Description of a work (作品の解説)
2009/02/24掲載
Work figure (作品図)
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妖術使い:ヒヴァ・オア島の魔法使い


(L'enchanteur ou le sorcier d'Hiva Oa) 1902年
92×73cm | 油彩・画布 | リエージュ美術館

近代絵画様式の確立者のひとりポール・ゴーギャン最晩年の代表作『妖術使い:ヒヴァ・オア島の魔法使い』。画家の最晩年期となる1902年に制作された本作は、当時、まだ西洋文化が浸透していなかった未開の地(人食い人種が住んでいると考えられていた)であるタヒチ北東のマルキーズ諸島の主島≪ヒヴァ・オア島≫の儀式を司る原住民魔術師(魔法使い)パプアニを描いた作品である。画面中央から左側へ配される真紅の外套を身に着けた魔術師パプアニは右手親指と人差し指で小さな白花を摘み、後部に描かれる原住民の2人の婦人に差し出している。魔術師パプアニの視線はまどろみに包まれたかのように空虚な印象でありながら、不思議と野性味と生命力に満ち溢れている。パプアニの背後に描かれる樹の傍の2人の婦人はゴーギャンが同時期に制作した他の作品からの転用であることが知られており、両作品の関係性については今なお研究が進められている。さらに魔術師パプアニの顔面と対角線上となる画面右下には幻想性豊かな狐と野鳥が配されているが、これはマルキーズ諸島の古代信仰を意味していると考えられている。本作で最も注目すべき点は画家の空想性と夢遊性に溢れた光と色彩の表現にある。魔術師パプアニに用いられる強い原色的な赤色と濃紺の衣服は西洋絵画の伝統的な宗教的色彩と共通しているものの、そこから生み出される印象は全く異なるものであり、本作においてはゴーギャンが心象として抱いた魔術師の不可思議性や恐怖的感覚を見出すことができる。また人物などが配される画面左側と動物達が配される右下、そして遠景として描かれる森林には比較的強い光彩が用いられており、さらに中景の灰褐色で表現される小川が光によって鈍く輝いている。これらの表現が明確な色面と互いに相乗し合うことで、本作中にある種の調和性と自然(又は原始)の不変的神秘性を与えている。


【全体図】
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空虚で無興味的な魔術師パプアニの視線。画家の最晩年期となる1902年に制作された本作は、当時、まだ西洋文化が浸透していなかった未開の地(人食い人種が住んでいると考えられていた)であるタヒチ北東のマルキーズ諸島の主島≪ヒヴァ・オア島≫の儀式を司る原住民魔術師(魔法使い)パプアニを描いた作品である。



【無興味的な魔術師パプアニの視線】
2人の婦人へ差し出される小さな白花。パプアニの背後に描かれる樹の傍の2人の婦人はゴーギャンが同時期に制作した他の作品からの転用であることが知られており、両作品の関係性については今なお研究が進められている。



【婦人へ差し出される小さな白花】
幻想的な狐と野鳥の姿。魔術師パプアニに用いられる強い原色的な赤色と濃紺の衣服は西洋絵画の伝統的な宗教的色彩と共通しているものの、そこから生み出される印象は全く異なるものであり、本作においてはゴーギャンが心象として抱いた魔術師の不可思議性や恐怖的感覚を見出すことができる。



【幻想的な狐と野鳥の姿】

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