Description of a work (作品の解説)
2009/07/03掲載
Work figure (作品図)
■ 

叫び声

 (Appel) 1902年
130×90cm | 油彩・画布 | クリーヴランド美術館

近代絵画様式の確立者のひとりポール・ゴーギャン最晩年期の典型的な作例のひとつ『叫び声』。本作はゴーギャンが最晩年に訪れたヒヴァ・オア島で制作された作品で、画家がこれまでの画業で得てきたタヒチでの霊感的表現や対象構成と、現地での同調的傾向の融合を見出すことができる。画面中央には一方は淡い桃紫色の衣服を身に着けた、もう一方はパレオ風の腰布を巻いた上半身が裸体の女性が配されており、画面ほぼ中心に位置する衣服を身に着けた女性は意味深げに視線を本作を観る者へと視線を向けている(※これは画家へと向けられた視線と解釈することもできる)。さらに画面右側には大地に座する裸婦が背後から描かれており、視線を右側遠方へと向けている様子である。さらに画面下部には石の隙間から茎を伸ばし花弁を開かせる白い花が象徴的に配され、画面上部には赤い実をつけた幹の太い樹木など自然的風景が丹念に描き込まれている。本作を構成する人物、植物、木々、そして地面などはゴーギャンの他の作品にも登場する要素であり、画家自身による過去の作品の再構成的側面としても捉えることができる(ゴーギャンはこのような構成要素の流用を多用している)。本作で最も注目すべき点は人間の感覚を超えた非現実的な場面の表現と画題に対する象徴性への回帰にある。これまでの作品にも登場した赤々とした大地と自然が残る遠景の緑色との色彩的対比は観る者にどこか現実離れした厭世的かつ同地への同調な精神性を感じることができ、また≪叫び声≫と題された名称と、(暴力的にすら感じられる本作の色彩とは対照的な)静寂感、静謐感が漂う全体の雰囲気は、晩年期におけるゴーギャンの内面性が滲み出ているかのようである。


【全体図】
拡大表示
意味深げに観る者へと視線を向ける女性。画面中央にはふたりの女性が配されており、画面ほぼ中心に位置する衣服を身に着けた女性は意味深げに視線を本作を観る者へと視線を向けている(※これはゴーギャンへと向けられた視線と解釈することもできる)。



【観る者へと視線を向ける女性】
象徴的に配される白い花。本作を構成する人物、植物、木々、地面などはゴーギャンの他の作品にも登場する要素であり、画家自身による過去の作品の再構成的側面としても捉えることができる(画家はこのような構成要素の流用を多用している)。



【象徴的に配される白い花】
赤い実をつけた幹の太い樹木。これまでの作品にも登場した赤々とした大地と自然が残る遠景の緑色との色彩的対比は観る者にどこか現実離れした厭世的かつ同地への同調な精神性を感じることができ、晩年期におけるゴーギャンの内面性が滲み出ているかのようである。



【赤い実をつけた幹の太い樹木】

Salvastyle.com 自己紹介 サイトマップ リンク メール
About us Site map Links Contact us

homeInformationCollectionDataCommunication
Collectionコレクション
作品イメージ