Description of a work (作品の解説)
2007/08/13掲載
Work figure (作品図)
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競馬場の馬車(プロヴァンスの競馬場)

 1869年頃
(La voiture aux courses (Aux courses en Provinse))
36.5×55.9cm | 油彩・画布 | ボストン美術館

印象派の巨匠エドガー・ドガの代表作『競馬場の馬車(プロヴァンスの競馬場)』。本作は画家が1860年代から70年代にかけて盛んに取り組んだ画題のひとつである≪競馬場≫を描いた作品の一例である。当時のフランスにおいて競馬は、19世紀の始め頃に英国からもたらされた娯楽的競技であり、上流階級の人々の間で流行していた。貴族階級出身であるドガも競馬に興味を示していたが、その対象は競技の興奮的な展開や迫力にあったというよりも、競技前の独特な緊張感や騎手や競走馬の動きなどに向けられていた。本作ではドガの幼い頃からの友人であるポール・ヴァルパンソンとその妻や子供らをモデルに、アルジャンタンの競馬場(ヴァルパンソン一家がその近郊に住んでおり、画家は一家を訪問した時に本作を制作した)でおこなわれるレース競技や四輪馬車に乗る人々などが描かれているが、特筆すべきは意表をついたような奇抜的で大胆な構図にある。特定の確証は得られていないものの、おそらくは江戸時代の著名な浮世絵師である葛飾北斎や歌川広重などの版画作品の非対称性や近景と遠景の並行的配置、切り取られたかのような画面構成に着想を得ていると多くの研究者が指摘している。これらはドガの他の作品にも共通するものであるが、本作での中心を外し画面右下へ極めて近景(クローズアップ的)に配される四輪馬車の唐突な切り抜きやレースが行われる遠景との対比は観る者に強い意外性を与える。また我が子アンリ・ヴァルパンソンに母乳を与えるポールの妻や、その情景を一段上から見つめるポール・ヴァルパンソンや愛犬などの自然的な動作に、画家の対象に対する鋭い観察眼が感じられる。


【全体図】
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我が子と妻を見つめるポール・ヴァルパンソン。本作は画家が1860年代から70年代にかけて盛んに取り組んだ画題のひとつである≪競馬場≫を描いた作品の一例で、当時のフランスにおいて競馬は、19世紀の始め頃に英国からもたらされた娯楽的競技であり、上流階級の人々の間で流行していた。



【家族を見つめるポール・ヴァルパンソン】
我が子アンリに母乳を与えるポールの妻。本作ではドガの幼い頃からの友人であるポール・ヴァルパンソンとその妻や子供らをモデルに、アルジャンタンの競馬場でおこなわれるレース競技や四輪馬車に乗る人々などが描かれている。



【我が子アンリに母乳を与える母親】
椅子に座りレースを観戦する男と白馬に跨る騎手。本作で特筆すべきは意表をついたような奇抜的で大胆な構図にあり、特定の確証は得られていないものの、おそらくは北斎や広重の版画の非対称性や近景と遠景の並行的配置、切り取られたかのような画面構成に着想を得ていると多くの研究者が指摘している。



【椅子に座りレースを観戦する男】

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