初期の神話画作品『ヘクトールの死を嘆くアンドロマケ』。画家随一の傑作『ホラティウス兄弟の誓い』とほぼ同時期に制作された作品であり、王立絵画・彫刻アカデミー正式会員の入会資格を得る為の審査作品のひとつとして制作された本作は、古代ギリシアの吟遊詩人ホメロスを代表する長編叙事詩イリアスに登場する同時代のトロイアの英雄≪ヘクトール≫の戦死を嘆き悲しむ妻≪アンドロマケ≫を主題とした作品である。画面中央の(当時の考古学に基づいた)浮彫装飾が施される寝台(ベッド)へ寝かせられたトロイアの英雄ヘクトールの遺骸は頭部に勝利を象徴する月桂樹の冠を被されながら、まるで眠るかのように静かに横たわらされており、その印象は悲惨というより英雄に相応しい高貴さを感じられる。頭部側の傍らには身に着けていたであろう豪奢な兜と剣が配され、さらに足元側の傍らでは理想的希望と現実的死の謳う詩が寝台の装飾として施されているのを確認することができる。そして画面のほぼ中央へは夫ヘクトールの戦死を嘆くアンドロマケが右手を夫ヘクトールの方へ差し向けながらその悲しみを表している。さらにヘクトールとアンドロマケの間に生まれた子供アステュアナクスが戸惑いと悲しみの表情を浮かべながら母に寄り添う仕草をみせているが、瞳の奥底には父ヘクトールの死を受け入れ乗り越えんとするかのような力強い意思を感じることができる。構図的には古典主義の画家ニコラ・プッサンなどの作品から着想を得られていることが指摘されている本作の英雄ヘクトールの堂々とした気品高い死の姿と妻アンドロマケの悲劇的感情性の対比は秀逸の出来栄えであり、表現手法的にもこの頃のダヴィッドが新古典主義様式を確立するに十分な実力があることが明確に示されている。


【全体図】
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戦死したトロイアの英雄ヘクトールの高貴な遺骸。王立絵画・彫刻アカデミー正式会員の入会資格を得る為の審査作品のひとつとして制作された本作は、古代ギリシアの吟遊詩人ホメロスの叙事詩イリアスに登場するトロイアの英雄≪ヘクトール≫の戦死を嘆き悲しむ妻≪アンドロマケ≫を主題とした作品である。



【トロイアの英雄ヘクトールの遺骸】
夫の死を嘆き悲しむ妻アンドロマケ。本作の英雄ヘクトールの堂々とした気品高い死の姿と妻アンドロマケの悲劇的感情性の対比は秀逸の出来栄えであり、表現手法的にもこの頃のダヴィッドが新古典主義様式を確立するに十分な実力があることが明確に示されている。



【嘆き悲しむ妻アンドロマケ。】
母に寄り添うアステュアナクス。ヘクトールとアンドロマケの間に生まれた子供アステュアナクスが戸惑いと悲しみの表情を浮かべながら母に寄り添う仕草をみせているが、瞳の奥底には父ヘクトールの死を受け入れ乗り越えんとするかのような力強い意思を感じることができる。



【母に寄り添うアステュアナクス】

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