Description of a work (作品の解説)
2008/10/22掲載
Work figure (作品図)
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アンブロワーズ・ヴォラールの肖像


(Portrait d'Ambroise Vollard) 1899年
100×81cm | 油彩・画布 | プティ・パレ美術館(パリ)

近代絵画表現の扉を開いた稀代の画家ポール・セザンヌが手がけた単身人物像の傑作『アンブロワーズ・ヴォラールの肖像』。本作に描かれる人物は、セザンヌの良き友人のひとりであり、1895年に画家の生涯唯一の個展を開催した画商としても知られるアンブロワーズ・ヴォラールである。セザンヌは肖像画制作にあたり長時間、しかも100回以上、モデルであるアンブロワーズ・ヴォラールにポーズを取らせていたと伝えられており、ある時、ヴォラールが居眠りし姿勢を崩した際には「何てことだ!あなたは私のポーズを台無しにした!林檎のように動いてはならないと何度言えばわかるのか。林檎は動かないのだ。」と怒りを露にしたとの逸話も残されている。画面中央へ堅牢に配されるアンブロワーズ・ヴォラールは足を組み、その造形はあたかも巨岩を思わせるほど重々しく安定的である。そして1880年代後半からの画家の肖像画の大きな特徴となる(特に垂直が強調される)直線的な構造描写は、画商としてのアンブロワーズ・ヴォラールの表裏を見事に捉えている。そして本作の垂直と斜線による画面構築は本作の数年前に制作された画家の代表作のひとつ『女とコーヒーポット(婦人とコーヒー沸かし)』を容易に連想させるだけでなく、そこからの更なる昇華をも感じることができる。また色彩表現においても、明確な輪郭線に覆われた対象の中へ重厚感に溢れた太く角形的な筆触によって描写しながら、赤色・黄色系と緑色系という対照的な色彩を効果的に対比させることによって絶妙な色彩的均衡を生み出すことに成功している。このような人物の構造そのものに主観を置いた現代的表現は後世の画家たちにも多大な影響を与えた。


【全体図】
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画家の良き友人であり、1895年に画家の生涯唯一の個展を開催した画商としても知られるアンブロワーズ・ヴォラールの姿。セザンヌは肖像画制作にあたり長時間、しかも100回以上、モデルであるアンブロワーズ・ヴォラールにポーズを取らせていたと伝えられている。



【画商アンブロワーズ・ヴォラールの姿】
垂直と斜線による対象の構造的表現。1880年代後半からの画家の肖像画の大きな特徴となる(特に垂直が強調される)直線的な構造描写は、画商としてのアンブロワーズ・ヴォラールの表裏を見事に捉えている。



【垂直と斜線による対象の構造的表現】
膝の上に置かれるアンブロワーズ・ヴォラールの右手。色彩表現においても、明確な輪郭線に覆われた対象の中へ重厚感に溢れた太く角形的な筆触によって描写しながら、赤色・黄色系と緑色系という対照的な色彩を効果的に対比させることによって絶妙な色彩的均衡を生み出すことに成功している。



【膝の上に置かれるヴォラールの右手】

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