Description of a work (作品の解説)
2009/07/24掲載
Work figure (作品図)
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ヴィヒネ・ノ・テ・ヴィ(マンゴーを持つ女)


(Vahine no te vi (Femme au mango)) 1892年
70×45cm | 油彩・画布 | ボルティモア美術館

近代絵画様式の確立者ポール・ゴーギャンを代表する女性肖像作品『ヴィヒネ・ノ・テ・ヴィ(マンゴーを持つ女)』。本作はゴーギャンが1891年4月から1893年6月まで滞在した南国タヒチ(第一次タヒチ滞在期)で制作された作品の中の1点で、モデルとして描かれる女性は画家が同地の人間に紹介され、結婚したテハマナ(通称テフラ、当時13歳)である。ゴーギャンは第一次タヒチ滞在期に自然的で生命感に溢れる美しさを備えていたテハマナをモデルとした作品を、本作以外にも『マナオ・トゥパパウ(死霊は見守る、死霊が見ている)』など複数枚手がけているが、本作は少女テハマナの母性を象徴化した作品として特に重要視されている。画面中央に大きく配されるやや下方へ視線を向けるテハマナの姿態は、顔とは逆を向けられており画面の中に(観る者の視線を惹きつける)動きを生み出している。また幼さが残るもののプリミティブで力強さを感じさせるテハマナの顔立ちには、ある種の聖人的な印象を感じさせる。さらにテハマナが手にするマンゴー(ウルシ科マンゴー属の常緑高木。菴羅、菴摩羅とも呼称される)の実は、現地では古くから豊穣を象徴するものであり、ここにゴーギャンの自然(そしてタヒチ)に対する尊敬の念と、テハマナの母性を見出すことができる。これらも本作で特に注目すべき点ではあるが、本作ではそれらを強調する効果を見事に発揮している明快で簡潔な平面的表現に、より注視すべきである。このような生のある人間そのものを宗教画のように象徴化した本作には、西洋の古典的な絵画の表現手法と通じており、画家がタヒチを訪れる要因ともなった西洋文化そのものによる、自身の肯定的態度は特筆に値するものである。


【全体図】
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生命感に溢れる少女テハマナの表情。ゴーギャンは第一次タヒチ滞在期に自然的で生命感に溢れる美しさを備えていたテハマナをモデルとした作品を、本作以外にも『マナオ・トゥパパウ(死霊は見守る、死霊が見ている)』など複数枚手がけているが、本作は少女テハマナの母性を象徴化した作品として特に重要視されている。



【生命感に溢れる少女テハマナの表情】
豊穣を象徴するマンゴーの実。テハマナが手にするマンゴー(ウルシ科マンゴー属の常緑高木。菴羅、菴摩羅とも呼称される)の実は、現地では古くから豊穣を象徴するものであり、ここにゴーギャンの自然(そしてタヒチ)に対する尊敬の念と、テハマナの母性を見出すことができる。



【豊穣を象徴するマンゴーの実】
背景の黄色と対比するテハマナの身に付ける衣服の紫色。生のある人間そのものを宗教画のように象徴化した本作には、西洋の古典的な絵画の表現手法と通じており、画家がタヒチを訪れる要因ともなった西洋文化そのものによる、自身の肯定的態度は特筆に値するものである。



【背景の黄色と対比する衣服の紫色】

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