Description of a work (作品の解説)
2008/06/23掲載
Work figure (作品図)
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光輪のある自画像(戯画的自画像)


(Portrait-charge de Gauguin) 1889年 | 79.2×51.3cm
油彩・画布 | ワシントン・ナショナル・ギャラリー

近代絵画の大画家ポール・ゴーギャンを代表する自画像作品のひとつ『光輪のある自画像(戯画的自画像)』。本作は画家が一時期滞在していたル・プールデュにあったマリ・アンヌ食堂の食器棚の装飾画(装飾パネル)として制作された作品である。ゴーギャンと共にル・プールデュへ滞在していたオランダ人画家ヤコブ・メイエル・デ・ハーンの肖像画との対画として制作された作品でもある本作に描かれるゴーギャンの頭上には光輪(円光)が描かれており、約2年程前に手がけた主イエス(キリスト)に自身の姿を重ねた一連の自画像作品(参照:黄色いキリストのある自画像オリーブ山のキリスト)同様、己の姿を聖なる存在(又はポン=タヴェン派やナビ派など若い画家らの指導者的な立場にある特別な存在)として表現している。対画として制作された『ヤコブ・メイエル・デ・ハーンの肖像』には17世紀を代表する英国の詩人ジョン・ミルトンを代表する傑作叙事詩≪失楽園≫が描き込まれており、本作の中へ象徴的に配された、一方は未熟を思わせる緑色の、もう片一方は成熟を思わせる赤色に実るふたつの林檎(禁断の果実)や、舌を出す蛇の姿と関連している。またこれらはフランス象徴主義(ナビ派)の典型的なアトリビュートであることも注目すべき点である。また色面のみによって構成される天使の羽の上に描かれるゴーギャンの顔は聖者というよりも、まるで悪事を企てる者のように邪悪な印象を感じさせる表情を浮かべており、画家の劇場的な性格を暗示させる刺激的な赤色の背景色との相乗的な効果によって、本作の解釈を困難にしている。なお本作に描かれる林檎を具体的な性の暗喩として、ゴーギャンの表情を友人メイエル・デ・ハーンと食堂の女主人マリ・アンヌの密接な関係(情事)に対する皮肉的な感情≪嫉妬≫と解釈する説も唱えられている。

関連:対画 『ヤコブ・メイエル・デ・ハーンの肖像』


【全体図】
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邪悪な印象を感じさせるゴーギャンの表情。本作は画家が一時期滞在していたル・プールデュにあったマリ・アンヌ食堂の食器棚の装飾画(装飾パネル)として制作された作品で、対の作品としてゴーギャンと共にル・プールデュへ滞在していたオランダ人画家ヤコブ・メイエル・デ・ハーンの肖像画も制作された。



【邪悪な印象を感じさせる表情】
画家の頭上に描かれる光輪(円光)。約2年程前に手がけた主イエス(キリスト)に自身の姿を重ねた一連の自画像作品同様、本作では己の姿を聖なる存在(又は若い画家らの指導者的な立場にある特別な存在)として表現している。



【画家の頭上に描かれる光輪(円光)】
邪悪な存在である舌を出す一匹の蛇。対画として制作された『ヤコブ・メイエル・デ・ハーンの肖像』には17世紀を代表する英国の詩人ジョン・ミルトンを代表する傑作叙事詩≪失楽園≫が描き込まれており、本作の中へ象徴的に配されたふたつの林檎(禁断の果実)や、舌を出す蛇の姿と関連している。



【邪悪な存在である舌を出す一匹の蛇】
一方は未熟を思わせる緑色の、もう片一方は成熟を思わせる赤色に実るふたつの林檎(禁断の果実)。なお本作に描かれる林檎を具体的な性の暗喩として、ゴーギャンの表情を友人メイエル・デ・ハーンと食堂の女主人マリ・アンヌの密接な関係(情事)に対する≪嫉妬≫と解釈する説も唱えられている。



【画面の中に描かれるふたつの林檎】

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