Description of a work (作品の解説)
2007/10/24掲載
Work figure (作品図)
■ 

風景の中の自画像(私自身、肖像=風景)


(Moi-Meme, Portrait-Paysage) 1890年
143×110cm | 油彩・画布 | プラハ国立美術館

素朴派の巨匠アンリ・ルソー初期の代表作『風景の中の自画像(私自身、肖像=風景)』。本作は1889年に開催されたパリ万国博覧会の情景を背景に、まだ税関吏として働いていたルソーが画家としての己の46歳の姿を描いた自画像作品で、ルソーが死の間際まで手放さず、加筆し続けた作品でもある。背景の通行人と比較し、あまりにも巨大に描かれる、威厳と毅然に満ちた表情のルソー自身の姿や、パリを流れるセーヌ川と川に停泊する船舶、万国博覧会の喧騒的な雰囲気、空に浮かぶ気球や奇形な雲など本作に描かれる(絵画的)構成要素は、何れも観る者に不思議な印象を与える。本作の原題は『私自身、肖像=風景』であり、画家は風景(背景)と肖像を一体とすることで、それまでに類のない(画家独特の)独創的な自画像の世界観を表現し、新たなる絵画的展開を開拓した。さらに本作の中で画家が手にするパレットにはクレマンス(本作が制作される二年前に亡くなった妻)、ジョゼフィーヌ(クレマンスの死から9年後に再婚した二番目の妻)と二人の妻の名前が記されており、ジョゼフィーヌ部分は後の書き加えられたものであるが、かつてはクレマンス亡き後、再婚相手と考えていたマリーな名前が記されていたことが知られている。また襟元の教育功労勲章も1901年、芸術愛好学校(エコール・ド・ラソシアシオン・フィロテクニック)の教師に任命された際に書き加えられたものである。さらに本作の左上部分に描かれる上空の太陽の表現に、歌川広重による版画集『江戸名所図絵』の影響が指摘されている。


【全体図】
拡大表示
威厳と毅然に満ちた画家としてのルソーの表情。本作は1889年に開催されたパリ万国博覧会の情景を背景に、まだ税関吏として働いていたルソーが画家としての己の46歳の姿を描いた自画像作品で、ルソーが死の間際まで加筆し続けた作品でもある。



【威厳と毅然に満ちた画家としての自分】
クレマンス(本作が制作される二年前に亡くなった妻)、ジョゼフィーヌ(クレマンスの死から9年後に再婚した二番目の妻)と二人の妻の名が記されるパレット。ジョゼフィーヌ部分は後の書き加えられたものであるが、かつてはクレマンス亡き後、再婚相手と考えていたマリーな名前が記されていたことが知られている。



【二人の妻の名が記されるパレット】

【参考:歌川広重『江戸名所図絵』】
喧騒的な雰囲気のパリ万国博覧会。本作の原題は『私自身、肖像=風景』であり、画家は風景(背景)と肖像を一体とすることで、それまでにない独創的な自画像の世界観を表現し、新たなる絵画的展開を開拓した。また本作の左上部分に描かれる上空の太陽の表現に、歌川広重による版画集『江戸名所図絵』の影響が指摘されている。



【喧騒的な雰囲気のパリ万国博覧会】

Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション
作品イメージ