Description of a work (作品の解説)
2008/03/31掲載
Work figure (作品図)
■ 

ドン・キホーテ

 (Don Quichotte) 1883-1885年頃
38×46cm | 油彩・板 | 個人所蔵

近代絵画の先駆的存在の画家のひとりアドルフ・モンティセリが最晩年に手がけた傑作『ドン・キホーテ』。本作はスペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスが17世紀初頭に書き上げた、世界的に著名な騎士物語小説≪ドン・キホーテ≫を典拠に得て、同小説の一場面の中から最も有名な場面である≪風車への突入≫を描いた作品である。モンティセリはオルセー美術館が所蔵する『ドン・キホーテとサンチョ・パンサ』や『牛の番人(ドン・キホーテ)』を始めとし、≪ドン・キホーテ≫を画題とした作品を数多く手がけているが、本作には1870年代以降、画家が獲得した独自の作風(絵画様式)と、(本作が制作された)晩年期に画家が最も得意とした雅宴画風の趣きが良く表れている。画面右側に配されるドン・キホーテは疲弊しうな垂れる馬に跨り、丘の上の風車へと向かっている。逆光気味に描かれる風車は影に覆われ輪郭のみが浮かび上がっているものの、影に覆われることによって異様な存在感を醸し出しており、この勝負の結末(ドン・キホーテは風車の風に吹き飛ばされ敗北する)を暗示しているかのようにも感じられる。モンティセリの大きな特徴である本作の厚塗りによる荒々しく粘質的な筆触は、1870年代の作品(作品例:牛の番人(ドン・キホーテ))と比較してもより太く明確になっており、絵具そのものの重々しくも、画家の(そして観る者の)内面へと迫ってくるかのような質感や、奔放ながらどこか自然的な光や情景を感じさせる触感は、≪ドン・キホーテ≫の持つ人間性豊かな世界観と不思議な調和をみせている。さらに燃えるような夕日がつくり出す赤々とした情景はドン・キホーテの、そして画家自身の心象を表現したとも考えられており、一部の研究者からは(本作を)自画像との指摘もされている。

関連:『ドン・キホーテとサンチョ・パンサ』
関連:『牛の番人(ドン・キホーテ)』


【全体図】
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丘の上の風車へと向かうドン・キホーテ。本作はスペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスは17世紀初頭に書き上げた、世界的に著名な騎士物語小説≪ドン・キホーテ≫を典拠に得て、同小説の一場面の中から最も有名な場面である≪風車への突入≫を描いた作品である。



【丘の上の風車へと向かうドン・キホーテ】
丘の上にそびえる異様な雰囲気の風車。逆光気味に描かれる風車は影に覆われ輪郭のみが浮かび上がっているものの、影に覆われることによって異様な存在感を醸し出しており、この勝負の結末(ドン・キホーテは風車の風に吹き飛ばされ敗北する)を暗示しているかのようにも感じられる。



【丘の上に聳える異様な雰囲気の風車】
より太く明確になった画家独特の筆触。絵具そのものの重々しくも、画家の(そして観る者の)内面へと迫ってくるかのような質感や、奔放ながらどこか自然的な光や情景を感じさせる触感は、≪ドン・キホーテ≫の持つ人間性豊かな世界観と不思議な調和をみせている。



【より太く明確になった画家独特の筆触】

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