Description of a work (作品の解説)
2008/12/15掲載
Work figure (作品図)
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未開の物語(野蛮な物語)

 (Contes barbares) 1902年
130×89cm | 油彩・画布 | フォルクヴァング美術館

後期印象派随一の巨匠であり、近代絵画様式の確立した偉大なる画家でもあるポール・ゴーギャン最晩年の傑作『未開の物語(野蛮な物語)』。ゴーギャンの没地となったヒヴァ・オア島アトォオナで制作された本作は、画家の使用人カフィの養女トホタウア(赤毛の女)と現地の若い娘(黒髪の女又は男)をモデルにヒヴァ・オア島の情景を描いた作品であるが、そこへ幻視したブルターニュ時代の画家ヤコブ・メイエル・デ・ハーンが描き込まれてことが最大の注目点である。画面中央に配された黒髪の人物(女性か男性か判別はし難い)仏陀のように結跏趺坐しており、その表情も実に落ち着きを感じさせる。また黒髪の人物より手前に描かれる赤毛の女は、タヒチの現地民らしく豊満で原始に溢れた裸体が真横からの視点により強調されている。そして黒髪の人物の背後には獣の足をもった画家ヤコブ・メイエル・デ・ハーンは緑色の瞳を怪しく輝かせながら思惑深げに座している。ゴーギャン自身は本作について一切言及していないものの本作に描かれる2人の現地民は何物にも汚されていない(ゴーギャンを魅了した)力強い原始的な純粋性を、画家ハーンはそれを腐敗させる西洋の合理性を象徴していることは明らかであり、(人物同士ではなく)観る者へと向けられる登場人物の視線はその疑問と答えを問うているかのようである。また平面化が著しい背景の昼か夜かも分からない重々しい雰囲気の描写や、ヒヴァ・オア島に咲く植物の(毒々しいまでの)濃密な色彩表現は本作に示される謎めいた象徴性をより強調する効果を生み出している。

関連:1889年制作 『ヤコブ・メイエル・デ・ハーンの肖像』


【全体図】
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ゴーギャンを魅了した力強く原始的な純粋性。ゴーギャンの没地となったヒヴァ・オア島アトォオナで制作された本作は、同島の現地民や情景を描いた作品であるが、そこへ幻視したブルターニュ時代の画家ヤコブ・メイエル・デ・ハーンが描き込まれてことが最大の注目点である。



【力強く原始的な純粋性】
純粋性を腐敗させる西洋の合理性。赤毛の女は、タヒチの現地民らしく豊満で原始に溢れた裸体が真横からの視点により強調されており、黒髪の人物の背後には獣の足をもった画家ヤコブ・メイエル・デ・ハーンは緑色の瞳を怪しく輝かせながら思惑深げに座している。



【純粋性を腐敗させる西洋の合理性】
現地に咲く植物の(毒々しいまでの)濃密な色彩表現。平面化が著しい背景の昼か夜かも分からない重々しい雰囲気の描写や、ヒヴァ・オア島に咲く植物の濃密な色彩表現は本作に示される謎めいた象徴性をより強調する効果を生み出している。



【現地に咲く植物の濃密な色彩表現】

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