Description of a work (作品の解説)
2010/09/08掲載
Work figure (作品図)
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舞楽図屏風

 (Bugaku Dancers) 桃山-江戸時代(17世紀)
各155.5×170cm | 2曲1双・紙本金地著色 | 醍醐寺(京都)

琳派の始祖、俵屋宗達の珠玉の傑作、重要文化財『舞楽図屏風』。京都の醍醐寺に伝わる2曲1双で制作された、法橋宗達(※法橋:朝廷が与える絵師の最高位)の署名が残される本屏風は、奈良時代あたりに亜細亜大陸諸国から伝来した舞と音楽の融合芸能文化で、公家や神道寺院とも縁の深い≪舞楽(舞を伴う雅楽の総称)≫中、採桑老、納曽利(以上右隻)、羅陵王、還城楽、崑崙八仙(以上左隻)という5つの有名な舞楽演目を描いた作品である。画面左側(左隻)には、大空を遊舞する鶴を表す≪崑崙八仙(ころばせ)≫を舞う緑装束の4人、蛇を発見し喜ぶ姿を表した≪還城楽(げんじょうらく)≫を舞う赤装束の者、龍面を身に着け将兵を鼓舞する姿を表した≪羅陵王(らりょうおう)≫を舞う同じく赤装束の者が配され、画面右側(右隻)には、羅陵王の番舞・答舞でもある宮中へ舞い降りた雌雄2頭の龍が踊る様子を表す≪納曽利(なそり。納蘇利とも呼ばれる)≫を舞う緑色の裲襠(うちかけ・りょうとう)を身に着けた2者、そして長寿薬を捜し求める死を前にした老人の哀姿を表す≪採桑老(さいそうろう)≫を舞う白装束の老人が配されている。さらに右隻右上には当時から有名であった醍醐の桜松が、左隻左下には大太鼓と大鉦鼓が描き込まれている。≪舞楽≫という主題は平安時代から続く極めて一般的な図様であり、宗達も本作で舞楽者そのものの姿は過去の舞楽図から姿態的引用をおこなっているが、本作で注目すべきはその絶妙な空間的構成と各人物の配置にある。やや高い視点から各舞楽を捉えることによって金地の余白へ宇宙的な空間の広がりと不思議な浮遊的感覚を与えることに成功している。さらに羅陵王と還城楽と呼応させるかのように納曽利を配置(※通常、納曽利を描く場合は並列に配される)し、姿態的な相似性を示している。そして採桑老は納曽利(上方)へ、納曽利(上方)は還城楽へ、還城楽は崑崙八仙へ、崑崙八仙のひとりは還城楽へ、羅陵王は採桑老へそれぞれ視線を向けさせることで空間的循環をおこなっている。この緊密・緊迫的でありながら斬新で独特の視点による芸術様式は、後世に多大な影響を与えるだけでなく今なお人々を魅了し続ける。なお6曲1双が通常であった屏風画に2曲1双というアプローチをおこなった本作の斬新性も特筆すべき点に挙げられる。

関連:『舞楽図屏風』全体図左隻拡大図右隻拡大図


【全体図】
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採桑老(さいそうろう)を舞う白装束の男。法橋宗達(※法橋:朝廷が与える絵師の最高位)の署名が残される本屏風は、奈良時代あたりに亜細亜大陸諸国から伝来した舞と音楽の融合芸能文化で、公家や神道寺院とも縁の深い≪舞楽≫中、採桑老、納曽利、羅陵王、還城楽、崑崙八仙という5つの有名な舞楽演目を描いた作品である。



【採桑老を舞う白装束の男】
納曽利(なそり)を舞う緑色の裲襠者。画面右側(右隻)には、羅陵王の番舞・答舞でもある宮中へ舞い降りた雌雄2頭の龍が踊る様子を表す≪納曽利(なそり)≫を舞う緑色の裲襠(うちかけ・りょうとう)を身に着けた2者、そして長寿薬を捜し求める死を前にした老人の哀姿を表す≪採桑老(さいそうろう)≫を舞う白装束の老人が配されている。



【納曽利を舞う緑色の裲襠者】
羅陵王(らりょうおう)を舞う赤装束の者。画面左側(左隻)には、大空を遊舞する鶴を表す≪崑崙八仙(ころばせ)≫を舞う緑装束の4人、蛇を発見し喜ぶ姿を表した≪還城楽(げんじょうらく)≫を舞う赤装束の者、龍面を身に着け将兵を鼓舞する姿を表した≪羅陵王(らりょうおう)≫を舞う同じく赤装束の者が配されている。



【羅陵王(らりょうおう)を舞う者】
還城楽(げんじょうらく)を舞う赤装束の者。羅陵王と還城楽と呼応させるかのように納曽利を配置(※通常、納曽利を描く場合は並列に配される)し、姿態的な相似性を示している。そして採桑老は納曽利(上方)へ、納曽利(上方)は還城楽へ、還城楽は崑崙八仙へ、崑崙八仙のひとりは還城楽へ、羅陵王は採桑老へそれぞれ視線を向けさせることで空間的循環をおこなっている。



【還城楽(げんじょうらく)を舞う赤装束】
崑崙八仙(ころばせ)を舞う緑装束の4人。緊密・緊迫的でありながら斬新で独特の視点による芸術様式は、後世に多大な影響を与えるだけでなく今なお人々を魅了し続ける。なお6曲1双が通常であった屏風画に2曲1双というアプローチをおこなった本作の斬新性も特筆すべき点に挙げられる。



【崑崙八仙(ころばせ)を舞う4人】

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