Description of a work (作品の解説)
2010/01/01掲載
Work figure (作品図)
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老梅図襖

 (The old plum tree) 1647年
166.7×116cm | 四面・紙本金地着色 | メトロポリタン美術館

京狩野を代表する絵師、狩野山雪が晩年期に手がけた自身の最高傑作のひとつ『老梅図襖』。元々、臨済宗の大本山として知られる妙心寺の塔頭である天祥院の奥襖絵として制作された本作は、老いた身ながら可憐な花を咲かせる≪梅樹≫を描いた作品である。本作について、≪奇想の系譜≫を執筆した美術史家であり、山雪再評価の立役者のひとりでもある辻惟雄が評した「のた打ち回る巨大な蟠龍の如く、上昇し、下降し、屈曲し、痙攣する老梅」との言葉でも理解できるよう、四面中右側に幹を配し、身悶えするように上下左右へ枝をくねらせながら左側へと枝先を伸ばす老梅の不気味にすら感じられる様子は、晩年期に不遇を迎えた山雪の鬱屈した内面を表しているかのようである。さらに老梅の造形そのものへ眼を向けても、形態を極度に歪めながら垂直・水平を規範的に強調したその姿形は観る者に強烈な印象を与えるが、枝先に咲かせる愛らしい梅の花によって独特の美的世界観を構築している。さらに画面左右両端へ配される岩石も老梅同様、垂直・水平が強調された描写が施されており、山雪独自の造形美を感じることができる。この極めて斬新的で奇矯と表される造形には、「怪々奇々」と記された晩年期の狩野永徳から連なる巨木表現のある種の到達点を見出すことができる。その一方、画面左側に描き込まれる赤い躑躅(ツツジ)の花の写実的描写が本作に見事な表現的対比を生み出している点なども特筆に値するものである。また本作を色彩的観点から考察すると、重厚濃密な老梅の幹や枝の印象からは意外に感じられるほど薄く、かつ丁寧に色が塗り重ねられており、背景の金地を最大限に活かした色彩対比が示されている。


【全体図】
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枝先で咲く愛らしい梅の花。元々、臨済宗の大本山として知られる妙心寺の塔頭である天祥院の奥襖絵として制作された本作は、老いた身ながら可憐な花を咲かせる≪梅樹≫を描いた作品で、山雪自身の最高傑作のひとつでもある。



【枝先で咲く愛らしい梅の花】
垂直が強調される老梅の枝。本作について、≪奇想の系譜≫を執筆した美術史家であり、山雪再評価の立役者のひとりでもある辻惟雄は「のた打ち回る巨大な蟠龍の如く、上昇し、下降し、屈曲し、痙攣する老梅」と評している。



【垂直が強調される老梅の枝】
身悶えるように歪んだ老梅。四面中右側に幹を配し、身悶えするように上下左右へ枝をくねらせながら左側へと枝先を伸ばす老梅の不気味にすら感じられる様子は、晩年期に不遇を迎えた山雪の鬱屈した内面を表しているかのようである。



【身悶えるように歪んだ老梅】
丁寧に薄く塗り重ねられる色彩。本作を色彩的観点から考察すると、重厚濃密な老梅の幹や枝の印象からは意外に感じられるほど薄く、かつ丁寧に色が塗り重ねられており、背景の金地を最大限に活かした色彩対比が示されている。



【丁寧に薄く塗り重ねられる色彩】
赤い花を咲かせる躑躅の写実的表現と水平が強調される岩石。極めて斬新的で奇矯と表される造形には、「怪々奇々」と記された晩年期の狩野永徳から連なる巨木表現のある種の到達点を見出すことができる。



【赤い花を咲かせる躑躅の写実的表現】

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