Description of a work (作品の解説)
2008/01/30掲載
Work figure (作品図)
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赤い浮標

 (Femmes au puits) 1895年
81×65cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)

新印象主義の画家ポール・シニャックの代表的作品のひとつ『赤い浮標』。制作された翌年となる1896年に開催された自由美学展に出品された本作に描かれるのは、フランス南部プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏の保養地サン=トロペの小さな港の風景である。サン=トロペは画家が1892年に初来訪して以来、魅了され続けた地であり、本作では海に反射する港の表現への取り組みが示されている(これは画家がつけていた日記にも記されている)。特に画面中央部の建物の反射の表現部分の、規律正しく配置されたかのように心地よいリズムで垂直に並ぶ色彩は、陽光の生み出した光の効果や、明瞭な光輝性、さらに強まる色度によって絶妙な調和に満ちているほか、大きな青色と橙色の塊を交互に配することによって陽光の反射を表現した画面左下部分は、本作の名称ともなった≪赤い浮標≫に劣らないほどの存在感を示している。また、ジョルジュ・スーラが活躍していた頃は元より、画家の数年前の作品と比較してもさらに巨大になった斑点による点描も、その印象をより強めている。本作に見られる非現実的ながら美しさと心象に溢れた展開は、スーラが提唱し、画家が決定的に影響を受けた科学的根拠(色彩学)に基づいた新しい描写理論から、それ以前のクロード・モネギヨマンの典型的な印象主義的描写法への(ある種の)回帰とも考えられる(実際、シニャックは1894年に記した自身の日記の中でモネの感覚的な色彩配置を賞賛している)。なお本作以外にも『サン=トロペの港、満艦飾の帆船』などサン=トロペの港を描いた作品が数点ある。

関連:フォン・デア・ヘイト美術館所蔵 『サン=トロペの港』


【全体図】
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港に停泊する赤い帆のヨット。制作された翌年となる1896年に開催された自由美学展に出品された本作に描かれるのは、フランス南部プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏の保養地サン=トロペの小さな港の風景である。



【港に停泊する赤い帆のヨット】
心地よいリズムで垂直に並ぶ色彩。規律正しく配置されたかのように心地よいリズムで垂直に並ぶ色彩は、陽光の生み出した光の効果や、明瞭な光輝性、さらに強まる色度によって絶妙な調和に満ちている。



【心地よいリズムで垂直に並ぶ色彩】
サン=トロペの港の美しい街並み。本作に見られる非現実的ながら美しさと心象に溢れた展開は、スーラが提唱し、画家が決定的に影響を受けた科学的根拠(色彩学)に基づいた新しい描写理論から、それ以前のクロード・モネギヨマンの典型的な印象主義的描写法への(ある種の)回帰とも考えられる。



【サン=トロペの港の美しい街並み】

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