Description of a work (作品の解説)
2007/07/13掲載
Work figure (作品図)
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ロリアンの小さな港

 (Vue du petit port de Lorient) 1869年
43.5×73cm | 油彩・画布 | National Gallery (Washington)

印象派随一の女流画家ベルト・モリゾ初期の代表的な作品『ロリアンの小さな港』。本作はベルト・モリゾの姉で共に画業を志していたエドマが、結婚後に移り住んだフランスの北西部に位置するブルターニュ地域圏、モルビアン県の大西洋に面する都市≪ロリアン≫の港に日傘を差しながら腰掛け、ひとりたたずむ姿を描いた作品である。姉エドマは本作が制作された1869年3月に画家への道を諦め、マネの知人で海軍将校であったアドルフと結婚し、ベルト・モリゾの居るパリから離れていった。この事は10年以上、共に本格的な画業の道を志し精神的にも深いつながりを持っていた両者(モリゾ、エドマ)にとっても劇的な環境の変化であったことは想像に難くなく、本作に描かれる姉エドマの姿は、どこか空虚で心が沈んでいるかのようである。このような人物に表される画家独特の繊細な心理描写や雰囲気の表現はベルト・モリゾ作品の最も見るべき点のひとつであり、本作は初期作品の中でも特に秀逸の出来栄えを示している。また明瞭な陽光の柔らかな表現や、水面やそこに浮かぶ船舶、空や雲、腰掛ける石塀、遠景の建物などの風景描写は大胆な筆触によって表情豊かに表現されているほか、人物を右端に配し、画面の大部分を空白的空間に構成することによって姉エドマの空虚な感情をより強調させている。


【全体図】
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ロリアンの港に日傘を差しながら腰掛け、ひとりたたずむ姉エドマ。10年以上、共に本格的な画業の道を志し精神的にも深いつながりを持っていたモリゾと姉エドマにとって、姉エドマの結婚は劇的な環境の変化であったことは想像に難くなく、描かれる姉エドマの姿は、どこか空虚で心が沈んでいるかのようである。



【ロリアンの港でひとりたたずむ姉エドマ】
大胆な筆触によって表情豊かに表現された姉エドマが腰掛ける港の石塀。明瞭な陽光の柔らかな表現や、水面やそこに浮かぶ船舶、空や雲、腰掛ける石塀、遠景の建物などの風景描写は大胆な筆触によって表情豊かに表現されている。



【大胆な筆触によって表現された石堀】
対岸にそびえるロリアンの建築物。本作のような人物に表される画家独特の繊細な心理描写や雰囲気の表現はベルト・モリゾ作品の最も見るべき点のひとつであり、本作は初期作品の中でも特に秀逸の出来栄えを示している。



【対岸にそびえるロリアンの建築物】

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