Description of a work (作品の解説)
2008/07/28掲載
Work figure (作品図)
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南仏の果物(南国の果物)

 (Fruits du Midi) 1881年
50.7×65.3cm | 油彩・画布 | シカゴ美術研究所

印象派最大の画家のひとりピエール=オーギュスト・ルノワールを代表する静物画のひとつ『南仏の果物(南国の果物)』。1881年に制作された本作に描かれるのは、玉葱、茄子、莢豌豆(さやえんどう)、パプリカ(甘味唐辛子)、柘榴、檸檬など古伊万里風の陶器皿に盛られた野菜類と果物である。画面の2/3を占める白いテーブルクロスが掛けられた円卓上の前景には、収穫されたばかりなのであろうか、瑞々しく光を反射する夏野菜や果物が、画面中央やや左上へ陶器皿に盛られた野菜が雑然と並べられている。南仏(地中海沿い)で収穫された野菜らは、多くの研究者が指摘しているよう、人物画などで用いられたルノワールの軽快で女性的な表現手法とは明らかに一線を画した、まるでポール・セザンヌを彷彿とさせる大胆で荒々しい(やや厚みを感じさせる流線描的な)筆触によって奔放に描かれており、この静物(野菜や果物)の生命力をそのまま反映させたかのようである。また本作ではルノワールの対象静物そのものが発する色彩への取り組みや、静物の配置による画面の装飾性の追及も特に注目すべき点のひとつである。画面内に描かれるパプリカ(甘味唐辛子)や柘榴、玉葱などの暖色と、茄子や莢豌豆、陶器皿などの寒色の色彩的対比はこれまでの各作品にも度々登場しているが、対象の質感、例えば瑞々しい茄子や熟したパプリカの艶々とした滑らかな質感や、檸檬のザラザラとした質感は写実的(デッサン的)な描写手法ではなく多彩な色彩によって表現されている。またこれらの色彩は陶器皿やテーブルクロスの白色と見事な対比を示しており、観る者へ生気に溢れたある種の躍動感を感じさせる。さらに背景の曖昧な色彩感覚は静物の強烈な固有色と白色の架け橋としての効果も発揮しており、ここでもルノワールの色彩への意識の高さが示されている。


【全体図】
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陶器皿の上に盛られる玉葱。1881年に制作された本作に描かれるのは、玉葱、茄子、莢豌豆(さやえんどう)、パプリカ(甘味唐辛子)、柘榴、檸檬など円卓の上に置かれた古伊万里風の陶器皿に盛られる野菜類と果物である。



【陶器皿の上に盛られる玉葱】
鮮やかな色彩で描かれる莢豌豆(さやえんどう)。画面の2/3を占める白いテーブルクロスが掛けられた円卓上の前景には、収穫されたばかりなのであろうか、瑞々しく光を反射する夏野菜や果物が、画面中央やや左上へ陶器皿に盛られた野菜が雑然と並べられている。



【鮮やかな色彩で描かれる莢豌豆】
瑞々しい茄子の光沢感と質感。本作の対象の質感、例えば茄子やパプリカの艶々とした滑らかな質感や、檸檬のザラザラとした質感は写実的(デッサン的)な描写手法ではなく多彩な色彩によって表現されている。



【瑞々しい茄子の光沢感と質感】
熟したパプリカの大胆な描写。南仏(地中海沿い)で収穫された野菜らは、大胆で荒々しい(やや厚みを感じさせる流線描的な)筆触によって奔放に描かれており、この静物(野菜や果物)の生命力をそのまま反映させたかのようである。



【熟したパプリカの大胆な描写】

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