Description of a work (作品の解説)
2008/10/25掲載
Work figure (作品図)
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烏のいる麦畑(カラスのいる麦畑)


(Champ de blé aux corbeaux) 1890年
51×103.5cm | 油彩・画布 | ファン・ゴッホ美術館

後期印象派の偉大なる画家フィンセント・ファン・ゴッホ最晩年を代表する風景画『烏のいる麦畑(カラスのいる麦畑)』。本作はゴッホがサン・レミのカトリック精神療養院での生活が自身の精神状態を悪化させていると判断し、パリ北西オーヴェール=シュル=オワーズに向かい友人であり精神科医でもあったポール・ガシェ医師の療養院で生活を始めた最晩年期(1890年5月〜7月)の7月頃に制作された風景画作品である。本作に描かれる麦畑の風景は、まるでゴッホの精神状態をそのまま反映させたかのように、陰鬱で不吉な雰囲気に満ちた印象を強く感じさせる。太く短い筆触によって力強く描写される麦畑は強烈な色彩的輝きに満ちていながらも、どこか不安定であり、また深淵な濃青色のグラデーションで描写される重々しい空との激しい色彩的対比や、うねるような表現もそれを助長させている。さらに画面内へ緊張感を与える低空を飛ぶ烏(カラス)の一群は、画家自身の生命の終わりを予感させるような不吉さを否が応にも観る者に抱かせる。本作を描いた数週間後の7月27日に、自らの胸部へピストルを撃ち込み自殺を図っていることからも、画家が極めて危機的な精神的状態にあったことが窺い知ることができる。しかし、本作はそんな緊迫的状況だからこそ描くことのできた類稀な風景画の傑作であり、本作が放つ独特の圧迫感や予言めいたある種の象徴性は今も観る者を惹きつけて止まない。


【全体図】
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麦畑を分断する一本道。本作は画家がパリ北西オーヴェール=シュル=オワーズに向かい友人であり精神科医でもあったポール・ガシェ医師の療養院で生活を始めた最晩年期(1890年5月〜7月)の7月頃に制作された風景画作品である。



【麦畑を分断する一本道】
強烈な色彩的輝きに満ちた麦畑。太く短い筆触によって力強く描写される麦畑は強烈な色彩的輝きに満ちていながらも、どこか不安定であり、また深淵な濃青色のグラデーションで描写される重々しい空との激しい色彩的対比や、うねるような表現もそれを助長させている。



【強烈な色彩的輝きに満ちた麦畑】
不吉な印象を観る者に与える烏(カラス)の大群。この画面内へ緊張感を与える低空を飛ぶ烏(カラス)の一群は、ゴッホ自身の生命の終焉を予感させるような不吉さを否が応にも観る者に抱かせる。



【不吉な印象を観る者に与える烏の大群】

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